聴くチカラ研究所|4DL Technologies株式会社

GPT-5の「長考できない」問題、解決策は“指示文”にあらず。 ~AIに「思考の規律」を実装するアーキテクチャ「4DL_AAS_v3」とは~

作成者: 荒巻順|2025/08/24 23:00:00

はじめに ― なぜ、AIが賢くなるほど「重要なこと」が消えていくのか

次世代AI、GPT-5の登場で、その回答は驚くほど賢くなりました。しかし、多くの企業の現場では、新たな、そしてより深刻な悩みが増えています。

みなさん こんにちは《聴くチカラ研究所》の4DL Technologies株式会社のCCO荒巻順です。ブログへのご訪問、ありがとうございます。

「AIと新規事業のビジネスモデルを議論していたら、いつの間にか当初の論点がすり替わり、根拠の薄い結論に誘導されていた」

「AIとの対話が長くなるほど、当初の目的から話がズレていき、誰も気づけない」

これは、OpenAIが8月8日(日本時間)にリリースした新モデルのGPT-5が「長考が苦手」という特性に起因します。

4DL Technologies株式会社で色々な角度から検証した結果判明しました。この特性の結果、複雑なビジネス対話に必要な、一貫した記憶や文脈の保持が以前のデモルより、自動ルーティング機能の実装も含め弱くなったというのが私たちの判断です。

多くの企業がこの問題を「より良い指示文(プロンプト)を作る」ことで解決しようとしていますが、それは対症療法に過ぎません。

根本的な解決策は、指示文の改善ではなく、AI自身に「思考の規律」をインストールすること。

4DL Technologies株式会社が以前から提唱する「4DL_AAS(AI Activate Suites)」という三階層プロンプト設計思想をアップデートします。

その新しいバージョン名は「4DL_AAS_v3」といいます。これは、GPT-5時代の生成AI向け「思考OS」と我々は呼んでいます。

なお、記事で紹介する「4DL_AAS_v3」は、2025年8月20日現在、開発途中の次世代プロトコルです。

目次


  1. なぜ、「指示文(プロンプト)の改善」では限界なのか?
  2. 解決策は「思考の規律」をインストールすること ― 4DL_AAS_v3の核心
  3. 「規律」あるAIが、全社の現場をどう変えるのか?
  4. なぜ、これが次世代AI時代の「新常識」になるのか
  5. まとめ ― 新しいモデルに相応しい「知性のOS」へ

 

1. なぜ、「指示文(プロンプト)の改善」では限界なのか?

 

「これだけ賢いGPT-5を、なぜ思い通りに操れないのか?」――多くの担当者がそう感じています。その答えは、プロンプトという“指示文”の巧拙ではなく、より根深い「3つの断絶」にあります。

  • 記憶の断絶:
    プロンプトは単発の命令です。AIは前の対話の「結論」を覚えていても、その結論に至った「なぜ?」という文脈や背景を忘れてしまいます。これが「対話」と「記録」の乖離を生み、「言った・言わない」問題の温床となります。

  • プロセスの断絶:
    ビジネスには「発想→実行」というプロセスがあります。しかし、プロンプトでは「発想を広げる指示」と「計画に落とす指示」が分断され、多くのアイデアが「絵に描いた餅」で終わります。

  • 再現性の断絶:
    優れたプロンプトは、個人のスキルに依存することが多いと言うのも事実です。これでは、一部の優秀な人材しかAIを使いこなせず、組織全体の能力には繋がりません。

2. 解決策は「思考の規律」をインストールすること ― 4DL_AAS_v3の核心

 

4DL_AAS_v3は、AIに3つの思考モードをインストールし、対話の文脈に応じて自律的に切り替えさせます。これにより、AIは単なる回答生成ツールから、議論を導く知的パートナーへと進化します。

 

モード 役割 ビジネスにおける思考プロセス
CREATIVE 「What if?」(もし~なら?) 前提を疑い、思考の枠を広げ、新たな可能性を探る「発散のエンジン」
REFLECTIVE 「So what?」(だから、何が重要か?) 複数の選択肢を評価・吟味し、意思決定の本質を見極める「熟考の羅針盤」
DISCIPLINE 「Now what?」(では、どうするか?) 決定事項を実行可能な計画に落とし込み、行動を促す「実装のアーキテクト」

この「発散→熟考→実行」という知的生産の黄金サイクルを、AIが自律的にファシリテートする。AIに「思考の規律」を与えることこそが、4DL_AAS_v3の本質です。

 

3. 「規律」あるAIが、全社の現場をどう変えるのか?

 

この「思考OS」を導入することで、DX推進部門だけでなく、全社の現場業務が変革されます。

  • 営業部門では:
    個人の経験則に頼った提案活動から脱却。CREATIVEモードで顧客の潜在ニーズを多角的に探り、DISCIPLINEモードで受注確度の高い、具体的なアクションプランを策定。チーム全体の提案力が底上げされます。

  • 製造・開発部門では:
    場当たり的な改善活動が、データに基づいた継続的な改善サイクルに変わります。CREATIVEモードで品質問題の根本原因仮説を広げ、REFLECTIVEモードで最も投資対効果の高い施策を選定。DISCIPLINEモードで確実な実行と標準化を担保します。

  • マネジメント層では:
    現場から上がってくる報告が、「個人の意見」から「構造化された意思決定案」に変わります。AIがDISCIPLINEモードで目的・成果物・リスクを整理するため、経営層は迅速かつ的確な投資判断を下せるようになります。

4. なぜ、これが次世代AI時代の「新常識」になるのか

 

4DL_AAS_v3には、他のAI活用とは一線を画す2つの特徴があります。

  1. AI自身が「決定事項」を記憶し続ける義務を負う:
    プロトコルには、AIが対話における決定事項・前提条件・制約を常に記憶し、矛盾が生じないよう管理する機能が実装されています。これにより、「言った・言わない」問題や論点のズレをAI自身で防ぎ、議論の一貫性を担保します。

  2. 組織に合わせて「育てる」ことができるOSである:
    このプロトコルは、議論の成功パターンを文脈としてメモリー機能に記憶し、進化し続けます。優秀な人材の思考プロセスをAIで再現し、組織全体の標準知として展開することで、属人的なノハウを、模倣困難な組織の競争優-位性へと転換します。

5. まとめ ― 新しいモデルに相応しい「知性のOS」へ

 

GPT-5という次世代AIの登場で、個々の「答え」の質は飛躍的に向上しました。

しかし、本当のDXとは、その賢い答えを、いかにして組織全体の「成果」に繋げるかという設計思想にあります。

4DL_AAS_v3は、AIに自律的な思考の規律を与えることで、組織の知的生産サイクルを加速させるための設計図です。

我々はこの「思考OS」を、現在鋭意開発・検証しています。

完成後は、4DL Technologies株式会社がエンタープライズ企業へ提供する各種サービス(ANTシリーズ/ANCシリーズ)へ順次実装し、皆様の現場へお届けする予定です。

場当たり的な指示文(プロンプト)でAIの性能に振り回される時代は終わります。

新しいモデルに相応しい4DL独自のLLM駆動技術にご期待ください。

AIと共に「思考のOS」を回す。それが、これからの時代のDX推進です。