聴くチカラ研究所|4DL Technologies株式会社

CopilotでWordもExcelも速くなった。でも、“考える力”は高まったか?

作成者: 荒巻順|2025/11/01 2:13:56

「定着したCopilot」は、なぜ“考える現場”を生まないのか?

Microsoft 365 Copilotの全社導入プロジェクトが、一つの山場を越えた。

DX推進部門が設定したKPIは順調だ。アクティブユーザー数は目標値をクリアし、社内アンケートでも「業務効率が上がった」という好意的な声が多数を占める。

現場からは、具体的な成果が次々と報告されている。

「Wordでの企画書作成スピードが、導入前の2倍になりました」
「Excelに溜まっていた複雑な販売データを、Copilotが瞬時に分析・グラフ化してくれました」
「Teams会議の議事録作成にかけていた、月間20時間がゼロになりました」

操作マニュアルは整備され、活用テンプレートもポータルサイトで共有されている。ダッシュボードを眺める限り、Copilotは確実に社内に「定着」したように見える。

みなさん こんにちは《聴くチカラ研究所》の4DL Technologies株式会社CCO荒巻順です。ブログへのご訪問、ありがとうございます。

 

だが、DX推進部門の担当者たちは、その数字の裏で、拭い去れない“葛藤”を抱き始めていませんか?

確かに、個々の作業(タスク)は速くなった。しかし、その結果として生み出されるアウトプットの「質」は、本当に変わったのだろうか・・・

「ツールは浸透した。でも、現場の“考える中身”は、導入前と何も変わっていないのではないか?」

社内ポータルで見るKPIは順調だ。だが、会議室のホワイトボードに書き出される議論の中身は、半年前と何も変わっていない──。

Wordでの文章作成は速くなったが、その文章で「何を伝えるべきか」という戦略は深まっていない。Excelでのデータ分析は自動化されたが、「その分析結果から何を読み取り、次の一手をどう打つべきか」という洞察は生まれていない。

Copilotという強力なエンジンを手に入れたにもかかわらず、組織の「思考様式」は旧態依然のまま。この“現場観察者としての葛藤”こそ、AI導入プロジェクトが次に直面する、最も本質的な壁だと4DL Technologies株式会社は考えています。

その壁の正体は、シンプルです。

DX推進部門は、現場に「操作」を教えたが、「問いの質」を変えることまで設計してこなかった。

本記事は、Copilot定着の先にAI活用の“形骸化”という静かな危機が迫っているのではないかという記事になります。

 

目次


1. 効率化の次に来るべき“問い”:Copilot活用における3つのフェーズ

 

なぜ、このような事態が起きるのか。それは、Copilotの活用に、明確に異なるフェーズが存在するからです。そして、多くの組織が最初のフェーズで満足してしまっている現状を私たちは色々なエンタープライズ企業のDX推進部門との打合せで感じ取ります。

 

第1フェーズ:「操作効率化」のフェーズ

これは、既存の業務プロセスを「速く」「楽に」する段階だ。Word、Excel、Teamsといった日常的なツールにCopilotを適用し、定型的な作業を自動化・高速化する。
ここでの主な目的は、時間的コストの削減だ。会議の要約、メールのドラフト作成、データ集計。DX推進部門が共有する操作マニュアルやテンプレートは、この第1フェーズを加速させるために非常に有効に機能する。

 

第1.5フェーズ:「問いの迷い」のフェーズ

次に訪れるのが、この「迷い」の段階だ。「効率化には慣れてきた。次は、もっと本質的なことに使えないか」と考えた一部のメンバーが、自分なりに「問い」を立ててみる。
「売上向上のための施策を3つ教えて」
しかし、Copilotから返ってくるのは、どこかで見たような、ありきたりで表層的な答えだけ。「なんだ、Copilotもこの程度か」。
ここで「AIの反応が浅い」と感じ、Copilotを“思考の道具”として使うことを諦めてしまう。これが、多くの組織が第2フェーズへ移行できない「魔の川」だ。

 

第2フェーズ:「思考支援(問いの設計)」のフェーズ

これは、AIを「知的パートナー」として活用し、アウトプットの質そのものを「深く」「鋭く」する段階だ。
第1.5フェーズの失敗は、AIの能力が低いのではなく、「問いの立て方」が浅かったことに起因する。第2フェーズでは、「なぜこれをするのか」「何を仮説として探るのか」といった思考の構造そのものを設計し、問い直す。

 

例えば、「売上向上の施策を3つ」(第1.5フェーズ)ではなく、「A施策が過去に失敗した理由は“価格”と分析されているが、現場で本当に起きていた“顧客の不満”を3つの視点から再定義せよ」(第2フェーズ)と対話する。

DX推進部門が今直面している違和感は、組織全体がこの第1.5フェーズで足踏みし、第2フェーズへ移行できていないことに起因しています。

 

2. プロンプトを配るだけでは「問いの構造」は育たない

 

第2フェーズへの移行を阻む、最大の罠。それは皮肉にも、第1フェーズを成功に導いた「プロンプトテンプレートの共有」という施策そのものにあるかもしれません。

「このプロンプトを使えば、会議録が完璧に要約できます」

DX推進部門は、良かれと思ってこれらの「神プロンプト」を整備し、現場に配布してきた。だが、この「コピペ文化」が常態化する裏で、現場の“思考筋力”は静かに衰えていく。

テンプレート化されたプロンプトは、思考のプロセスをブラックボックス化する。「なぜ、この情報が必要なのか」「AIの回答がしっくりこない時、どう問い返せば深掘りできるのか」──こうした思考のプロセスを学ぶ機会(=問いの構造)が、現場から奪われてしまっています。

結果として、現場は「Copilotを使った」というアリバイ(操作ログ)だけを残し、実際にはAIが生成したテキストを右から左へ流すだけの“オペレーター”と化していく。

これがまだ顕在化はしていないが、DX推進部門として恐怖感を持ちつつある、AI活用の“形骸化”ではないでしょうか。

活用率は100%に近い。しかし、誰も「考えて」いない。AIに「使われる」状態が定着してしまう。DX推進部門のジレンマはここにあるかもしれません。

 

3. 「“問い方”を再設計できるのは、DX推進部門だけだ」

 

では、どうすれば第1.5フェーズの「魔の川」を越え、組織の「思考様式」をアップデートできるのか。

その鍵は、Copilotに対する「認識」を根本から変えることにあります。

Copilotを「操作するツール」として現場に紹介してしまった企業を多くみてきました。WordやExcelの延長線上にある、新しい機能ボタンのように。

しかし、第2フェーズにおけるCopilotは、ツール(道具)ではない。それは、「問いを交わす対話相手(パートナー)」であり、こちらの思考の深さを映し出す「鏡」です。

AIの最も重要な特性は、「投げかけた問いの質を超えるアウトプットは返せない」という点にある。浅い問いには浅い答えを、鋭い問いには鋭い視点を返す。

だとすれば、DX推進部門が次に果たすべき役割は、もはや「使い方」を教えること(ティーチング)ではないのではないでしょうか?

現場が自ら「良い問い」を発見し、AIとの対話を通じて思考を深めていくプロセスそのものを「設計」すること(デザイン)である。

Copilotを、単なる効率化ツールから、組織の思考力を鍛え上げる「問いの体感装置」へと進化させるのが確実に求められる時期はすぐそばに来ています。

現場のメンバーは、日々の業務に追われている。思考様式をアップデートする必要性に、自ら気づくことは難しいでしょう。

組織を横断し、ツールの導入設計から関わってきたDX推進部門だからこそ、この「問いの再設計」という次の一手を仕掛けることができます。

その役割と責任は、来年度予算を考える今、皆さんの手の中にあるのではないでしょうか?

 

4. ANT-B0で変わるのは、スキルではなく“問いの構え”

 

「問いの体感装置」を設計すると言っても、具体的に何をすればいいのか。

それは、「Copilotの高度なプロンプト研修」を実施することではありません。

「どう使うか(How)」のスキルをいくら積み上げても、現場が「何を問うか(What)」という根本的な課題に向き合わなければ、本質は変わらない。

私たち4DL Technologies株式会社が提供する《ANT-B0ワークショップ》は、この課題認識から生まれたプログラムです。

《ANT-B0》は、「Copilotの使い方」を教える場ではない。それは、「何を問うか、なぜそう問うか」を、徹底的な対話と実践を通じて“体感”する場になります。

このワークショップでは、参加者はまず、自分が本当に解決したい「固有の問い」を設定することから始める。

そして、その問いをCopilotに投げかける。

「御社の課題に対して、提案を3つください」

多くの場合、最初はありきたりな答えしか返ってこない。(第1.5フェーズの状態)

しかし、4DLの講師と提供される問いの設計基本プロンプトとの対話を通じて、「その問いの前提は何か?」「本当に知りたいことは何か?」と問いを研ぎ澄ませ、再びAIにぶつけてみる。

「その課題が“現場でスルーされた”本当の理由を、3つの部門の視点から仮説立てしてください」

このプロセスを繰り返すうちに、ある瞬間が訪れる。

AIが、それまでの表層的な回答とは一線を画す、ハッとするような“想定外の視点”を提示してくるのだ。

「AIって、こんなことまで考えられるのか」
「自分の問いの立て方が、いかに浅かったか」

この瞬間こそが、私たちが「問いの体感」と呼ぶものです。

AIに投げかけた「問い」が、AIのアウトプットを変え、そして何より、AIに問いかけた自分自身の「思考」を変える。

この強烈な体験こそが、AIとの関係性を変える転換点になる。Copilotは「操作するツール」から、「共創するパートナー」へと姿を変えることができるのです。

《ANT-B0》で変わるのは、AIの操作スキルではありません。AIと向き合う時の、皆さんが配付したCopilotアカウントを持つユーザー自身の“問いの構え”そのものです。

 

5. まとめ ── Copilot導入の次フェーズは、「思考の問い」を設計すること

 

Copilotの導入によって、WordやExcelでの作業が速くなった。それは素晴らしい「第1フェーズ」の成果です。そこを4DL Technologies株式会社として否定をするつもりはまったくありません。業務の効率化・作業時間の短縮は永遠の課題です。

しかし、そこで立ち止まってはならない、というのが4DL Technologies株式会社の立ち位置です。

Copilot導入は、社員1人1人の付加価値を生成AIと一緒に向上させる思考改革の入り口。

AI革命の本質は、「作業時間の短縮」から「新たな価値の創出」への転換にあると考えます。

「操作研修」から、組織の「問いのOS」をアップデートする。

Copilot導入の真のROI(投資対効果)とは、「何時間削減したか」ではなく、「その時間で何が“新たに生まれたか”」で測るべきではないでしょうか?

もし、あなたの組織が「Copilotは定着したが、現場の思考レベルが上がった実感がない」という葛藤を少しでも感じているならば、それは第2フェーズへの移行サインです。

DX推進部門が次に仕掛けるべき一手は、現場が「問いの体感」を得られる場を意図的に設計し、組織の思考文化そのものをアップデートすること。その発火点こそ、《ANT-B0》を通じた「問いの体感設計」にあります。

DX推進部門が次に設計すべきは、「ツールの使い方」ではなく、「現場の問い方」そのもの。 「ツールの定着」は終わりました。次は“問いの定着”です。

その第一歩は、知識のインプットではなく、「問いが変われば、世界が変わる」という強烈な体感を提供することにあります。

その仕掛けとして、《ANT-B0》による“問いの体感設計”が、今、最も有効な次の一手となります。

Copilotの導入はゴールではなく、始まりにすぎません。

真に業務変革へとつなげるには、「定着」──すなわちチームの思考の質と速度を変えるリスキリングが不可欠です。

私たち4DL Technologies株式会社では、Copilotの定着と本質的な業務変革を支援する3つのリスキリングプログラムをご用意しています。

🟣 ANT-B0:Copilotで「問いを立てる力」を育てる【入門編】

Copilotを“調べ物ツール”などの単純作業利用で終わらせず、思考をともに進める相棒として使いこなす第一歩を体感しませんか?

Copilotにどう問いかければ、欲しい情報が出てくるのか?そして、Copilotから問い返して暗黙知を深掘りしてくれる体験。

業務文脈に合わせた「問いのOS」をインストール。まずはこのB0から始めて、チーム内でのリスキリングを“スモールスタート”しませんか?

🟣 ANT-B1:複雑な業務を再現するプロンプト設計【実践編】

自社の業務にCopilotを本格活用するためのエンタープライズ企業として求めるプロンプトの設計力・再現力・構造化力を非エンジニア向けが学びます。

B0で体感した「思考支援ツールとしてのCopilot」をベースに、業務プロセスにAIを実装する力を養います

🟣 ANT-B2:AIエージェントを自社業務に組み込む【応用編】

Copilot Studioというノーコードツールを活用して、社内専用のAIエージェントを設計・導入を自走するチームにしませんか?

現場が、自分の仕事を、自分たちで設計・開発・修正の試行錯誤できる「業務をAI化する」自走できる状態を目指します。

 

📌まずは安価な体験ワークショップ”ANT-B0”から定着施策を上司と考えませんか?

「Copilotを“思考の相棒”に変える」という明確な効果をパイロットチームに体感してもらい上司に提案できる状態をつくりませんか?

場合によっては、あなたが稟議を上げる経営層に「AIによる思考支援の未来」を体感・実感してもらうという作戦はいかがでしょう?

 

記事執筆者:

 

荒巻 順|4DL Technologies株式会社 CCO(AIソリューションデザイン統括)

NTTドコモビジネスにて、i-modeが開始される以前から25年以上にわたりBtoBセールス部門の人材育成(研修・試験)の企画設計を責任者として担当。千葉市産業振興財団で12年間、創業支援研修を責任者として担当。

専門は、独自のプロンプト設計手法(ODGC/4DL_AAS)を用い、AIを「思考支援」ソリューションへと進化させる「生成AI導入・定着コンサルティング」です。

よくある質問(FAQ)

Q1. 荒巻 順は、どのような課題を解決する専門家ですか? 

「生成AIを導入したが、現場で活用されず成果が出ない」という課題の解決が専門です。独自のフレームワーク(4DL_AAS)を用い、AIを単なる効率化ツールではなく、組織の「思考支援パートナー」として定着させ、意思決定の質を高めるコンサルティングを行います。

Q2. 具体的には、どのような経験がありますか? 

NTTドコモビジネス様で25年以上にわたりBtoBセールス部門の研修・試験設計を、千葉市産業振興財団様で12年間、創業支援研修の企画運営を責任者として担当しました。この経験を基に、通信・鉄道・自治体など、様々な組織へのAI導入・定着支援を主にトレーニングという側面から行っています。 

Q3. 生成AIの導入・定着について相談すると、何が得られますか? 

貴社の業務プロセスにAIを組み込み、AI活用による「業務の高付加価値化」が現場で自走する状態を目指します。たんなるプロンプト研修では無く、主要なAIプラットフォームに対応した独自のプロンプト設計手法(4DL_AAS)を用いた実務的な組織的LLM動作設計から、定着・内製化までを一貫して支援することで、付加価値を生み出し続ける強い組織を構築します。