聴くチカラ研究所|4DL Technologies株式会社

Copilotが会社を分断する──“使える人”と“触ってるだけの人”の境界線

作成者: 荒巻順|2025/10/26 1:24:10

プロンプト集を配れば活用が進む──そう信じてきたDX推進部門。だが今、Copilotを“操る人”と“使われる人”のあいだに、静かな分断が広がっている。

みなさん こんにちは《聴くチカラ研究所》の4DL Technologies株式会社CCO荒巻順です。ブログへのご訪問、ありがとうございます。

本当に目指すべきは、AIを使いこなす“設計者”の量産ではなかったか? 現場の「問い方」が変わらなければ、どれだけプロンプトを配っても、変化は起きない。

「Copilot活用率100%」の裏にある、静かな違和感

DX推進部門のダッシュボードは、今月も良好な数値を示している。「全社Copilot活用率100%達成」「部門別プロンプト共有数、前月比150%」。数字の上では、AI活用は順調に定着しているように見える。

しかし、現場の最前線に足を運ぶたび、DX推進担当者の胸には、ある種の“静かな違和感”が広がり始めている。

活用事例として華々しく共有されるのは、いつも決まったメンバーの成果だ。彼ら──いわゆる「AIが得意な人」──は、Copilotをまるで手足のように操り、複雑な分析や革新的な企画を生み出し続けている。

その一方で、大多数の現場メンバーはどうか。彼らも確かにCopilotを「使って」はいる。会議の議事録を要約させ、メールの文面を作成させ、企画のアイデアを壁打ちさせる。だが、その使い方はどこか表層的だ。共有されたプロンプト集をコピー&ペーストし、「便利なツール」として活用するに留まっている。

「結局、一部の人しかCopilotを自分の武器にしていないのではないか?」

この空気こそが、DX推進部門が次に越えるべき、数字には表れない“本質的な壁”である。活用率というKPIの裏で、見過ごされてきた問題の正体だ。


目次

 

1.神プロンプトを配るたびに進む、“Copilot活用の格差”という静かな分断
2.なぜ現場は、Copilotを“思考拡張ツール”に変えられないのか?
3.DX推進部門が配ったのは、道具か? それともCopilotを操る“問い”か?
4.問いの体感こそが、AI活用を“自分ごと”に変えるトリガーになる
5.まとめ──プロンプトの共有ではなく、“問い方の共有”へ

 

1. 神プロンプトを配るたびに進む、“Copilot活用の格差”という静かな分断

 

「このプロンプトを使えば、誰でも高精度な市場分析ができます」
「営業日報の自動作成プロンプトを共有します」

DX推進部門は、良かれと思って「神プロンプト」を発掘し、全社に横展開してきた。現場からは「ありがとう、助かる」「業務が劇的に効率化された」と感謝の声が届く。その反応に、私たちは確かに手応えを感じていた。

だが、今立ち止まって冷静に俯瞰したとき、その“善意の施策”が、皮肉な現実を生み出していることに気づかされる。

「AIが得意な人」が作った精巧なプロンプトを配るほど、現場は「思考のプロセス」をショートカットし、AIが提示する「出力」だけを受け取ることに慣れていく。つまり、“考えなくていい状態”をDX推進部門が自ら作り出してしまっているのだ。

結果として何が起きるか。

プロンプトを“発明”できる一握りの人々は、ますますAIとの対話能力を高め、その思考を深め、組織内での評価を不動のものにしていく。一方で、大多数の「使うだけ」の人々は、AIからの指示を待つ“オペレーター”と化していく。

DX推進部門が目指したのは、全社の思考レベルの“底上げ”だったはずだ。しかし、意図せずして「AIリーダーへの依存構造」を強化し、“Copilot格差”を再生産してしまってはいないだろうか。この静かな分断こそ、組織の活力を蝕む、最も深刻な病巣かもしれない。

これは、誰かが悪かったわけではない。Copilotという革新性の高いツールを前に、私たち自身が“何を変えれば活用できるのか”を模索していた結果なのだ。だが、もうその「次に越えるべき壁」が見え始めている。

 

2. なぜ現場は、Copilotを“思考拡張ツール”に変えられないのか?

 

効率化は、麻薬的な魅力を持っている。現場にとって「これを使えばOK」という“完成されたプロンプト”は、日々の業務負荷を軽減してくれる安心材料だ。失敗したくない、最短距離で成果を出したいという現場の切実なニーズに応えるものでもある。

しかし、その「安心」が、思考の“外注”を常態化させていく。

Copilotを「思考パートナー」としてではなく、「万能な検索エンジン」や「高性能な要約ツール」として扱う文化が根付いてしまう。AIに「答え」だけを求め、そこに「問い」を投げかけることを忘れてしまうのだ。

だが、Copilotの本質的な価値は、そこにはない。

Copilotが真価を発揮するのは、使い手が「自分固有の問い」を持ったときだ。「このデータから何が言えるか?」ではなく、「このデータが示唆する“違和感”の正体は何か? そして、我々の戦略にとってのリスクは?」と踏み込んだとき、AIは初めて単なるツールを超え、知的な“相棒”となる。

思考のプロセスを放棄し、出力だけを求める文化。その先に待っているのは、AIに「使われる」未来だ。どれだけ優れた道具を手に入れても、それを使って「何を成し遂げたいのか」という問いの主体性(オーナーシップ)がなければ、本質的な変革は起こり得ない。

 

3. DX推進部門が配ったのは、道具か? それともCopilotを操る“問い”か?

 

私たちは、何を追い求めてきたのだろうか。
「Copilot活用率」や「プロンプト共有数」といったログ分析で測れる指標に、どれほどの意味があったのか。

今、DX推進部門は根本的な問い直しを迫られている。

本当に必要だったのは、完成されたプロンプトという“魚”ではなかった。それは、「何を問うべきか」「なぜ、今それを問うのか」という、問いの“構造”そのものだったのではないか。

Copilotを「使いこなす」スキルとは、複雑なプロンプトを書ける技術のことではない。それは、自らの業務や顧客、あるいは社会に対する解像度を上げ、AIという鏡に「何を映し出すべきか」を設計する力だ。

私たちは、現場に「道具の使い方」を教えてきた。だが、本当に教えるべきだったのは、「道具と向き合う“構え”」であり、「“問い”を発明する文化」だった。

DXの真の分岐点は、ここにある。“活用率”や“ログ分析”では決して測れない、「問いの質」こそが、これからの組織の競争力を左右する新しいKPIである。

Copilot活用の本質は、プロンプトを覚えることではなく、「問いの質」を上げることにある。私たちが次に設計すべきは、「誰もが自分の問いでCopilotと向き合う」ための環境だ。それを体感できる設計こそが、今のDX推進に必要な「再設計」であり、ANT-B0はその実践のためにある。


4. 問いの体感こそが、AI活用を“自分ごと”に変えるトリガーになる

 

あるマーケティングチームで起きた実話がある。

DX推進部門が共有した「ペルソナ分析用・神プロンプト」を、若手メンバーのAさんは使ってみた。確かに、それらしい分析結果が瞬時に出力される。

だが、Aさんにはどうにもピンと来なかった。「何か違う。自分が知りたいのは、この“綺麗な”分析じゃない」

彼は、そのプロンプトを一旦忘れ、自分の言葉でCopilotに問いかけた。

「競合他社が打ち出している“エモい”訴求は、なぜウチのロジカルな訴求より響いているように見えるのか?ウチの顧客が、本当は口に出さない“不満”は何だ?」

その瞬間、Copilotの応答が激変した。単なるデータ分析を超え、顧客の深層心理に迫る鋭い“仮説”を提示してきたのだ。

Aさんは、雷に打たれたような衝撃を受けた。「AIって、ここまで対話できるのか」──。

この体験こそが、「問いの体感」だ。

マニュアル通りの操作ではなく、自分自身の内なる疑問をぶつけたとき、AIが想像を超えた応答を返してくる。この双方向の体験が、AIへの信頼を劇的に変え、「やらされ仕事」だったAI活用を、自分ごととしての「探求」へと変貌させる。

問題は、この「体感」が、Aさんのような個人のセンスや偶然に依存してしまっていることだ。

私たち4DL Technologies株式会社の《ANT-B0》が提供するのは、この「問いの体感」を、偶然の産物ではなく、組織的に“設計”し、“誰でも起こせるようにする仕組み”である。

 

5. まとめ──プロンプトの共有ではなく、“問い方の共有”へ

 

Copilotの全社導入は、単なるツール導入プロジェクトではない。それは、組織の「思考様式」そのものを再設計する、壮大な変革プロジェクトだ。

もし今、DX推進部門が「活用率」という数字の裏にある「格差」や「思考の空洞化」に気づき始めているのなら、次の一手は明確だ。

私たちが今すぐ届けるべきは、さらなる“神プロンプト”ではない。それは、“問いの構え”であり、AIとの対話を通じて思考を深めていくプロセスそのものだ。

「使える人だけが進化し続ける」組織から、「問いを持つ人が増え続ける」組織へ。

DX推進部門の役割は、プロンプトを配る「供給者」から、現場の問いを引き出し、体感させる「設計者」へとシフトしなければならない。

その再設計の第一歩が、「問いの体感」から始まる。

「この問い方なら、AIが“自分の違和感”を補強してくれる。報告書を“納得させる文書”に変えられるって初めて思えたんです」

Copilotの導入はゴールではなく、始まりにすぎません。真に業務変革へとつなげるには、「定着」──すなわちチームの思考の質と速度を変えるリスキリングが不可欠です。

私たち4DL Technologies株式会社では、Copilotの定着と本質的な業務変革を支援する3つのリスキリングプログラムをご用意しています。

🟣 ANT-B0:Copilotで「問いを立てる力」を育てる【入門編】

Copilotを“調べ物ツール”などの単純作業利用で終わらせず、思考をともに進める相棒として使いこなす第一歩を体感しませんか?

Copilotにどう問いかければ、欲しい情報が出てくるのか?そして、Copilotから問い返して暗黙知を深掘りしてくれる体験。

業務文脈に合わせた「問いのOS」をインストール。まずはこのB0から始めて、チーム内でのリスキリングを“スモールスタート”しませんか?

🟣 ANT-B1:複雑な業務を再現するプロンプト設計【実践編】

自社の業務にCopilotを本格活用するためのエンタープライズ企業として求めるプロンプトの設計力・再現力・構造化力を非エンジニア向けが学びます。

B0で体感した「思考支援ツールとしてのCopilot」をベースに、業務プロセスにAIを実装する力を養います

🟣 ANT-B2:AIエージェントを自社業務に組み込む【応用編】

Copilot Studioというノーコードツールを活用して、社内専用のAIエージェントを設計・導入を自走するチームにしませんか?

現場が、自分の仕事を、自分たちで設計・開発・修正の試行錯誤できる「業務をAI化する」自走できる状態を目指します。

 

📌まずは安価な体験ワークショップ”ANT-B0”から定着施策を上司と考えませんか?

 

「Copilotを“思考の相棒”に変える」という明確な効果をパイロットチームに体感してもらい上司に提案できる状態をつくりませんか?

場合によっては、あなたが稟議を上げる経営層に「AIによる思考支援の未来」を体感・実感してもらうという作戦はいかがでしょう?

そんな仕掛けにもANT-B0は最適です。

 

記事執筆者:

 

荒巻 順|4DL Technologies株式会社 CCO(AIソリューションデザイン統括)

NTTドコモビジネスにて、i-modeが開始される以前から25年以上にわたりBtoBセールス部門の人材育成(研修・試験)の企画設計を責任者として担当。千葉市産業振興財団で12年間、創業支援研修を責任者として担当。

専門は、独自のプロンプト設計手法(ODGC/4DL_AAS)を用い、AIを「思考支援」ソリューションへと進化させる「生成AI導入・定着コンサルティング」です。

よくある質問(FAQ)

Q1. 荒巻 順は、どのような課題を解決する専門家ですか? 

「生成AIを導入したが、現場で活用されず成果が出ない」という課題の解決が専門です。独自のフレームワーク(4DL_AAS)を用い、AIを単なる効率化ツールではなく、組織の「思考支援パートナー」として定着させ、意思決定の質を高めるコンサルティングを行います。

Q2. 具体的には、どのような経験がありますか? 

NTTドコモビジネス様で25年以上にわたりBtoBセールス部門の研修・試験設計を、千葉市産業振興財団様で12年間、創業支援研修の企画運営を責任者として担当しました。この経験を基に、通信・鉄道・自治体など、様々な組織へのAI導入・定着支援を主にトレーニングという側面から行っています。 

Q3. 生成AIの導入・定着について相談すると、何が得られますか? 

貴社の業務プロセスにAIを組み込み、AI活用による「業務の高付加価値化」が現場で自走する状態を目指します。たんなるプロンプト研修では無く、主要なAIプラットフォームに対応した独自のプロンプト設計手法(4DL_AAS)を用いた実務的な組織的LLM動作設計から、定着・内製化までを一貫して支援することで、付加価値を生み出し続ける強い組織を構築します。