多くの企業で、MS365 Copilotの導入が「申請制」「部門推薦制」、あるいは一部門での「パイロット導入」といった形で、限定的にスタートしています。全社一斉導入のリスクを鑑みれば、これは経営判断として合理的な選択かもしれません。
しかし、その一方で、DX推進部門の皆様は、現場と経営の板挟みになり、ある種の“モヤモヤ”を抱えてはいないでしょうか。
みなさん こんにちは《聴くチカラ研究所》の4DL Technologies株式会社CCO荒巻順です。ブログへのご訪問、ありがとうございます。
この状況は、単なるツール導入の遅れに留まらず、変革への意欲そのものを削いでしまう危険性をはらんでいます。
本記事では、この「申請制導入」という制約を、むしろ組織変革の強力な推進力へと転換するための戦略を提案します。その鍵を握るのは、“社内インフルエンサー”の存在と、彼らが紡ぎ出す「活用ストーリー」です。
まず、なぜ多くの企業でCopilotが“申請制”という形をとるのか、その背景を冷静に整理してみましょう。多くの場合、理由は極めて合理的です。
これらの理由は、どれも企業経営の観点から見れば妥当なものです。しかし、この合理的な判断が、現場レベルでは予期せぬ“非合理”な状況を生み出してしまうことがあります。
最も皮肉なのは、「本当に使いたい、活用アイデアを持っている」という熱意ある社員が使えないことで、組織全体のモチベーションが逆に下がってしまうという、本末転倒な現象です。
合理的なはずの判断が、DXの最も重要なエンジンである“現場の熱意”を冷ましかねないのです。
Copilotの価値は「何ができるか」ではなく、「誰と、どんな目的で使うか」によって決まります。
だからこそ、使い方が属人的なままでは、定着しません。申請制とは、実は「誰がこのツールを使うべきか」を組織が見極めきれていない未成熟さの表れでもあるのです。
では、どうすればよいのでしょうか。最初のステップは、発想の転換です。自ら手を挙げ、「Copilotを使わせてほしい」と申請してくる社員。彼らを、単なる「意識が高い人」や「新しいもの好き」で片付けてはいけません。
彼らこそ、DX推進部門にとって最も重要な“戦略的資産”です。
なぜなら、自ら申請してくる人々は、単にツールを使いたいだけでなく、その先に「現状の業務をより良くしたい」「新しい働き方に挑戦したい」という、前向きな変化への強い意志を持っているからです。
彼らは、DX推進部門が組織に届けたいと願うメッセージを、誰よりも深く理解してくれるポテンシャルを秘めています。
DX推進部門がすべきことは、この貴重な熱量を、組織全体の力へと昇華させることです。
彼らを単なる“利用者”として扱うのではなく、共にCopilotの価値を社内に広めていく“横展開リーダー”として、戦略的に巻き込んでいく。
この視点の切り替えこそが、申請制という状況をチャンスに変える第一歩なのです。
Copilotの定着を考えたとき、多くのDX推進部門が陥りがちなのが、「機能説明」や「TIPS集」の共有に終始してしまうことです。もちろん、それらも重要ですが、人の心を動かし、行動を促すのは、無機質な情報ではありません。
それは、共感を呼ぶ“活用ストーリー”です。
例えば、以下の二つの伝え方を比較してみてください。
どちらが、まだCopilotを使ったことのない社員の「自分も使ってみたい」という気持ちを刺激するでしょうか。答えは明白です。
私たちは、単なる「利用事例」ではなく、「誰が、どんな課題を持ち、Copilotをどう使って、何が変わり、どう感じたか」という、個人の物語にこそ心を動かされます。
この“活用ストーリー”こそが、Copilotの価値を最もリアルに伝え、組織内での自然な波及を生み出す起爆剤となるのです。
そして、この貴重なストーリーを生み出してくれる源泉こそが、前章で述べた“申請してきた熱意ある社員たち”なのです。
「申請制」を逆手にとり、選ばれた社員を“社内インフルエンサー”として育成する。そのための具体的な仕組みを設計することが、DX推進部門の次なるミッションではないでしょうか。
単にライセンスを付与して「あとはよろしく」では、せっかくの熱量も個人の活動で終わってしまいます。
DX推進部門が“事務局”となり、「使う人が主役になる」ための舞台を意図的に作り上げるのです。
この仕組みは、申請制で選ばれた社員にポジティブな当事者意識やリーダーシップを育みます。
そして、彼らが発信するリアルな物語が、次の申請者を生み、全社展開への力強い土壌を育んでいくのです。
社内の横リーダーが“AI活用を実践し、付加価値を高めるためのAIへのプロンプトを自作し、業務の価値をAI活用に翻訳する”技術を持つことこそが、生成AI時代の組織変革に必要な“文化の種”なのです。
Copilotの「申請制導入」は、一見するとDXの歩みを遅らせる制約のように思えるかもしれません。
しかし、その見方を変えれば、これは“全社展開の成功の種”を、最も肥沃な土壌に、丁寧に植え付けるための絶好の機会と捉えることができます。
小さく始めて、大きく育てる。そのために必要なのは、トップダウンの「制度」や「命令」だけではありません。現場から自然発生的に生まれる「物語」の力です。
DX推進部門の役割は、単なるシステム導入企画の窓口ではありません。
社員一人ひとりの変革への意志を汲み取り、それを組織全体のエネルギーへと転換させるための“文化設計者”へと進化する時が来ています。
申請制という状況を戦略的に活用し、社内にポジティブな物語を循環させる。その先にこそ、ツールが真に定着し、組織が次のステージへと進む未来が待っているはずです。
真に価値を発揮するのは、「誰に、どんな問いを、どう届けるか」という設計思想です。
そして、そのストーリーを社内で共鳴・循環させる“文化の土壌”を耕すこと。
4DL Technologies株式会社では、CopilotやChatGPTなどの生成AIを「定着できる仕組み」として導入するための支援を行っています。
Copilotを、現場の文化に根づかせる。その第一歩を、4DL Technologies株式会社オリジナルのAIで非エンジニアを主役とする時代のリスキリングプログラム、ANTシリーズではじめてみませんか?
Copilot導入の“その先”を描くために──B0から始める定着設計をDX推進部門の皆様と
Copilotの導入はゴールではなく、始まりにすぎません。真に業務変革へとつなげるには、「定着」──すなわちチームの思考の質と速度を変えるリスキリングが不可欠です。
私たち4DL Technologies株式会社では、Copilotの定着と本質的な業務変革を支援する3つのリスキリングプログラムをご用意しています。
Copilotを“調べ物ツール”などの単純作業利用で終わらせず、思考をともに進める相棒として使いこなす第一歩を体感しませんか?
Copilotにどう問いかければ、欲しい情報が出てくるのか?そして、Copilotから問い返して暗黙知を深掘りしてくれる体験。
業務文脈に合わせた「問いのOS」をインストール。まずはこのB0から始めて、チーム内でのリスキリングを“スモールスタート”しませんか?
自社の業務にCopilotを本格活用するためのエンタープライズ企業として求めるプロンプトの設計力・再現力・構造化力を非エンジニア向けが学びます。
B0で体感した「思考支援ツールとしてのCopilot」をベースに、業務プロセスにAIを実装する力を養います
Copilot Studioというノーコードツールを活用して、社内専用のAIエージェントを設計・導入を自走するチームにしませんか?
現場が、自分の仕事を、自分たちで設計・開発・修正の試行錯誤できる「業務をAI化する」自走できる状態を目指します。
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場合によっては、あなたが稟議を上げる経営層に「AIによる思考支援の未来」を体感・実感してもらうという作戦はいかがでしょう?
そんな仕掛けにもB0は最適です。
荒巻 順|4DL Technologies株式会社 CCO(AIソリューションデザイン統括)
専門は、独自のプロンプト設計手法(ODGC/4DL_AAS)を用い、AIを「思考支援」ソリューションへと進化させる「生成AI導入・定着コンサルティング」です。
Q3. 生成AIの導入・定着について相談すると、何が得られますか?
貴社の業務プロセスにAIを組み込み、AI活用による「業務の高付加価値化」が現場で自走する状態を目指します。たんなるプロンプト研修では無く、主要なAIプラットフォームに対応した独自のプロンプト設計手法(4DL_AAS)を用いた実務的な組織的LLM動作設計から、定着・内製化までを一貫して支援することで、付加価値を生み出し続ける強い組織を構築します。