経営企画・広報・ブランディング部門が「Copilotをもっと活用するには?」という声がDX推進部門メンバーとの雑談で多くなっていると聞きます。しかしコーポレート部門の現場は、なかなかCopilotが単純な作業ベースから動きません。
問題は“使い方”ではなく、“問い方”にある。4DL Technologies株式会社がエンタープライズ企業とのおつき合いの中で見えた、変化が始まる組織の共通点を記事にしました。
みなさん こんにちは《聴くチカラ研究所》の4DL Technologies株式会社CCO荒巻順です。ブログへのご訪問、ありがとうございます。
「Microsoft Copilot、うちの部門でも何か企画や分析に使えないだろうか?」
全社へのCopilot導入から数ヶ月。あなたの所属するDX推進部門には、経営企画、広報・IR、サステナビリティ、あるいはブランディングといった、いわゆるコーポレート部門から、こうした声が届き始めていないでしょうか。
それは、これまでの「使い方がわからない」といったヘルプデスク的な問い合わせとは少し毛色が違います。漠然としながらも、そこには「自部門の業務を変革できるかもしれない」という確かな“期待”が込められています。
しかし、その一方で、「具体的に何から手をつければいいのかわからない」という“迷い”も同時に感じられるはずです。結果として、何度か打ち合わせを重ねても話は具体化せず、現場は結局、何も動かない。
DX推進部門としても、彼らの抽象的な要望にどう応えればよいのか、有効な一手を見出せずに時間だけが過ぎていく……。
もし、この状況に心当たりがあるのなら、それはあなたの組織が次の変革ステージに進むための重要なサインです。
Copilotの定着が新たな局面を迎える中で見えてきたこの課題の本質は、ツールの機能理解や操作スキルの問題ではありません。
それは、組織がAIといかにして「対話」を始め、価値ある「問い」を立てられるかという、より根源的なテーマに繋がっています。
本記事では、コーポレート部門から寄せられる“漠然とした期待”を、具体的な“変化の起点”へと変えるために、DX推進部門が果たすべき役割と具体的なアプローチについて、私たち4DL TechnologiesがPoC(Proof of Concept/概念実証)を通じて得た知見を交えながら探っていきます。
全社ライセンスを導入し、操作マニュアルやeラーニングを整備し、社内説明会も開催した。DX推進部門として、やるべきことはすべてやったはず。
それなのに、社内は静まり返ったままだ。一部のアーリーアダプターを除き、ほとんどの社員にとってCopilotは「まだよくわからない、新しいツール」の域を出ない。
この状況は、多くの企業で共通して見られる「定着の壁」です。
特に、企画・分析・発信といった非定型業務を担うコーポレート部門において、この壁はより高く、厚いものになりがちです。
彼らは、日々の定型業務を効率化したいわけではありません。中期経営計画の策定、競合の動向分析、新たなブランドメッセージの開発、ESG関連の情報開示レポートの作成など、より複雑で、正解のない課題に取り組んでいます。
だからこそ、生成AIのポテンシャルには強い関心を持っています。
「市場のメガトレンドを分析させたら、何か新しい事業のヒントが得られるかもしれない」
「投資家向けの新しい統合報告書の構成案を、壁打ち相手になってもらえないか」
「Z世代に響くような、新しい企業パーパスのキャッチコピーをブレストしたい」
期待は大きいのです。
しかし、その期待を具体的なCopilotへの「指示=プロンプト」に落とし込むことができない。
なぜなら、彼らの課題はあまりにも漠然としており、Copilotに何を、どのように問えば、価値ある応答が返ってくるのか、その作法が全くわからないからです。
一方で、DX推進部門もまた、彼らの業務の機微や戦略的な背景を完全に理解しているわけではありません。
そのため、「Copilotにはこんな機能があります」「こういうプロンプトを試してみてはいかがでしょう」といった機能ベースのアドバイスに終始してしまい、彼らの本当に解決したい課題の核心に触れることができません。
結果として、コーポレート部門は「関心はあるが、何に使えるかがわからない」と感じ、DX推進部門は「彼らの曖昧な期待に、どう応えるべきか悩んでいる」。
この両者間の“定着ギャップ”こそが、Copilotが「宝の持ち腐れ」となってしまう最大の原因なのです。
問題を突き詰めれば、それは「操作の習得」の問題ではなく、「目的の設計が不在」であることに起因しています。
私たちは、Copilotを「賢い検索エンジン」や「便利な文章作成アシスタント」の延長線上で捉えがちです。しかし、その本質は全く異なります。
Copilotは、答えを教えてくれる魔法の杖ではありません。
その真価は、ユーザーが持つ「問い」を深め、思考を拡張し、新たな視点を提供することにあります。
つまり、Copilotは“使えば誰でも便利”なツールではなく、“優れた問いを持つ人”にこそ、計り知れない価値を発揮する思考補助装置なのです。
この事実は、導入初期の定着フェーズにおいて決定的な意味を持ちます。
多くの企業が、「まず使ってみる」ことから始めようとします。
しかし、明確な「問い」や「目的」がないままツールに触れても、「日々のメール作成が少し早くなった」「会議の議録が自動でできた」といったレベルの小さな効率化に留まりがちです。これでは、コーポレート部門が求めるような、戦略的な業務変革には到底結びつきません。
Copilot活用に火がつき、組織全体へと燃え広がっていく企業では、アプローチが全く逆です。彼らは「何に使うか(How)」からではなく、「私たちは、このAIを使って何を変えたいのか?(What/Why)」という、根源的な「問い」を立てることから始めています。
コーポレート部門の心に関心の火をつけ、具体的なアクションへと駆り立てるために必要なのは、操作マニュアルではなく、彼ら自身の業務と向き合い、こうした「変革の問い」を再設計する機会そのものなのです。
経営企画や広報・IR・ブランディングは、組織の「意思を社会に伝える司令塔」であると同時に、「社内の視座を整える触媒」でもあります。
AIが加わる時代に、その役割は「業務の効率化」ではなく、「意味の再定義」へと進化しようとしています。
では、どうすれば組織の中に「変革の問い」を生み出すことができるのでしょうか。そのための最も効果的なアプローチが、PoC(Proof of Concept/概念実証)という名の、組織的な「問いの実験場」を設けることです。
ここで言うPoCとは、単なる技術的な機能検証ではありません。それは、参加者自身の業務課題とCopilotの可能性を接続し、新たな活用の意味を“自分たちで発見する”ための、デザインされた初期体験の場です。
私たち4DL Technologiesが提供する研修プログラム【ANT-B0】は、まさにこの「問いの再設計」を実践するために最適化された思考プロトコルであり、多くの企業でPoCのコアエンジンとして活用されています。
ANT-B0は、座学で機能を知る研修ではありません。参加者が自部門のリアルな課題を持ち寄り、Copilotとの対話を通じて、その課題構造を解き明かし、解決策の仮説を立て、業務プロセスを再定義していく、極めて実践的なワークショップです。
例えば、先ごろPoCをご一緒した阪神電気鉄道株式会社様のような企業では、経営企画や広報部門の担当者が主体となり、自社の事業戦略やコミュニケーション戦略をテーマに、Copilotを「思考の壁打ちパートナー」として活用する体験を深めました。
「自社の沿線価値を、新たな切り口で再定義するとしたら?」
「サステナビリティレポートを通じて、投資家に伝えるべき最も重要なメッセージは何か?」
こうした抽象度の高い問いから始め、Copilotとの対話を重ねる中で、参加者たちは自らの思考が整理され、新たな視点が生まれる感覚を掴んでいきます。
そして、そのプロセスを通じて、Copilotは「ただの補助ツール」から、「自分たちの戦略的な問いに、共に挑む共創パートナー」へと、その意味合いを昇華させていくのです。
この「自分たちの手で、活用の意味を発見した」という原体験こそが、何よりも強力な定着のエンジンとなります。
参加者の多くは「AI活用なんて自分とは関係ないと思っていた」と話していました。それが、問いを立ててCopilotにぶつけてみるうちに、次々と新しい仮説が生まれ、「こんなことが考えられるとは思っていなかった」と、セッション後には自発的に業務改善のアイデアをチームで共有しはじめたのです。
こうしたPoCが成功し、現場が自律的に動き始める組織には、一つの明確な共通点があります。それは、DX推進部門の役割が「導入者」から「問いの対話者」へとシフトしていることです。
Copilot定着の新たなフェーズにおいて、DX推進部門に求められるのは、ツールの機能を教える「先生」ではありません。
各部門が抱える課題に寄り添い、彼らが価値ある「問い」を言語化し、Copilotとの対話を通じて答えを見つけ出していくプロセスを支援する、“社内ファシリテーター”としての役割です。
具体的には、以下のようなアクションが考えられます。
Copilot定着の鍵は、この“問いの言語化 → 小さな成功体験 → 組織内波及”という正のスパイラルを、いかに意図的に設計できるかにかかっています。DX推進部門は、その連鎖反応を促す触媒(カタリスト)なのです。
Copilotの導入に、本質的な意味での「失敗」はありません。ただ、“問いのない導入”が、成果に繋がらないだけです。
もし今、あなたの部門に、経営企画や広報といったコーポレート部門から「何かしたい」という曖昧な期待が寄せられているとしたら、それは決して厄介な相談事などではありません。
それは、組織がAIとの新たな関係性を築き、次のステージへ進化しようとしている胎動の表れです。
DX推進部門がいま向き合うべきは、その“曖昧な期待”の奥にある、変革への渇望です。
Copilot定着に悩む企業の多くが、PoCという“小さな問いの場”から再起動しています。特に経営企画・広報部門が最初に火をつけることで、社内のAI活用は一気に加速します。
まずは、ANT-B0のトライアルから始めてみませんか。
ANT-B0が、Copilotの価値を証明する場であると同時に、組織の中に眠る「変革の問い」を生み出すための装置でもあります。
私たち4DL Technologiesが提供する【ANT-B0】は、そのプロセスを加速させ、組織変革の最初の起爆剤となることをお約束します。
Copilotを“使わせる”のではなく、現場が“使いたくてたまらなくなる”ような、価値ある「問い」を、共に創り出す旅を始めましょう。
Copilot導入の“その先”を描くために──B0から始める定着設計をDX推進部門の皆様と
Copilotの導入はゴールではなく、始まりにすぎません。真に業務変革へとつなげるには、「定着」──すなわちチームの思考の質と速度を変えるリスキリングが不可欠です。
私たち4DL Technologies株式会社では、Copilotの定着と本質的な業務変革を支援する3つのリスキリングプログラムをご用意しています。
Copilotを“調べ物ツール”などの単純作業利用で終わらせず、思考をともに進める相棒として使いこなす第一歩を体感しませんか?
Copilotにどう問いかければ、欲しい情報が出てくるのか?そして、Copilotから問い返して暗黙知を深掘りしてくれる体験。
業務文脈に合わせた「問いのOS」をインストール。まずはこのB0から始めて、チーム内でのリスキリングを“スモールスタート”しませんか?
自社の業務にCopilotを本格活用するためのエンタープライズ企業として求めるプロンプトの設計力・再現力・構造化力を非エンジニア向けが学びます。
B0で体感した「思考支援ツールとしてのCopilot」をベースに、業務プロセスにAIを実装する力を養います
Copilot Studioというノーコードツールを活用して、社内専用のAIエージェントを設計・導入を自走するチームにしませんか?
現場が、自分の仕事を、自分たちで設計・開発・修正の試行錯誤できる「業務をAI化する」自走できる状態を目指します。
「Copilotを“思考の相棒”に変える」という明確な効果をパイロットチームに体感してもらい上司に提案できる状態をつくりませんか?
場合によっては、あなたが稟議を上げる経営層に「AIによる思考支援の未来」を体感・実感してもらうという作戦はいかがでしょう?
そんな仕掛けにもB0は最適です。
荒巻 順|4DL Technologies株式会社 CCO(AIソリューションデザイン統括)
専門は、独自のプロンプト設計手法(ODGC/4DL_AAS)を用い、AIを「思考支援」ソリューションへと進化させる「生成AI導入・定着コンサルティング」です。
NTTドコモビジネス様で25年以上にわたりBtoBセールス部門の研修・試験設計を、千葉市産業振興財団様で12年間、創業支援研修の企画運営を責任者として担当しました。この経験を基に、通信・鉄道・自治体など、様々な組織へのAI導入・定着支援を主にトレーニングという側面から行っています。
Q3. 生成AIの導入・定着について相談すると、何が得られますか?
貴社の業務プロセスにAIを組み込み、AI活用による「業務の高付加価値化」が現場で自走する状態を目指します。たんなるプロンプト研修では無く、主要なAIプラットフォームに対応した独自のプロンプト設計手法(4DL_AAS)を用いた実務的な組織的LLM動作設計から、定着・内製化までを一貫して支援することで、付加価値を生み出し続ける強い組織を構築します。