最先端の情報を駆使し、企業の未来を描くのは、私たち経営企画の役割だったはずだ。しかし今、Copilotが“もっともらしい戦略案”を数秒で生成する。市場データ、競合分析、SWOT分析、そして精緻なPowerPoint資料。これまで我々の専門性と自負してきた領域が、AIによって瞬時に再現されていく。私たちの役割は、もうAIに取って代わられたのだろうか──?
みなさん こんにちは《聴くチカラ研究所》の4DL Technologies株式会社CCO荒巻順です。ブログへのご訪問、ありがとうございます。
CopilotやChatGPT、Geminiなどの生成AIのビジネス現場投入によるその圧倒的な効率化は、誰もが認めるところでしょう。
しかし、その“速さ”を手に入れた今、多くの経営企画担当者が新たな壁に直面しています。AIが支援してくれた、論理的で抜け漏れのない、美しい資料。
それを手に経営会議に臨んだとき、経営陣から返ってくるのは、このような言葉ではないでしょうか。
「よくまとまっている。だが、これは他社と何が違うのか?」
「この分析から導かれる打ち手は、本当に我々の事業を飛躍させるのか?」
「そもそも、我々が今、本当に向き合うべき課題はそこなのか?」
効率化の先にあるはずの「事業を差別化する鋭い洞察」や「常識を覆す仮説の跳躍」が、かえって見えにくくなっているのかもしれません。
スピードと引き換えに、思考の“深さ”や“鋭さ”が失われているのではないか。Copilot時代を生きる経営企画部門に今、その存在価値が、改めて問われ始めているのではないでしょうか。
なぜ、このような事態が起きるのでしょうか。それは、Copilotをはじめとする生成AIが、フレームワークに基づいた思考の再現を得意としているからです。
3C分析、PEST分析、ファイブフォース分析といった定番のフレームワークを提示すれば、AIは瞬時に情報を整理し、もっともらしい示唆を導き出してくれます。
その結果、何が起きるか。どの企業の経営企画部門も、一定水準以上のクオリティを持つ「優等生な分析」と「もっともらしい仮説」を、いわば“標準装備”する時代が到来したと言えるでしょう。
かつては、情報を迅速に収集し、論理的に整理・分析する能力そのものが、優秀な企画担当者の武器でした。しかし今、その武器はAIによってコモディティ化(平準化)されつつあります。
もはや、アウトプットの「速さ」や資料の「整い方」で他社と差をつけることは難しくなってきています。
これからの経営企画の価値は、AIに分析を“実行させる前”の段階、すなわち「どのような切り口で市場を見るか」「どの前提を疑い、新たな問いを立てるか」という、“問いそのものを設計する力”へと移行し始めているのではないでしょうか。
同じデータを見ても、A社は脅威と捉え、B社は機会と捉える。その差は、データの前にある「問いの質」から生まれてくると言えるのかもしれません。
もちろん、優秀な経営企画のプロフェッショナルであるあなたは、すでにその重要性を理解し、日々、鋭い問いを立てる努力を続けていることでしょう。
しかし、その“問いを立てる力”が、あなたの頭の中にだけ存在する「属人的なスキル」になってはいないでしょうか。その卓越した思考プロセスは、他のメンバーに継承され、組織の力として再現されていますか?
エースであるあなたの問いは鋭い。
しかし、チーム全体としては、ありきたりな問いしか立てられない。これでは、組織としての戦略構築能力をもう一段高めることは難しいかもしれません。
Copilot時代に本当に求められるのは、個人の「問いの精度」だけではなく、組織全体で良質な問いを生み出し続けるための「問いの再現性」であり、それを可能にする「問いの資産化」です。
つまり、必要なのは“閃く個人”ではなく、閃きである”問いを生み出す仕組み”なのかもしれません。
私たちはそれを「問いのOS」と呼んでいます。
個人の閃きや経験則に依存するのではなく、戦略的な問いを構造化し、誰もがその型を共有・活用・発展させられる思考のプラットフォーム。
それこそが、組織として継続的に質の高い戦略を生み出すための、重要な鍵となるのではないでしょうか。
「Copilotは思考の壁打ち相手になる」と言われます。あなたの部署でも、おそらく似たような光景が見られるのではないでしょうか。
経験豊富なエース社員Aさんは、Copilotとの対話を通じて、次々と仮説の精度を高めていきます。
「その分析の前提となっている市場成長率は、本当に妥当か?」
「競合B社の動きを“脅威”と捉えるだけでなく、“我々のビジネスモデル変革の触媒”と捉え直すと、どんな打ち手が見える?」
──Aさんの頭の中にある無数の視点や経験則が、AIへの問いに変換され、一人ではたどり着けない深い洞察へと繋がっていく。
一方で、意欲的だが経験の浅い若手社員Cさんは、なかなかAIを使いこなせません。
「新規事業のアイデアを出して」という指示に対して、AIが返してきたありきたりのリストを眺めて途方に暮れる。
「この資料を要約して」といった作業レベルの活用に留まり、戦略的な対話にまで発展させることができない。
同じツールを使っているはずなのに、アウトプットの質には雲泥の差が生まれてしまうのです。
この差は、個人の能力だけの問題でしょうか?
私たち4DLは、そうは考えません。
これは、Aさんの頭の中にある「問いの立て方」「思考の進め方」という暗黙知が、Cさんには共有されていない、という構造的な課題だと考えます。
MS365 Copilotという強力なエンジンをチームに搭載しても、それを動かすための設計図、つまり「思考のOS」がなければ、アクセルを踏み込むことすらできない。
これこそが、多くの経営企画部門が直面している“AI活用の属人化”という現実ではないでしょうか。
Aさんのような創造的な思考を、組織としてどう担保し、Cさんのような若手のポテンシャルをどう引き出すか。
そのためには、個人のセンスに依存しない、規律ある思考の型(Framework)と、それを支える創造的な問いのスタンス(Protocol)が、今まさに求められているのです。
Copilotの登場により、経営企画部門は大きな岐路に立たされているのではないでしょうか。もはや、情報の「速さ」や分析の「正しさ」で競う時代は終わりを告げようとしています。
それらは生成AIによって標準装備され、経営企画部門の存在意義には直結しにくくなるでしょう。
これからの時代、経営企画部門の価値は、そして企業の戦略レベルは、「どの問いを、どう設計し、どう組織で共有するか」によって決まってくると言えるのではないでしょうか。
鋭い問いを立てる個人がいるだけでは、十分とは言えないのかもしれません。
その問いを組織の力に変える“OS”を持つ企業こそが、MS365 Copilotを真の武器として使いこなし、持続的な競争優位を築いていけるのではないでしょうか。
ビジネスの根幹である経営企画部門の《問いの再設計 = 個人ではなくチームでの共有 = Copilotの思考支援ツールへの進化》と4DLでは考えています。
問いを再設計するアーキテクチャである4DL_AASは、Copilotの”使い方”をアップデートするのではありません。あなたの、そしてあなたの組織の、“問いのあり方”そのものをアップデートする設計思想なのです。
「問いのOS」という概念に触れても、それを現実の業務にどう落とし込み、組織全体にどう展開するかという設計プロセスがなければ、AI活用は一過性のツール導入に終わってしまう可能性があります。
その実装フェーズを担う構造設計トレーニング──それが、4DL Technologiesが提供する《ANT-B1》です。
一般的な“AIプロンプト研修”とは、まったく意味が異なります。
《ANT-B1》は「プロンプトの打ち方」を学ぶ場ではなく、経営思考そのものをAIに実装する“構造”を自社ごとに設計するワークショップ形式のエンタープライス企業向けのトレーニングです。
汎用的なテンプレートの使い回しではなく、経営企画部門に所属するような非エンジニアを”思考の設計者”に育てることこそが、このプログラムの本質と言えるでしょう。
《ANT-B1》は、経営企画部門の中核人材が持つ戦略的な問いの構造を、生成AI(Copilotなど)で再現・再利用・自社展開可能なアーキテクチャへと変換していく、実践型の設計プログラムです。
単なるプロンプト作成ではなく、自社独自の戦略OS=思考アーキテクチャそのものを設計・実装するという位置づけで、以下のカリキュラムで構成されます。※ エンタープライズ企業の様々な状況に合わせてカスタマイズを前提としていますので、以下のカリキュラム概要はあくまでもトレーニングの粗筋としてご覧下さい。
STEP1|「4DL_AAS3層構造」の理解と適用設計
まずは、4DL_AASの基礎となる3階層モデルを理解します。
Protocol層(思考・再帰):誰の視座・価値観で問いを立てるのか
Framework層(組織・業務):どのような仮説構造・意思決定フローで展開するのか
Prompt層(生成):Copilotに何を、どう指示し、何を得るのか
これらの違いを捉え、創造性(Protocol)/規律性(Framework)/生成性(Prompt)という3層構造のプロンプト設計手法を学習します。
STEP2|自社に最適化した4DL_AAS構造を設計する
理解した3層構造を、自社の経営課題・業務テーマにあてはめて分解・設計します。
例えば、Protocol層には経営企画の視座や価値観を、Framework層には部門横断で使える仮説展開モデルを、Prompt層には誰が使っても再現性の高いプロンプト構文を定義します。
このプロセスを通じて、属人的なセンスに依存せずに、戦略設計の“思考OS”を誰もが活用できる構造へと転換していきます。
STEP3|実在テーマでAI動作を検証し、チューニングする
最終ステップでは、実際の経営企画テーマや構想書ネタを使って、設計した4DL_AAS構造をAIに投入。
出力の質、論点の深さ、回答の汎用性、視座の再現性などを多角的に評価し、必要に応じて構造の再帰・チューニングを行い、最終的な自社版AASを完成させます。
この3ステップにより、ANT-B1では「Copilotを使えるようになる」のではなく、「Copilotで勝てる問いを、自社文脈で設計できるようになる」ことを目指します。
ANT-B1の本質とは──
経営企画部門が、生成AI時代においてもなお、「他社には真似できない問いの構造=戦略OS」を自ら設計し、再現・共有・アップデート可能なアーキテクチャとして自社に実装するための、唯一の設計型ワークショップ・トレーニングなのです。