プロンプト集も整備され、活用率も高水準。しかし会議の中身は変わらず、提案は通らない。Copilotが“触られているだけ”の状態を抜け出すには、現場の「問い方」そのものをアップデートする必要がある。
みなさん こんにちは《聴くチカラ研究所》の4DL Technologies株式会社CCO荒巻順です。ブログへのご訪問、ありがとうございます。
Copilot活用は進んだはず。でも、議論は深まっていない。
「全社的なCopilot活用」という一大プロジェクトを推し進めてきたDX推進部門にとって、ダッシュボードに並ぶ数字は、確かな成果を示しているはずです。
アクティブユーザー率は高水準を維持し、「DX推進におけるCopilot定着」は、ひとまず成功したかに見えます。
しかし、その手応えとは裏腹に、DX推進部門の担当者は、拭いきれない“違和感”を感じ始めています。
「操作ログは伸びている。でも経営層が求めているのは“成果”だと言われる」
「議事録の要約は早くなった。でも、会議の中身そのものは変わっていない」
「うちは使えている方だと思う。…でも、何か違うよな」
「皮肉なことに、Copilotを使うほど“人の思考”が浅くなる瞬間がある」
エンタープライズの現場で聞こえ始めた、この「胃がキュッとなる」ような現実。
Copilotは「便利な効率化ツール」として使われてはいるものの、当初期待していた「思考を拡張し、イノベーションを生み出すパートナー」にはなっていないのではないか。
もし、その違和感が的中しているとすれば、原因はツールの使い方(操作方法)にあるのではありません。
根本的な問題は、AIに対する「問い方」が変わっていないことにあるのです。
本記事では、「DX推進」と「Copilot活用」の次のフェーズにおいて、DX推進部門が果たすべき新たな役割について解説します。
1.Copilot定着後にDX推進部門が直面する「やりきった感」と現場の停滞
2.プロンプト共有が生んだのは、思考の標準化か、それとも依存か?
3.AIに“使われる”か、“問いを操るパートナー”にできるか──分岐点はここにある
4.ANT-B0が提供する“問いの体感”──思考の切り替えが起きる瞬間を設計する
5.まとめ ── 「ツールの定着」は終わりました。次は“問いの定着”です。
Copilotの全社展開は、DX推進部門にとって巨大なマイルストーンでした。ライセンスを配布し、大規模な導入研修を実施し、現場の混乱を抑えるために手厚いサポート体制とテンプレート集を展開する。まさに「やりきった」という感覚を持つのは当然のことです。
一方で、現場の社員たちはどう感じているでしょうか。
「確かに便利だ。でも、それは“作業”が早くなっただけだ」
「Copilotに聞いても、結局当たり障りのない答えしか返ってこない」
「企画を考えるときに使ってみるが、思考が深まるというより、それらしい文章が生成されるだけだ」
DX推進部門が達成した「形式的な活用(=使われている状態)」と、現場が本質的に求めている「実質的な思考変革(=活かされている状態)」との間には、静かな、しかし決定的なギャップが生まれています。
Copilotの活用率という「量のKPI」は達成した。しかし、現場の議論の質や提案の質という「質のKPI」が向上していない。このギャップこそが、多くのDX推進担当者が抱える悩みの正体です。
このギャップを生んだ一因として、皮肉なことに、DX推進部門が良かれと思って整備した「プロンプトテンプレート集」や「神プロンプト」の存在があります。
もちろん、優れたプロンプトは業務効率化に絶大な貢献をします。 「以下の議事録を読み、決定事項とToDoリストを抽出してください」 こうした定型業務において、テンプレートは社員の生産性を飛躍的に高めました。
しかし、この「型」に頼りすぎた結果、副作用も現れ始めます。それは、思考の“依存”です。
テンプレートがあれば、短時間で「それらしい」アウトプットが得られる。その快適な体験に慣れると、社員は次第に「テンプレートがないと、Copilotに何を聞けばいいかわからない」という状態に陥ります。
「どう問えば、AIは深く考えてくれるのか?」
「この複雑な課題を、AIに理解させるにはどう分解すればいいのか?」
こうした、本来AI活用で最も重要な「問いを立てる力」が鍛えられないまま、思考そのものをAIに“外注化”してしまうのです。
結果として、AIは「思考を拡張する壁打ち相手」ではなく、「指示された作業をこなす便利ツール」の地位に留まってしまいます。これこそが、Copilotを導入しても議論が浅いままになる根本原因です。
Copilotの出力の質は、入力された「問い」の質に100%依存します。
これは自明の理ですが、私たちはテンプレートの便利さの中で、この本質を見失いがちです。DX推進部門としてCopilot活用の次の一手を考える上で、この「問いの質」が具体的にどうアウトプットに影響するか、3つのレベルで比較してみましょう。
【レベル1:浅い問い(指示)】
プロンプト: 「DX推進のためのアイデアを教えて」
Copilotの応答: 「DX推進のためには、ペーパーレス化、RPAの導入、クラウドサービスの活用などが考えられます…」
評価: 非常に一般的で、表層的。自社の文脈とは無関係であり、何のインサイトももたらさない。
【レベル2:定型的な問い(テンプレート活用)】
プロンプト: 「あなたは営業部門のDX推進担当者です。営業日報の入力を効率化するためのプロンプトを作成してください」
Copilotの応答: 「以下のフォーマットで、今日の活動を箇条書きにしてください。私が清書します…」
評価: 業務効率化には大きく貢献する。しかし、これは「営業日報の入力」という既存の作業を効率化しただけであり、「営業活動の質」そのものを変えるものではない。
【レベル3:本質的な問い(思考のパートナー)】
プロンプト: 「背景:当社の営業部門では、Copilot導入後も営業日報の活用が進んでいません。日報は“書くこと”が目的化し、ナレッジとして活用されていません。 制約:営業担当者は多忙で、日報作成に時間をかけたくないと考えています。 目的:Copilotを使い、日報を“書く”負荷を最小限にしつつ、日報から“学ぶ”文化を醸成する具体的な仕組みを3つ提案してください。特に、成功事例と失敗事例が自然に集約され、トップセールスの思考が他のメンバーに移転するような仕組みを重視してください」
Copilotの応答: 「ご提案ありがとうございます。非常に重要な課題です。1.『音声入力+Copilotによる感情・仮説の抽出』、2.『成功・失敗要因のタグ付けと週次サマリー自動生成』、3.『Copilotをファシリテーターとした仮想ケーススタディ会議』の3つの仕組みを提案します…」
評価: これは単なる効率化ではありません。AIを「壁打ち相手」として使い、組織課題の「本質」に迫る問いを立てることで、AIは初めて「思考を拡張するパートナー」として機能します。
レベル2で止まっている限り、議論は深まりません。DX推進部門の次なる役割は、全社的にレベル2の効率化を実現することではなく、各部門がレベル3の「本質的な問い」を立てられるように支援することです。
もはや、プロンプトテンプレートを配る「管理部門」としての役割は終わりました。 これからは、現場の思考を解きほぐし、問いの質を上げる「変革の触媒」としての役割が求められています。
そして、その成果を測るKPIも変わらなければなりません。
| DX推進のKPI再定義 | これまで(ツールの定着) | これから(思考の変革) |
|---|---|---|
| 量のKPI | Copilot操作ログ、利用率、テンプレ共有数 | (継続指標として維持) |
| 質のKPI | (未定義) | ❶ 仮説の数と質(Copilotとの対話で生まれた新しい視点) ❷ 会議で生まれる「新しい問い」の数 ❸ 企画・提案の「差し戻し率」の低下 |
この「質のKPI」を動かすことこそ、DX推進部門の新たなミッションです。
では、どうすれば社員はレベル3の「本質的な問い」を立てられるようになるのでしょうか。
残念ながら、再び「問いの立て方研修」を実施し、「問いのテンプレート」を配っても、効果は薄いでしょう。なぜなら、これはスキルの問題ではなく、“思考のクセ”の問題だからです。
知識では、人は変わりません。認知が揺れる「体感」が必要です。
DX推進部門だけが気づいている「活用は進んでいるのに、何かが違う」という違和感。その違和感の正体を、現場の社員自身が“自分ごと”として体感できる瞬間を設計すること。
それこそが、私たち4DL Technologies株式会社が提供するワークショップ《ANT-B0》の核心です。
ANT-B0は、Copilotの「使い方」を教える研修ではありません。 参加者が自らCopilotと対話し、試行錯誤する中で、
自分の思考がいかに表層的であったかに気づき(自己認識の変容)
「問い」の構造を変えることで、AIの応答が“劇的”に変わる瞬間を体感し(成功体験)
AIを「便利な道具」から「思考のパートナー」へと再定義する(行動の意味づけ)
という一連の認知変容をデザインします。
【ケーススタディ:ある経営企画室Aさんの“3分間の壁打ち”】
《ANT-B0》のワークショップ中、経営企画室のAさんは「新規事業のアイデア」をCopilotに聞いていました。
Aさんの最初の問い(レベル1): 「当社の強み(技術力、顧客基盤)を活かした新規事業アイデアを5つ教えて」
Copilotの応答: 「1. 技術力を活かした新プラットフォーム構築、2. 顧客基盤を活用した新サービス…」
Aさんは「やはりAIは当たり前のことしか言わない」と諦めかけました。 そこでファシリテーターが介入し、問いを変える“壁打ち”を3分間行いました。
ファシリテーター: 「Aさんが本当に知りたいことは何ですか? その事業が『誰の』『どんな深い悩み』を解決するものですか?」
Aさん: 「…確かに。本当は、当社の技術が『まだ誰も気づいていない市場のペイン』にどう刺さるかを知りたい」
Aさんの次の問い(レベル3へ): 「制約:当社の技術Aは高コストです。しかし、ある特定のニッチ市場B(詳細なペルソナを定義)において、彼らが抱える『業界特有の非効率な業務フローX』を解決できる可能性があります。この仮説に基づき、Copilotに『市場BのペインX』を深掘りさせ、当社の技術Aが既存ソリューションより優位に立てる理由を3つ、具体的な反論と共に挙げさせてください」
この問いの転換により、Copilotのアウトプットは劇的に変化しました。Aさんは「これはすごい…Copilotが“考える”ようになった」と呟きました。
この「体感」こそが、社員の思考のOSをアップデートする鍵です。
テンプレートに依存する思考から脱却し、自らの課題と向き合い、Copilotの能力を最大限に引き出す「問い」を生み出すための、最初の転機となります。
Copilotの導入と定着化、お疲れ様でした。活用率のダッシュボードは、確かにあなたの部門の成果です。
しかし、もし「活用は進んだが、議論は浅いまま」という違和感を少しでも感じているなら、それはCopilot活用の「第一章」が終わり、「第二章」が始まったサインです。
第二章のテーマは、「操作」から「問い」への進化です。
DX推進部門が次に設計すべきは、「ツールの使い方」ではなく、「現場の問い方」そのもの。 「ツールの定着」は終わりました。次は“問いの定着”です。
その第一歩は、知識のインプットではなく、「問いが変われば、世界が変わる」という強烈な体感を提供することにあります。その仕掛けとして、ANT-B0による“問いの体感設計”が、今、最も有効な次の一手となります。
Copilotの導入はゴールではなく、始まりにすぎません。真に業務変革へとつなげるには、「定着」──すなわちチームの思考の質と速度を変えるリスキリングが不可欠です。
私たち4DL Technologies株式会社では、Copilotの定着と本質的な業務変革を支援する3つのリスキリングプログラムをご用意しています。
Copilotを“調べ物ツール”などの単純作業利用で終わらせず、思考をともに進める相棒として使いこなす第一歩を体感しませんか?
Copilotにどう問いかければ、欲しい情報が出てくるのか?そして、Copilotから問い返して暗黙知を深掘りしてくれる体験。
業務文脈に合わせた「問いのOS」をインストール。まずはこのB0から始めて、チーム内でのリスキリングを“スモールスタート”しませんか?
自社の業務にCopilotを本格活用するためのエンタープライズ企業として求めるプロンプトの設計力・再現力・構造化力を非エンジニア向けが学びます。
B0で体感した「思考支援ツールとしてのCopilot」をベースに、業務プロセスにAIを実装する力を養います
Copilot Studioというノーコードツールを活用して、社内専用のAIエージェントを設計・導入を自走するチームにしませんか?
現場が、自分の仕事を、自分たちで設計・開発・修正の試行錯誤できる「業務をAI化する」自走できる状態を目指します。
「Copilotを“思考の相棒”に変える」という明確な効果をパイロットチームに体感してもらい上司に提案できる状態をつくりませんか?
場合によっては、あなたが稟議を上げる経営層に「AIによる思考支援の未来」を体感・実感してもらうという作戦はいかがでしょう?
そんな仕掛けにもB0は最適です。
荒巻 順|4DL Technologies株式会社 CCO(AIソリューションデザイン統括)
専門は、独自のプロンプト設計手法(ODGC/4DL_AAS)を用い、AIを「思考支援」ソリューションへと進化させる「生成AI導入・定着コンサルティング」です。
NTTドコモビジネス様で25年以上にわたりBtoBセールス部門の研修・試験設計を、千葉市産業振興財団様で12年間、創業支援研修の企画運営を責任者として担当しました。この経験を基に、通信・鉄道・自治体など、様々な組織へのAI導入・定着支援を主にトレーニングという側面から行っています。
Q3. 生成AIの導入・定着について相談すると、何が得られますか?