Skip to content
10月 4, 2025
6 min read time

DX推進部門は“申請制”Copilot導入をチャンスに変えよ —— 社内インフルエンサーによる活用ストーリーこそ定着の起点

“申請制”Copilot導入をチャンスに変えよ

 

多くの企業で、MS365 Copilotの導入が「申請制」「部門推薦制」、あるいは一部門での「パイロット導入」といった形で、限定的にスタートしています。全社一斉導入のリスクを鑑みれば、これは経営判断として合理的な選択かもしれません。

しかし、その一方で、DX推進部門の皆様は、現場と経営の板挟みになり、ある種の“モヤモヤ”を抱えてはいないでしょうか。

みなさん こんにちは《聴くチカラ研究所》の4DL Technologies株式会社CCO荒巻順です。ブログへのご訪問、ありがとうございます。

makeAIworkforyou

  • 「経営層からはコスト管理と費用対効果を厳しく問われる…」
  • 「現場の熱心な社員からは『なぜ自分たちは使えないのか』という声が届く…」
  • 「スモールスタートは理解できるが、このままでは全社的な普及への道筋が見えない…」

この状況は、単なるツール導入の遅れに留まらず、変革への意欲そのものを削いでしまう危険性をはらんでいます。

本記事では、この「申請制導入」という制約を、むしろ組織変革の強力な推進力へと転換するための戦略を提案します。その鍵を握るのは、“社内インフルエンサー”の存在と、彼らが紡ぎ出す「活用ストーリー」です。


目次




1.Copilotが“申請制”になる背景を読み解く|予算、現場負担、費用対効果…合理的な判断が“非合理”を生むとき

 

まず、なぜ多くの企業でCopilotが“申請制”という形をとるのか、その背景を冷静に整理してみましょう。多くの場合、理由は極めて合理的です。

  • 予算とコスト管理の問題: Microsoft 365のライセンス契約上、全社一斉導入には相応の追加コストが発生します。まずは費用対効果が見込める部門や職種から、という判断は自然です。
  • 現場の混乱回避: 新しいツールが一斉に導入されると、問い合わせがヘルプデスクに殺到したり、習熟度の差から業務に支障が出たりするリスクがあります。段階的な導入は、その混乱を最小限に抑えるための賢明な策と言えます。
  • 費用対効果(ROI)の検証: 経営層としては、まず特定のチームで効果を測定し、その結果をもって全社展開の是非を判断したいと考えるのは当然です。

これらの理由は、どれも企業経営の観点から見れば妥当なものです。しかし、この合理的な判断が、現場レベルでは予期せぬ“非合理”な状況を生み出してしまうことがあります。

最も皮肉なのは、「本当に使いたい、活用アイデアを持っている」という熱意ある社員が使えないことで、組織全体のモチベーションが逆に下がってしまうという、本末転倒な現象です。

合理的なはずの判断が、DXの最も重要なエンジンである“現場の熱意”を冷ましかねないのです。

Copilotの価値は「何ができるか」ではなく、「誰と、どんな目的で使うか」によって決まります。

だからこそ、使い方が属人的なままでは、定着しません。申請制とは、実は「誰がこのツールを使うべきか」を組織が見極めきれていない未成熟さの表れでもあるのです。

 

2.“意識高い系”社員は、むしろ戦略資産である|使いたい人=アンバサダー。排除せずに巻き込む発想転換を

 

では、どうすればよいのでしょうか。最初のステップは、発想の転換です。自ら手を挙げ、「Copilotを使わせてほしい」と申請してくる社員。彼らを、単なる「意識が高い人」や「新しいもの好き」で片付けてはいけません。

彼らこそ、DX推進部門にとって最も重要な“戦略的資産”です。

なぜなら、自ら申請してくる人々は、単にツールを使いたいだけでなく、その先に「現状の業務をより良くしたい」「新しい働き方に挑戦したい」という、前向きな変化への強い意志を持っているからです。

彼らは、DX推進部門が組織に届けたいと願うメッセージを、誰よりも深く理解してくれるポテンシャルを秘めています。

  • 彼らは、新しいツールへの心理的ハードルが低く、いち早く操作に習熟してくれます。
  • 彼らは、自らの業務の中で具体的な活用方法を試行錯誤し、実践的な知見を生み出してくれます。
  • そして何より、彼らはその体験を「周囲に紹介したい」「この便利さを教えたい」という、ポジティブな発信意欲を持っています。

DX推進部門がすべきことは、この貴重な熱量を、組織全体の力へと昇華させることです。

彼らを単なる“利用者”として扱うのではなく、共にCopilotの価値を社内に広めていく“横展開リーダー”として、戦略的に巻き込んでいく。

この視点の切り替えこそが、申請制という状況をチャンスに変える第一歩なのです。

 

3.Copilotの社内展開に必要なのは、“機能”ではなく“活用ストーリー”|誰が、何のために、どんな風に使ったか。ストーリーが共感と波及を生む

 

Copilotの定着を考えたとき、多くのDX推進部門が陥りがちなのが、「機能説明」や「TIPS集」の共有に終始してしまうことです。もちろん、それらも重要ですが、人の心を動かし、行動を促すのは、無機質な情報ではありません。

それは、共感を呼ぶ“活用ストーリー”です。

例えば、以下の二つの伝え方を比較してみてください。

  • A(機能説明): 「Copilotを使えば、Teams会議の議録を自動で要約できます」
  • B(活用ストーリー): 「営業企画部の鈴木さんは、毎週3時間かかっていた定例会議の議事録作成に悩んでいました。Copilot導入後、会議終了と同時に要約とToDoリストが自動生成されるようになり、その時間で次の企画の骨子を練ることが可能に。結果、彼の企画提案の質が上がり、先月の役員会で高く評価されたそうです」

どちらが、まだCopilotを使ったことのない社員の「自分も使ってみたい」という気持ちを刺激するでしょうか。答えは明白です。

私たちは、単なる「利用事例」ではなく、「誰が、どんな課題を持ち、Copilotをどう使って、何が変わり、どう感じたか」という、個人の物語にこそ心を動かされます。

この“活用ストーリー”こそが、Copilotの価値を最もリアルに伝え、組織内での自然な波及を生み出す起爆剤となるのです。

そして、この貴重なストーリーを生み出してくれる源泉こそが、前章で述べた“申請してきた熱意ある社員たち”なのです。

 

4.活用ストーリーを生み出す“インフルエンサー設計”とは?|申請制を逆手にとった“社内エバンジェリスト育成”の仕組み化

 

「申請制」を逆手にとり、選ばれた社員を“社内インフルエンサー”として育成する。そのための具体的な仕組みを設計することが、DX推進部門の次なるミッションではないでしょうか。

単にライセンスを付与して「あとはよろしく」では、せっかくの熱量も個人の活動で終わってしまいます。

DX推進部門が“事務局”となり、「使う人が主役になる」ための舞台を意図的に作り上げるのです。

  • ミッションを与える: ライセンス付与の条件として、「月一回の活用レポート提出」や「部署内でのミニ勉強会の開催」といった、アウトプットを前提とした役割をお願いする。
  • ストーリーを収集・編集する: 提出されたレポートから「活用ストーリー」の種を見つけ出し、社内報やポータルサイトで共有できる形に磨き上げる。
  • 活躍の場を提供する: 定期的に「Copilot活用事例共有会」といったイベントを企画し、インフルエンサーたちに登壇してもらう。
  • 社内ライブラリを構築する: 共有されたストーリーを、いつでも誰でも閲覧できる「活用ストーリーライブラリ」として蓄積していく。

この仕組みは、申請制で選ばれた社員にポジティブな当事者意識やリーダーシップを育みます。

そして、彼らが発信するリアルな物語が、次の申請者を生み、全社展開への力強い土壌を育んでいくのです。

社内の横リーダーが“AI活用を実践し、付加価値を高めるためのAIへのプロンプトを自作し、業務の価値をAI活用に翻訳する”技術を持つことこそが、生成AI時代の組織変革に必要な“文化の種”なのです。

 

5.Copilot導入は“システム”ではなく“文化”への投資|スモールスタートこそ、企業文化変革のベースキャンプに

 

Copilotの「申請制導入」は、一見するとDXの歩みを遅らせる制約のように思えるかもしれません。

しかし、その見方を変えれば、これは“全社展開の成功の種”を、最も肥沃な土壌に、丁寧に植え付けるための絶好の機会と捉えることができます。

小さく始めて、大きく育てる。そのために必要なのは、トップダウンの「制度」や「命令」だけではありません。現場から自然発生的に生まれる「物語」の力です。

DX推進部門の役割は、単なるシステム導入企画の窓口ではありません。

社員一人ひとりの変革への意志を汲み取り、それを組織全体のエネルギーへと転換させるための“文化設計者”へと進化する時が来ています。

申請制という状況を戦略的に活用し、社内にポジティブな物語を循環させる。その先にこそ、ツールが真に定着し、組織が次のステージへと進む未来が待っているはずです。

生成AIは、操作や使い方を学ぶだけでは定着しません。

真に価値を発揮するのは、「誰に、どんな問いを、どう届けるか」という設計思想です。

そして、そのストーリーを社内で共鳴・循環させる“文化の土壌”を耕すこと。

4DL Technologies株式会社では、CopilotやChatGPTなどの生成AIを「定着できる仕組み」として導入するための支援を行っています。

  • ANT-B0では、「思考支援ツールとしてのCopilot」に触れながら、組織全体のAI活用への視座を転換します。
  • ANT-B1では、社内インフルエンサーや定着リーダーを育成し、“使う人が価値を生む仕組み”を設計します。
  • ANT-B2では、Copilot StudioやDifyなどのノーコードツールで、現場に定着するAIアプリを構築します。

Copilotを、現場の文化に根づかせる。その第一歩を、4DL Technologies株式会社オリジナルのAIで非エンジニアを主役とする時代のリスキリングプログラム、ANTシリーズではじめてみませんか?

Copilot導入の“その先”を描くために──B0から始める定着設計をDX推進部門の皆様と

Copilotの導入はゴールではなく、始まりにすぎません。真に業務変革へとつなげるには、「定着」──すなわちチームの思考の質と速度を変えるリスキリングが不可欠です。

私たち4DL Technologies株式会社では、Copilotの定着と本質的な業務変革を支援する3つのリスキリングプログラムをご用意しています。


🟣 ANT-B0:Copilotで「問いを立てる力」を育てる【入門編】

Copilotを“調べ物ツール”などの単純作業利用で終わらせず、思考をともに進める相棒として使いこなす第一歩を体感しませんか?

Copilotにどう問いかければ、欲しい情報が出てくるのか?そして、Copilotから問い返して暗黙知を深掘りしてくれる体験。

業務文脈に合わせた「問いのOS」をインストール。まずはこのB0から始めて、チーム内でのリスキリングを“スモールスタート”しませんか?


🟣 ANT-B1:複雑な業務を再現するプロンプト設計【実践編】

自社の業務にCopilotを本格活用するためのエンタープライズ企業として求めるプロンプトの設計力・再現力・構造化力を非エンジニア向けが学びます。

B0で体感した「思考支援ツールとしてのCopilot」をベースに、業務プロセスにAIを実装する力を養います


🟣 ANT-B2:AIエージェントを自社業務に組み込む【応用編】

Copilot Studioというノーコードツールを活用して、社内専用のAIエージェントを設計・導入を自走するチームにしませんか?

現場が、自分の仕事を、自分たちで設計・開発・修正の試行錯誤できる「業務をAI化する」自走できる状態を目指します。

 

📌まずは安価な体験ワークショップ”ANT-B0”から定着施策を上司と考えませんか?

 

「Copilotを“思考の相棒”に変える」という明確な効果をパイロットチームに体感してもらい上司に提案できる状態をつくりませんか?

場合によっては、あなたが稟議を上げる経営層に「AIによる思考支援の未来」を体感・実感してもらうという作戦はいかがでしょう?

そんな仕掛けにもB0は最適です。

ANT-B0

記事執筆者:

 

荒巻 順|4DL Technologies株式会社 CCO(AIソリューションデザイン統括)

NTTドコモビジネスにて、i-modeが開始される以前から25年以上にわたりBtoBセールス部門の人材育成(研修・試験)の企画設計を責任者として担当。千葉市産業振興財団で12年間、創業支援研修を責任者として担当。

専門は、独自のプロンプト設計手法(ODGC/4DL_AAS)を用い、AIを「思考支援」ソリューションへと進化させる「生成AI導入・定着コンサルティング」です。

CCO

よくある質問(FAQ)

Q1. 荒巻 順は、どのような課題を解決する専門家ですか? 

「生成AIを導入したが、現場で活用されず成果が出ない」という課題の解決が専門です。独自のフレームワーク(4DL_AAS)を用い、AIを単なる効率化ツールではなく、組織の「思考支援パートナー」として定着させ、意思決定の質を高めるコンサルティングを行います。

 

Q2. 具体的には、どのような経験がありますか? 

NTTドコモビジネス様で25年以上にわたりBtoBセールス部門の研修・試験設計を、千葉市産業振興財団様で12年間、創業支援研修の企画運営を責任者として担当しました。この経験を基に、通信・鉄道・自治体など、様々な組織へのAI導入・定着支援を主にトレーニングという側面から行っています。

 

Q3. 生成AIの導入・定着について相談すると、何が得られますか? 

貴社の業務プロセスにAIを組み込み、AI活用による「業務の高付加価値化」が現場で自走する状態を目指します。たんなるプロンプト研修では無く、主要なAIプラットフォームに対応した独自のプロンプト設計手法(4DL_AAS)を用いた実務的な組織的LLM動作設計から、定着・内製化までを一貫して支援することで、付加価値を生み出し続ける強い組織を構築します。