聴くチカラ研究所|4DL Technologies株式会社

DX推進 Copilotを「オプション商材」で終わらせない ──MS365 Reseller営業が「全社導入」につなげる体験設計という武器

作成者: 荒巻順|2025/12/06 1:02:04

Microsoft 365の更新時期、あるいは新規導入の商談。メインの見積もり構成を作り終え、最後にオプションとして追加する──「Microsoft 365 Copilot」。

もはや当たり前の光景になりつつあるこの提案プロセスですが、多くのReseller営業担当者(パートナー企業様)が、同じ壁にぶつかっているのを目にします。

みなさん こんにちは《聴くチカラ研究所》の4DL Technologies株式会社CCO荒巻順です。ブログへのご訪問、ありがとうございます。

 

「興味はあるけど、まずは一部の部署だけで」
「とりあえず30ライセンスからテスト導入で」

そうして始まったスモールスタートのPoC(概念実証)。しかし半年後、定着することなく「なんとなく便利だったね」という感想と共に、翌年度の予算からフェードアウトしていく……。

なぜ、Copilotはいつまでも「オプション商材」の域を出ないのでしょうか。そして、なぜDX推進担当者は「PoC」という手段に逃げ込んでしまうのでしょうか。

本記事では、MS365 Reseller営業の皆様に向けて、「PoC疲れ」を起こしているDX推進の現場を救い、Copilotを全社導入へと導くための「体験設計(Experience Design)」という新たな武器について解説します。

 

1. DX推進 Copilot提案の現場で起きている「縮小の力学」

 

営業現場の“あるある”を少し整理してみましょう。
――これらは、DX推進 Copilotの提案場面で、Reseller営業が必ずと言っていいほど直面する壁です。

あなたはCopilotを含めた全社的な変革プランを提案したい。しかし、対面するDX推進部門や情報システム部門の担当者は、どうしても及び腰になります。

「全社導入して使われなかったら、誰が責任を取るんだ」
「役員を説得するための費用対効果(ROI)が見えない」

DX推進担当者にとって、Copilotは魅力的であると同時に、「失敗すれば自分の評価に関わるリスク」でもあります。その結果、彼らが選ぶのが「とりあえずPoC」という選択肢です。

「まずはITリテラシーの高い若手中心に30名で」

「特定の部署でハッカソンをやってみて」

これは一見、理にかなったステップに見えます。しかし、営業である私たちが理解しなければならないのは、彼らが「成功するためにPoCを選んでいる」のではなく、「燃えないための防御本能としてPoCを選んでいる」という構造です。

この構造に付き合った結果、何が起きるでしょうか。

 

2. 「PoCの残骸」と「PoC疲れ」──誰も幸せにならない結末

 

とりあえずのPoCや、イベント的なハッカソン。これらが生む副作用は深刻です。

多くの場合、手を挙げるのは「デジタル感度の高い若手」や「新しいもの好きな一部の社員」です。彼らは最新モデルやAPIを駆使し、派手で“映える”活用事例を作ります。イベント当日は盛り上がり、DX推進担当者も「成果が出た」と胸を撫で下ろすでしょう。

しかし、翌週から彼らの業務プロセスは変わったでしょうか?
答えはNoであるケースが大半です。

  • 現場の分断: ベテラン社員は「若手の遊び」と冷ややかな視線を送る。
  • 実務乖離: 「すごいデモ」は作れても、泥臭い日々の業務には適用できない。
  • 事務局の疲弊: DX推進担当者は、参加者調整や報告書作成、ライセンス管理に追われ、本来の「組織変革」に手をつける時間がなくなる。

結果として残るのは、更新されなかったライセンスという「PoCの残骸」と、企画・運営に奔走したDX推進担当者の「PoC疲れ」だけ。

Reseller営業としても、「実績」としてはカウントできても、翌年度のアップセルや全社展開という「果実」を得ることはできません。

そろそろ、「PoCの回数」と「神プロンプト集のページ数」をKPIにして、「やった感」だけを積み上げるやり方からは卒業しませんか?

必要なのはライセンスの切り売りではなく、「PoCの前に、全社共通の体験を設計する」という視点の転換です。

 

3. 戦略転換:ライセンスではなく「体験」から逆算する

 

ここで、Reseller営業としての提案の軸を少し変えてみましょう。

  • Before: 「何ライセンスから始めますか?」「どの部署でPoCしますか?」
  • After: 「どの単位で“共通体験”を揃えますか?」「誰にどの順番でCopilot体験をしてもらうと、安全に全社展開できますか?」

PoCが失敗する最大の原因は、「AIに対する期待値」と「AIとの対話作法(プロンプト等)」が、社員によってバラバラだからです。

このバラつきを放置したままライセンスだけ渡すから、使える人は使い、使えない人は「嘘をつかれた」「役に立たない」と離脱します。

全社導入というゴールから逆算して、その障壁を取り除く「前室」を用意する。それが、私たちが提唱する「ANT-B0(アント・ビーゼロ)」というアプローチです。

 

4. PoCの前に「前室」を置く──ANT-B0という点火装置

 

ANT-B0とは、本格的なPoCや導入プロジェクトの前に実施する、半日程度の「共通体験セッション」です。単なるCopilotの操作研修ではありません。

若手、ベテラン、管理職が同じテーブルを囲み、実際の業務課題をテーマにCopilotと対話します。ここで重要なのは、「AIの操作」と「業務の勘所」を掛け合わせる体験です。

世代をつなぐ“接着剤”としてのAI

通常、若手がプロンプト入力(操作)をリードします。AIが出した答えに対し、ベテラン社員が「いや、この業務の肝はそこじゃない」「もっとこういう視点を入れるべきだ」とフィードバックします。

若手がその視点をプロンプトに反映させると、Copilotの回答が劇的に良くなる。

このプロセスを通じて、現場では以下のことが起こります。

  1. 若手: ベテランの持つ暗黙知や業務の勘所を学べる。
  2. ベテラン: 「自分の経験知は、AI時代でも(むしろAIがあるからこそ)役に立つ」という自己効力感を得る。
  3. 共通言語化: 「AIってこうやって使うと楽になるんだね」という体感が揃う。

ANT-B0は、組織のエンジンを温める「点火装置」です。この「前室」を通ることで、初めてPoCは「テスト」ではなく、「実務適用のための検証」へと進化します。

 

5. 営業現場でそのまま使える「全社導入トーク」

 

では、実際にDX推進担当者に対して、どのように提案すればよいのでしょうか。明日から使えるトーク例をご紹介します。

ケース1:スモールスタートに固執するDX推進担当者へ

「〇〇さん、30ライセンスで3つの部署でPoCを回すと、その調整や報告業務だけで事務局がパンクしてしまうケースをよく見ます。小さく刻むよりも、まずは半日、主要メンバーを集めて『共通体験の場(ANT-B0)』を作りませんか? そこで『いけそだ』という手応えと共通言語を作ってからの方が、結果的にPoCの精度も上がり、事務局の手間も減らせますよ」

ケース2:稟議決裁者(経営層)への説明に悩む担当者へ

「経営層にはこう説明しましょう。『ただライセンスを買って配るだけのPoCは失敗のリスクが高い。だからこそ、投資対効果を確実にするために、まずは全社共通の“AI活用のOS”をインストールする研修(ANT-B0)から始めます』と。ライセンス費用ではなく、組織開発への投資として位置づけたほうが、全社導入への道筋は通りやすくなります」

Reseller営業であるあなたが、「PoC疲れ」を未然に防ぐパートナーとして振る舞うこと。これこそが、他社との最大の差別化になります。

 

6. ライセンスを売る人から、DX推進の参謀へ

 

4DL Technologies株式会社の生成AI体験ワークショップ《ANT-B0》という「前室」の概念を提案に組み込むことで、Reseller営業が得られるメリットは明確です。

  1. 単価競争からの脱却: Copilotを「価格」ではなく「組織変革の必須パーツ」として語れるようになります。
  2. アップセルの道筋: 導入後の定着率が高まるため、翌年度の更新やライセンス追加がスムーズになります。
  3. 信頼関係の深化: DX推進担当者から「ライセンス業者」ではなく、「社内を一緒に動かしてくれる参謀」として認識されます。

さらに、営業部門だけでなく、事業企画・営業推進の立場から見ても、「Copilotライセンス売上」「継続率」「SI売上」という三つのKPIを、ANT-B0という一つの仕掛けで同時に押し上げられる構造がつくれます。

「MS365+Copilot全社ライセンス」+「ANT-B0(前室設計)」のセット提案は、迷えるDX推進担当者の背中を押し、全社導入という決断を引き出す強力な武器になるはずです。

 

7. まとめ:PoCの数ではなく、「PoC前の半日」に投資する発想を

 

DX推進 Copilotの成功は、「PoCを何回やったか」や「神プロンプト集をいくつ配ったか」では決まりません。

PoCの前に、組織全体で「AIをどう使いこなすか」という共通体験と共通言語をどう設計するかで決まります。

ANT-B0で「現場の業務」「ベテランの知恵」「AIの使い方」が一度接着されてしまえば、その後に出てくるのは、Power Platformでの自動化やCopilot Studioによる業務アシスタントなど、Resellerとして貴社が得意とするSI・開発領域に直結する“具体的な相談”です。

PoCを乱発してネタを探すのではなく、ANT-B0で“SI案件の種をまとめて発掘する”という発想に切り替えるタイミングに来ています。

「PoCを売る営業」から、「PoC疲れしているDX推進を救う営業」へ。

そのための第一歩として、ANT-B0というフレームワークを貴社の提案シナリオに加えてみてはいかがでしょうか。

 

【MS365 Reseller企業の事業企画・営業推進の皆様へ】

 

Copilotのライセンス販売だけでは差別化が難しい今、「体験設計」という付加価値を貴社の商材ラインナップに加えませんか?

私たち4DL Technologies株式会社は、この《ANT-B0》を貴社のソリューションの一部として再販(Resell)いただけるパートナー企業様を募集しています。

ANT-B0は、

  • Copilotライセンスの“全社導入率”を高める前段サービスであり、
  • 導入後の解約・フェードアウトを防ぎ、増設余地を広げる「定着エンジン」であり、
  • さらにその先の Power Platform・Copilot Studio・Azure OpenAI などSI案件への具体相談を生み出す「案件創出装置」でもあります。

単なる研修の外注ではなく、貴社のCopilotビジネス全体のLTV(Life Time Value)を引き上げる「営業武器」として、ANT-B0をご活用ください。

「自社の提案パッケージに組み込みたい」「詳しい卸条件を知りたい」という方は、ぜひ下記よりお問い合わせください。

 

関連情報・お問い合わせ

 

記事執筆者

荒巻 順|4DL Technologies株式会社 CCO(AIソリューションデザイン統括)

AIを“効率化ツール”で終わらせず、組織の意思決定と行動を進化させる「思考支援の仕組み」として実装・定着させることを専門とする。

NTTドコモビジネス(旧NTTコミュニケーションズ)にて25年以上、BtoBセールス部門の人材育成・資格制度・研修体系の企画設計を統括。延べ4万人超の現場に入り、「現場の事実が判断軸を育て、判断軸が現場を変える」循環を、育成と変革の実務として回し続けてきた。

現在は4DL TechnologiesのCCOとして、独自の3層アーキテクチャ 4DL_AAS(Protocol/Framework/Prompt)を設計思想として、生成AIを“作業の高速化”から“判断軸の高速更新”へ転換する導入・定着・内製化支援を行っている。

 

よくある質問(FAQ)

Q1. 荒巻 順は、どのような課題を解決する専門家ですか?

「生成AIを導入したが、現場で活用されず成果が出ない」という課題の解決が専門です。独自のフレームワーク(4DL-AAS)を用い、AIを単なる効率化ツールではなく、組織の「思考支援パートナー」として定着させ、意思決定の質を高めるコンサルティングを行います。

 

Q2. 具体的には、どのような経験がありますか?

NTTドコモビジネス様で25年以上にわたりBtoBセールス部門の研修・試験設計を、千葉市産業振興財団様で12年間、創業支援研修の企画運営を責任者として担当しました。この経験を基に2022年11月のChatGPT 3.5登場以来、通信・鉄道などのインフラ企業や地方自治体などの公共団体など、様々な組織へのAI導入・定着支援を主にトレーニングという側面から行っています。

 

Q3. 生成AIの導入・定着について相談すると、何が得られますか?

貴社の業務プロセスにAIを組み込み、AI活用による「業務の高付加価値化」が現場で自走する状態を目指します。たんなるプロンプト研修では無く、主要なAIプラットフォームに対応した独自のプロンプト設計手法(4DL-AAS)を用いた実務的な組織的LLM動作設計から、定着・内製化までを一貫して支援することで、付加価値を生み出し続ける強い組織を構築します。