「議事録、すごっ!」の感動、そこで止まっていませんか?
「今日の会議、AIに要約させたら完璧だった!」
「この英文メールの翻訳、一瞬じゃないか!」
長い議事録が数秒で整理されたり、苦手な英語の壁がなくなったり。ChatGPTをはじめとする生成AIがもたらす効率化には、思わず「未来が来た!」と声が出てしまいますよね。その感動、私もよく理解できます。
しかし、その一方でこんな心の声はありませんか?
「よし、じゃあ次は新しい企画のアイデア出しを手伝ってもらおうかな…」
そう意気込んでプロンプトを打ってみても、返ってくるのはどこかで見たような、ありきたりなアイデアの羅列。「うーん、まあ、そうなんだけど…」と、最初の感動が少しずつ色褪せていく。いつしかAIのタブを開くのは、議事録要約と翻訳の時だけ…。
もし、あなたがそんな「便利止まり」の壁を感じているなら、それはあなたやAIの能力不足ではありません。原因は、AIとの対話方法にあります。
この記事は、チームのDXリーダーがメンバーに語りかけるような気持ちで、AIを「便利な作業係」から「賢い思考パートナー」へと変えるための、たった一つの、しかし決定的なコツをお伝えします。
その鍵こそ、プロンプトにWhy(なぜやるのか?)とWhat(何を、どんな条件で?)を書き加えることなのです。
みなさん こんにちは《聴くチカラ研究所》4DL Technologies株式会社CCOの荒巻順です。ブログへのご訪問、ありがとうございます。
目次
- リーダーの嘆きと、現場のホンネ。なぜ「AI使おうぜ!」は浸透しないのか
- 「How/Do」だけのプロンプトが、AIを“指示待ち新人”にしてしまう3つの限界
- 「Why/What」を加えると、AIは“優秀な相棒”に進化する
- 【劇的ビフォーアフター】お客様クレームへの返答メール作成
- 今日から使える!“賢い相棒”を育てる4ステッププロンプト術
- よくある質問と、乗り越えるヒント
- まとめ──“便利な道具”の次へ。“賢い問い”で未来を創ろう
1.リーダーの嘆きと、現場のホンネ。なぜ「AI使おうぜ!」は浸透しないのか
【リーダーの理想と悩み】
「全社でAIアカウントを導入したぞ! みんな、これを使ってどんどん新しいアイデアを出して、業務を効率化してほしい! 未来はすぐそこだ!」
【現場メンバーの心の声】
(議事録と翻訳は本当に助かる…。でも、リーダーが言う『新しいアイデア』って言われても…何を聞けばいいんだろう? とりあえず『新商品のアイデアを10個出して』って入れてみたけど、当たり障りのない答えしか返ってこないし、これじゃ使えないよな…)
このすれ違い、多くの職場で起きているのではないでしょうか。
リーダーはAIの”可能性”に熱狂し、メンバーはAIの”現在の使い方”に満足してしまっている。このギャップの原因こそ、プロンプトがHow(どうやって)とDo(何をして)だけで構成されているからです。
AIはあなたが与えた情報(プロンプト)以上のことはできません。目的(Why)と具体的な条件(What)を伝えずに「アイデアを出して」とだけ頼むのは、新人の部下に「何か面白いこと考えておいて」と丸投げするようなもの。
それでは薄味のアイデアしか出てこないのも当然なのです。
2.「How/Do」だけのプロンプトが、AIを“指示待ち新人”にしてしまう3つの限界
あなたの「〇〇して」という指示、AIは忠実に実行します。しかし、背景を知らないAIは、まるで入社初日の新人のようにしか振る舞えません。
- 限界1:目的がわからないから、情報の重要度が判断できない
AIの思考:「とにかくメールを作れ、と。はい、作りました。」(※誰に、何のために送るメールなのかは全く考慮されていません)
結果:情報が網羅されているだけで、どこが重要なのか分からない、魂のないアウトプットが生まれます。 - 限界2:対象や条件があいまいだから、“平均点”の無難な答えしか返せない
AIの思考:「“良い”キャッチコピーですね。世間一般で“良い”とされている言葉を組み合わせましょう。」
結果:誰の心にも刺さらない、最大公約数的な当たり障りのない答えが返ってきます。 - 限界3:評価の物差しがないから、修正の意図が汲み取れない
AIの思考:「『もっとクリエイティブに』と言われましても…。では、少し奇抜な単語を混ぜてみますか?」(※何をもって『クリエイティブ』とするのか、基準がありません)
結果:「そうじゃないんだよな…」という修正指示が何度も繰り返され、結局自分で考えた方が早くなってしまいます。
ここで一度、ご自身のプロンプトを振り返ってみてください。
「この指示に、AIが『なぜ?』と『具体的には?』を考えずに済むだけの情報は入っているだろうか?」
3.「Why/What」を加えると、AIは“優秀な相棒”に進化する
では、プロンプトに「Why」と「What」を加えると、AIはどう変わるのでしょうか。先ほどの“指示待ち新人”が、あなたの意図を深く理解する“優秀な相棒”へと進化する様子をご覧ください。
How/Do のみ(指示待ち新人AI) | Why+What+How+Do(優秀な相棒AI) | |
---|---|---|
AIの役割 | 指示された作業をそのまま実行するオペレーター | 目的と背景を理解し、能動的に思考するパートナー |
思考の深さ | 表面的で、言葉通りのことしかできない | 指示の裏にある意図を読み取り、根拠や代替案まで提案する |
アウトプット | 平均的で、修正が必要な「たたき台」 | 具体的で、すぐに使えるレベルの「完成形に近い下書き」 |
あなたの手間 | 何度も修正指示が必要 | 一度の指示で、期待以上のものが返ってくる |
【リーダーからの金言】
「いいかい? Why=『この仕事のゴール』で、What=『守るべきルール』なんだ。この二つを最初にしっかり教えてあげれば、AIは自分で考えて、最適な道を選んでくれるようになる。君が細かく指示しなくてもね。」
4.【劇的ビフォーアフター】お客様クレームへの返答メール作成
百聞は一見に如かず。実際の例でその差を体感してみましょう。
・【Before】“指示待ち新人”へのプロンプト(How/Do のみ)
プロンプト:
「納期が遅れたお客様へのクレーム対応メールを、至急、丁寧に作って。」
・生成されたアウトプット:
件名:お詫び
この度は、商品の到着が遅れ、誠に申し訳ございませんでした。深くお詫び申し上げます。
今後はこのようなことがないよう注意いたします。
何卒ご容赦くださいますようお願い申し上げます。
→【結果】
丁寧ではありますが、これでは火に油を注ぎかねません。「何で遅れたの?」「具体的にどう注意するの?」という相手の不満は全く解消されず、信頼を失うだけの“謝罪風テンプレート”です。
・【After】“優秀な相棒”へのプロンプト(Why/Whatを追加)
プロンプト:
【Why(目的)】
・単なる謝罪ではなく、取引を継続してもらえるような信頼を回復したい。
【What(対象・条件)】
・対象商品:XXX-001
・お客様:株式会社YYY様
・遅延理由:想定外のシステムトラブルによるもの
・盛り込む要素:①具体的な遅延理由、②具体的な再発防止策を3点、③今後の取引で使える10%割引クーポンの提案
【How(方法)】
・誠意が伝わるように、丁寧かつ真摯なトーンで。
・再発防止策は箇条書きで分かりやすく。
【Do(成果物)】
・そのまま送れるメール形式で、件名・本文・署名まで作成して。
・生成されたアウトプット:
件名:【重要】商品(XXX-001)の納期遅延に関するお詫びと今後の対策について(株式会社ZZZより)
株式会社YYY 御担当者様
平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
株式会社ZZZの〇〇です。
この度は、ご注文いただきました商品(XXX-001)のお届けに、想定を大幅に超える遅延が生じましたこと、心より深くお詫び申し上げます。
今回の遅延は、弊社の受注管理システムに予期せぬトラブルが発生したことが原因でございます。多大なるご迷惑をおかけし、誠に申し訳ございませんでした。
二度とこのような事態を招かぬよう、以下の再発防止策を徹底いたします。
- サーバーの定期監視と負荷テストの頻度を倍増
- バックアップシステムからの即時切り替えマニュアルの再整備と全社訓練の実施
- 万一の遅延発生時における、お客様への迅速な報告体制の構築
つきましては、ささやかではございますが、次回以降の弊社製品のご購入時にご利用いただける10%割引クーポンを添付させていただきます。
今回の件で失われた信頼を回復するのは容易ではないと承知しておりますが、今後とも変わらぬご愛顧を賜りますよう、切にお願い申し上げます。
→【結果】
これならどうでしょう?「Why=信頼回復」というゴールを理解したAIは、単なる謝罪ではなく、「具体的な原因説明」「説得力のある再発防止策」「未来につながる提案」という3つの要素を盛り込み、相手の不安を解消し、誠意を伝えるメールを創り上げました。
これを見たチームメンバーは、「なるほど、『なぜ』と『何を』を教えるだけで、AIはここまで“考えて”くれるのか!」と、目からウロコが落ちるはずです。
5.今日から使える!“賢い相棒”を育てる4ステッププロンプト術
難しく考える必要はありません。以下の4つのステップを、上から順番に書き出すだけです。
- Why(目的): 「最終的に、どうなりたい?」を一行で書く。
例:「この企画を通して、来期の売上を20%伸ばしたい」 - What(対象・条件): 成果物に含めるべき「制約」と「要素」を具体的に。
例:ターゲットは20代女性、予算は50万円以内、納期は来週末まで、競合A社の戦略を意識する、など。 - How(方法・トーン): どんな形で、どんな雰囲気のアウトプットが欲しいか。
例:箇条書きで、フレンドリーな口調で、専門用語は避けて、小学5年生にも分かるように、など。 - Do(成果物): 最終的に欲しいものの「形式」を指定する。
例:提案書のドラフト、ブログ記事、Pythonのコード、メールの文面、など。
この順番で考えることで、思考が整理され、AIへの指示も明確になります。
6.よくある質問と、乗り越えるヒント
- Q1. 「Why」や「What」がなかなか思い浮かびません…。
- A1. 大丈夫です。そんな時は自分に「なんでだっけ?」「具体的に言うと?」と2〜3回問いかけるだけで十分です。完璧な目的や条件を最初から設定する必要はありません。「なんとなく、若者にウケたいから」でも、無いよりずっとマシな結果が出ます。
- Q2. プロンプトがどんどん長くなってしまいそうです。
- A2. AIは美しい文章を求めていません。箇条書きで単語を並べるだけでOKです。「目的:売上UP」「ターゲット:30代、男性、健康志向」のように、構造的に情報を与えることが何より重要です。小説家ではなく、パイロットのチェックリストを作る感覚で書いてみてください。
- Q3. 毎回4ステップを考えるのは大変じゃないですか?
- A3. 一度、自分なりの「プロンプト・テンプレート」を作ってしまいましょう。メモ帳などに【Why】【What】【How】【Do】の空欄を用意しておき、毎回それをコピー&ペーストして穴埋めするだけ。これだけで、思考の時短とアウトプットの質の安定化が図れます。
- 7.まとめ──“便利な道具”の次へ。“賢い問い”で未来を創ろう
AIに「要約して」と頼むだけで味わえる “便利!” は、生成AIが見せる ほんの入口 にすぎません。
真価が輝くのは、Why(なぜ)と What(何を)という “賢い問い” を添えた瞬間──AIがあなたの意図を理解し、独力では思いつけなかった視点や選択肢を差し出してくれる時です。
まずは DXリーダーである あなた自身 が、今日のタスクで「Why→What→How→Do」の4ステップを試してみてください。
成果物の質とスピードが跳ね上がり、その驚きをチームにシェアすれば、メンバーの “便利止まりマインド” は一気に変わります。
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4DL‑IE は “Why/What を掘り下げるガイド機能” を備え、今回紹介したプロンプト術をテンプレ化したツール です。無料デモでは、実際に質問を入力しながら AI がどう深掘り・整理するかを体感できます。
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