Copilotは入れた。操作研修もやった。プロンプト研修もやった。
それでもログを見ると、使っているのは一部だけ。
これがいま、多くのDX推進部門が直面している“導入の次の壁”です。
みなさん こんにちは《聴くチカラ研究所》の4DL Technologies株式会社CCO荒巻順です。ブログへのご訪問、ありがとうございます。

導入プロジェクトは終わったはずなのに、現場の働き方は何も変わっていない。このままでは、次年度の予算会議で「投資対効果(ROI)」を問われたとき、返す言葉がありません。
先に結論を言います。
なぜ、完璧なカリキュラムで研修をしたはずなに定着しないのか。

前提条件を測定せずに研修(学習内容)を組むだけでは、研修成果はゼロに近づくからです。
目次
- DX推進部門がハマりやすい“研修設計の罠”
- 研修設計の公式:成果は“教材”だけで決まらない
- なぜ“前提条件を測らない研修”はほぼ失敗するのか
- 定着の正しい順番:①まず体験→②次に使い方→③最後に習慣
- DX推進が最初にやるべきこと=前提条件の可視化(レディネス診断)
- まとめ:研修の中身より、設計の仕方がCopilot定着を決める
1. DX推進部門がハマりやすい“研修設計の罠”
結論:失敗が確定するのは「実施」の前。「設計」の段階です。
まず、多くの企業が陥る「定着失敗の典型パターン」を見てみましょう。
- Copilot導入決定・ライセンス配布
- 「プロンプトエンジニアリング研修」等の企画
- 全社実施(参加率や満足度アンケートでKPI達成とする)
- 現場へ丸投げ(「あとは各自で活用してください」)
- 数ヶ月後、利用率が低迷
失敗が確定するのは、実は「②」から「③」の時点です。
「受講者が、その研修を受け取れる状態(前提条件)」にあるかを測らずに、学習内容だけを投入した瞬間に、定着確率は一気に落ちます。
「使い方の正解」がない生成AIにおいて、前提条件を無視して操作説明だけを行うのは、地図を持たせずに砂漠へ送り出すようなものです。
2. 研修設計の公式:成果は“教材”だけで決まらない
この記事の核(コア)となる公式を、もう一度提示します。
研修成果(目指すべき人材像) = 学習内容(教材) × 前提条件(現場の現状)
AI活用促進を目指すDX推進部門は、人材育成というテーマに対して「学習内容」の質を上げることに必死です。より高度なプロンプト集、より有名な外部講師……。
しかし、掛け算のもう片方、「前提条件」がゼロであればどうなるでしょうか?
どんなに素晴らしい「学習内容(100点)」を用意しても、「前提条件(0点)」であれば、成果は限りなくゼロになります。
前提条件とは、たとえば以下のような要素です。
- AIに対する心理的な抵抗感
- 「仕事が変わる」というイメージの有無
- 業務上の「問い(課題)」を言語化できているか
AIリテラシーという言い方でもいいかもしれません。
これらを無視してAIの定着を目的すとする研修を組むのは、患者の血液検査(現状診断)をせずに、医師が一般的な風邪薬を処方し続けるようなものです。
スキルアップのみならず大切な人材を育てる「研修」は、そもそも育成を設計する公式を知らずに企画してはいけないのです。
3. なぜ“前提条件を測らない研修”はほぼ失敗するのか
結論:善意の「一律研修」が、現場の格差(前提の違い)を拡大させるからです。
現場は均質ではありません。
「AIなんて怖い」と思っているベテランと、「もっと使いたい」と思っている若手が、同じ会議室で同じ研修を受けている状況を想像してください。
DX推進側は良かれと思って“全員一律研修”を組みます。
しかし、生成AIは受講者の現在地(前提条件)が違うほど、学習成果が割れてしまう道具です。
この「善意の一律化」が、実は最大の不公平を生む。これが、多くの組織が陥る「善意の誤作動」の正体です。
DX推進部門のミッションは、研修回数を稼ぐことではなく、現場の行動変容を起こすことです。
そのためには、まず「現場が今、どの位置にいるのか」を直視しなければなりません。
4. 定着の正しい順番:①まず体験→②次に使い方→③最後に習慣
では、どうすれば「掛け算」が成立するのか。変数をプラスにするためには、「正しいステップ」があります。
Copilotは「何でもできる」からこそ、現場は「何をしていいか分からない」状態に陥ります。
だからこそ、操作方法(How)を教える前に、「何に使えるかの地図」を渡す必要があります。
- まず体験させる(Experience):前提条件を整える
いきなり業務で使わせず、「AIと壁打ちしたら思考が整理された」という原体験を作る。ここで「AIは敵ではない、相棒だ」というマインドセット(前提条件)を醸成します。 - 次に使い方を教える(Question):学習内容を入れる
マインドが整った状態で初めて、「プロンプト」や「機能」を教えます。土壌ができているので、種を蒔けば芽が出ます。 - 最後に習慣にする(Fixation):定着させる
チームで活用事例を共有し、組織知(共通言語)にしていく。
多くの失敗例は、この「1」を飛ばして、いきなり「2」から始めてしまうのです。
この順番を守るだけで、社員の皆様のAIに対しての認識が揃い、AIに対して関わり方の意識が変化し、定着率は劇的に変わるとのではないでしょうか?
5. DX推進が最初にやるべきこと=前提条件の可視化(レディネス診断)
結論:学習内容を考える前に、まず「前提条件」を測ってください。
私たちはこれを「レディネス診断(準備状態の可視化)」と呼んでいます。
以下の観点で現場の数値を測ります。(実際には、調査項目に関してはお客様との調整で決定します・・・この辺も研修設計のプロフェッショナルのいる4DL Technologies株式会社の強みです)
- ① AI接触頻度: プライベート含め、AIに触れているか?
- ② 問いの言語化力: 自分の業務課題を言葉にできているか?
- ③ 適用イメージ: 具体的に「あの業務で使えそう」と思えているか?
- ④ 心理的抵抗: 不安や恐怖を感じていないか?
- ⑤ チーム環境: 上司は協力的か?
この診断を行うと、組織の「ギャップ地図」が見えてきます。
そうすれば、「②が低い部署には“体験ワークショップ”を厚く」「④が高い部署には“マネージャーの巻き込み”から先に」といった具合に、処方を変えることができます。
これこそが、本来あるべき研修設計です。
6. まとめ:研修の中身より、設計の仕方がCopilot定着を決める
もう一度、公式に戻ります。
研修成果 = 学習内容 × 前提条件
前提条件を測らない研修は、掛け算の片輪を捨てているのと同じです。だから成果が出ません。
どんな業界でも、定着に失敗する理由は同じです。
「現場の現在地(前提)を無視して、目的地(活用)への地図だけを渡したから」です。
最後に、問いかけます。
あなたの組織で定着させたいのは、Copilotの“操作方法”ですか?それとも、AIと一緒に考える“新しい問いの文化”ですか?
もし後者を目指すなら、まずは「診断」から始めてください。
「診断やる時間がない」「現場が忙しい」──そう思うかもしれません。
しかし、診断は大がかりな調査である必要はありません。
まずは“現場の現在地を仮置きする30分”があれば、研修設計の精度は一気に変わります。
私たち聴くチカラ研究所が提供する「ANT-B0」は、まさにこの「診断(前提測定)→体験(前提醸成)」を一気通貫で行う“定着の入口設計”プログラムです。
- 前提条件診断(レディネス可視化)
- 共通体験(半日ワークショップ)
- 問いの型づくり(共通言語化)
いきなり研修を組む前に、まずは60分時間をください。
無駄な研修コストをかける前に、設計図を正しく引き直すところから。
御社の診断観点と体験設計のたたき台を、一緒に作りましょう。
AIを定着を目的すとする研修をテクニック的側面(操作やプロンプト)だけではではなく、あなたの会社の実情に合った育成ストーリーのカスタマイズを人材育成側面(育成体系や現状定義)のプロフェッショナルでもある4DL Technologies株式会社に相談しませんか?
関連情報・お問い合わせ
記事執筆者
荒巻 順|4DL Technologies株式会社 CCO(AIソリューションデザイン統括)

NTTドコモビジネス(旧NTTコミュニケーションズ)様にて、i-modeが開始される以前から25年以上にわたりBtoBセールス部門の人材育成(研修・試験)の企画設計を責任者として担当。また地元千葉で12年間、創業支援研修やセミナーなどを受託。
専門は、独自のプロンプト設計手法(ODGC/4DL_AAS)を用い、AIを「思考支援」ソリューションへと進化させる「生成AI導入・定着コンサルティング」です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 荒巻 順は、どのような課題を解決する専門家ですか?
「生成AIを導入したが、現場で活用されず成果が出ない」という課題の解決が専門です。独自のフレームワーク(4DL_AAS)を用い、AIを単なる効率化ツールではなく、組織の「思考支援パートナー」として定着させ、意思決定の質を高めるコンサルティングを行います。
Q2. 具体的には、どのような経験がありますか?
NTTドコモビジネス様で25年以上にわたりBtoBセールス部門の研修・試験設計を、千葉市産業振興財団様で12年間、創業支援研修の企画運営を責任者として担当しました。この経験を基に、通信・鉄道・自治体など、様々な組織へのAI導入・定着支援を主にトレーニングという側面から行っています。
Q3. 生成AIの導入・定着について相談すると、何が得られますか?
貴社の業務プロセスにAIを組み込み、AI活用による「業務の高付加価値化」が現場で自走する状態を目指します。たんなるプロンプト研修では無く、主要なAIプラットフォームに対応した独自のプロンプト設計手法(4DL_AAS)を用いた実務的な組織的LLM動作設計から、定着・内製化までを一貫して支援することで、付加価値を生み出し続ける強い組織を構築します。
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