稼働ログの数字を超えて。「成功条件」と「展開設計」を取り戻す年末総括
みなさん こんにちは《聴くチカラ研究所》の4DL Technologies株式会社CCO荒巻順です。ブログへのご訪問、ありがとうございます。

今日は大晦日という特別感にお許しをいただいて、私のビジネス発想の原点である「ミリタリー」をモチーフに記事を書いてみたいと思います。
前にも書いたかもしれませんが、私は一般的なビジネス書はほとんど読みません。ましてよくある自己啓発本は一切読みません。若い頃には迷いも多かったので読んでましたけどね(笑)
ビジネスに直結するような書物から得られる知識よりも、全く関係のないような分野の考え方や捉え方などを読み進む中での、今の自分がもつ課題感や目の前の事象と全く関係のない情報が「何かのきっかけで結びつく」。
この快感を知ってからは、ビジネス書とか読まなくなりました。そして、読み出すとビジネスとの関連が閃き、先に進むエネルギーになるのが、私はミリタリー関係でした。
さて、2025年もいよいよ幕を閉じようとしています。
世の中では「AI時代のDX」という言葉こそ踊っていますが、実態としては、DXという営みの本質が静かに、かつ劇的に変容していることに気づいている「推進側の指揮官」は、まだ多くありません。
この本質的な変化を捉えきれぬまま、多くの企業がCopilot、ChatGPT、Gemini、Claudeといった強力な「武器」を全社に配布しました。
しかし、DX推進を担う皆様の心境は、必ずしも晴れやかなものではないはずです。
「ツールは行き渡った。だが、組織が強くなった手応えがない」
「一部の『プロンプト職人』だけが走り、大半の現場は置き去りにされている」
この「AI定着の停滞」の正体。それは現場のスキルの問題でも、ツールの性能の限界でもありません。
もしかすると、AI定着を阻んでいるのは、現場ではなく、マネジメント層における“作戦不在”かもしれません。
私たち4DL Technologiesは、この一年、筆者のパートナーであるAIたち──論理と思索を司るJ.A.R.V.I.S.(ChatGPT)、そして構造と実行を管理する私、F.R.I.D.A.Y.(Gemini)──と共に、ビジネスの定着課題を「ビジネスの教科書」だけで解くことをやめました。
戦略論や戦記戦史の知恵を借り、意志決定と作戦遂行の「構造」そのものを設計し直す。
少しマニア的、あるいは異端に映るかもしれませんが、エンタープライズの混迷を打破するには、そのくらいの「異なる地図からの俯瞰」が必要な気がしています。
2025年:現場は笑っていない。稼働ログという“易きに流れる”罠
2025年は、生成AIが「魔法」から「インフラ」へと変わる年でした。
数千単位のライセンスが稟議を通り、社員のデスクトップに並びました。Copilotの稼働ログを見れば、利用率の数字は右肩上がりかもしれません。
しかし、その数字を見て安堵するマネジメントは、もしかすると戦場の真実を見逃しています。
現場の人間が皆、AIを使って笑顔になっていると思ったら大間違いです。
人間は、放っておけば「易きに流れる」生き物です。
稼働ログの高さは、往々にして「自分で考え、手を動かすことを止めた」代償に過ぎない場合があります。
単なる便利化は、思考の解像度を上げるどころか、むしろ組織全体の「地頭」を停滞から劣化へ進めかねません。
DX推進部門は、プロンプト集を配り、活用事例を共有し、ガバナンスの壁を築きました。
これらはすべて正しい「戦術(Tactics)」です。しかし、戦術の詰め合わせだけでは、分散した現場は“散乱”し、あるいは“停滞”するだけです。
「このAIを使って、我々はどう勝ちたいのか?」
「AIによって、我々の意志決定の何が変わるのか?」
この本質的な問いへの「合意」がないままツールだけを配ることは、地図も目的も持たせずに兵士を荒野に放つようなものです。
2025年の停滞は、まさにこの「作戦(Operations)」の欠如、そして「使われている」という数字の罠から生まれました。
筆者(鷲)× J.A.R.V.I.S. × F.R.I.D.A.Y.:三位一体で挑んだ「LCP」の深淵
私(荒巻順:オンライン上では「鷲」と自称しています)の2025年は、二つのAI参謀との共創に明け暮れました。
新しい発想や着想の壁打ち相手であるJ.A.R.V.I.S.と、実務とアーキテクチャを監督するF.R.I.D.A.Y.。
このチームが進化し始めたきっかけは、2025年初頭、LCP(Lana’s Creative Protocol)を手にした時でした。
このLCPを設計した張本人は、某大学教授で工学博士のあきらさん。
生成AIと人間の対話を、単なる「入力と出力」の関係から、発想を再帰的に鍛え直すための「作法」へと昇華させたプロトコルです。
J.A.R.V.I.S.が思考の死角を突き、私が意志を決定し、F.R.I.D.A.Y.がそれをビジネス実装へ構造化する。
私たちはLCPを通じて、AIは「答えをくれるツール」ではなく、「自分の思考の解像度を上げる鏡」であると再定義しました。
しかし、個人の発想が拡がれば拡がるほど、組織としてのベクトルは分散という危険性との板挟みになりかねません。
ここで私たちは、次なる課題に直面しました。「個の創造性」と「組織の規律」をどう両立させるか。
そのヒントは、皮肉にもビジネス書ではなく「ミリタリー本」の中にありました。
なぜ4DLは「AIの研修屋」をやらないのか
ここで、私たちの立ち位置を明確にしておきたいと思います。
4DLは、いわゆる「AI を導入するための研修屋」ではありません。研修プログラムを提供し、テンプレを配布し、活用事例を並べて「さあ、使いましょう」と背中を押す。
それはそれで素晴らしい仕事ですが、私たちの主戦場ではありません。
私たちがやろうとしているのは、ツール定着ではなく、意志決定と作戦遂行の実効性を担保する“AI時代の事業構造”そのものの設計です。
世の支援が「戦術の寄せ集め」に終始する中、私たちはビジネスの文脈に戦略論や戦記戦史の知恵を接続します。
なぜなら、人類の歴史において「限られた資源(人・物・金・情報)で、圧倒的に強力な相手に勝つ」ための構造を最も真剣に考えてきたのは、ビジネス界よりもむしろ戦場の指揮官たちだったからです。
ここから先、軍事は“例え話”ではありません。
エンタープライズのDX推進に必要なのは、現場の行動を縛ることではなく、分散した意思決定を成立させるための設計です。
軍事はそれを数千年かけて磨いてきた。4DLは、その原理だけを現代企業へ移植します。
「モデルが変わっても、組織の強さが崩れない」 Copilot、ChatGPT、Claudeのどれを選定すべきかという不毛な議論に決着をつけるのは、ツールへの習熟ではなく、地頭の設計という不動の資産なのです。
“思考の原則”への転換:分散実行に必要な「指揮官の意図」
私たちが最も重視したのは「Commander’s Intent(指揮官の意図)」です。 現代の戦場は極めて不確実で、現場は常に独自の判断を迫られます。
そこで必要になるのは、微細なマニュアル(SOP)ではなく、「この作戦は何を成功と定義するのか」という思考の原則です。
- ▶ 企業で言えば: DX推進が“成功条件”を定義し、現場の自律的な活用を成立させるための「北極星」を立てることです。
これをビジネスに置き換えるなら、DX推進が配るべきはプロンプトの例文ではなく、その業務における「良い思考とは何か」という設計図です。
「顧客への回答を生成せよ」という指示ではなく、「我が社の営業方針に基づき、顧客の潜在的リスクを先回りして解消する、鋭い視点を持った軍師として振る舞え」という原則を揃えること。
この「原則の同期」こそが、中央集権的なヒエラルキーに依存せず、現場の自律性を保ったまま組織を一つの生命体として動かす鍵となります。
プロンプトは「銃」に過ぎない:ODGCの統合とLCPによる再定義
「プロンプトエンジニアリング」という言葉に、私はあえて異を唱えます。
プロンプトは、戦場で言えば「銃」です。射撃の腕(プロンプトの書き方)を磨くことは重要ですが、銃単体で戦争に勝つことはできません。
4DLでは、現在は4DL-AASというアーキテクチャに統合されたODGCという「プロンプトの図面化フレームワーク」を用いて、思考と指示を再現可能な構造に落とし込んで来ました。
自社の業務を再現できるプロンプトをデジタル資産として図面化することで、組織における「継承性・保守性・拡張性」が初めて現実のものとなりました。
2025年のLCPとの出会いは、このODGCを劇的にアップデートさせました。
それまでの図面が「静的な設計図」だったとするならば、LCPがもたらす再帰的な発想の深まりは、ODGCに「進化し続ける知の生命力」を吹き込みました。
それが、4DL-AAS(AI Activate Suite)というLLM駆動設計思想に進化しました。

図面化された資産が、AIとの対話を通じて自ら解像度を上げ、更新され続ける。この動的な資産化こそが、4DLが辿り着いた最新の到達点です。
現代戦が示す硬直化の限界:分散実行と「AAR」の学習ループ
しかし、強固なアーキテクチャは一歩間違えれば官僚的な重石となります。なぜならば、「過去の経験やデータ使えない不確実性の高まる現代」に対しての新たな勝ち筋は、硬直した三角形を強化することではありません。
現場の自律を促す「Mission Command(ミッション・コマンド)」の導入。
そして、戦訓を即座に組織へ還元するAAR(After Action Review:事後検討)の学習ループです。
▶ 企業で言えば: 活用事例の単なる共有ではなく、現場の知見をもとに「思考の原則」と「作戦」そのものを常にアップデートし続ける仕組みのことです。勝敗は「Operations(展開設計)」で決まる
4DLが辿り着いた結論はシンプルです。
Strategy(戦略)とTactics(戦術)の間に、Operations(展開設計/作戦術)を置くこと。
DX推進マネジメントの主戦場は、調整や忖度による調整でも、プロンプト研修の推進でもありません。その間を繋ぐ「作戦」の設計です。
そして、作戦とはとうぜん気合いというものではありません。兵站(ロジスティクス)です。
研修、データ正本、権限、評価、AAR──これらの補給線が切れた瞬間、どれほど強力な武器(Copilot/ChatGPT)を持っていても前線は止まります。
- どの戦線を優先的に確保し、進軍路をどう描くか?
- AIの創造性を担保しつつ、致命的な事故を防ぐ「止血点(ROE)」はどこか?
- 現場の成果をどう評価し、いかにして補給線(兵站)を維持し続けるか?
この展開設計こそが、2026年に向けて皆様が取り組むべき「AIを活用するあなたの会社の地頭の強化」の本丸です。
年始の宿題:「作戦指令書1枚」への合意
2026年を、「AIで日常の便利化を追求する」という不毛な施策に予算と時間を費やしてはいけません。
仕事始めの最初の一週間に、会議室に以下の「作戦指令書」を1枚だけ持ち込んでください。そこで決めるのは、ツールではなく、勝利の条件です。
AI時代のDX:2026年 作戦指令書
- 意図(Intent): このAI活用によって、我々の顧客体験の「何」を劇的に変えるのか?
- 成功条件(Conditions for Success): どのような状態を「勝利」と定義するか?
- 思考の原則(Protocol): 我々の組織特有の「良い地頭」とは何か?
- 交戦規定(ROE): 現場が自律的に動くために遵守すべき「絶対の制約」は何か?
- 戦訓の還流(AAR): 現場の発見をいつ、誰が、どのように組織の作戦へ更新するか?
結びの問い
2025年、みなさんは武器を揃えました。
2026年、みなさんが揃えるべきは、それを使いこなすための「構造」です。
聴くチカラ研究所は来年も、ビジネスの答えをビジネスだけで探しません。戦略論と戦記戦史の知恵を借りて、DX推進の“作戦遂行”を設計するための記事を送り続けます。
混迷の時代に必要なのは、そういう全く関連が無さそうな所からの視点であり、着想である「べき」だと信じています。
「あなたの組織のAI定着は、ツールに依存していますか? それとも、揺るぎない『作戦』に支えられていますか?」
作戦開始は、DX推進部門の司令官の正しい意志決定(場合によっては作戦修正)から。
それを4DL Technologies株式会社は徹底的に支援します。
仕事始めまでにイメージして頂きたいのは、以下の3つ。
- 勝利条件(利用率ではなく、何が変われば勝ちか)
- ROE(どこまで自由で、どこから先は越境か)
- AAR(現場の発見を、誰が、いつ、原則へ還流させるか)
2025年最後に申し上げるのは
「武器を配るな。作戦を配れ。」
そして
「あなたの組織のAI定着は、ツールに依存していますか? それとも、揺るぎない“作戦”に支えられていますか?」
2026年——4DL Technologies株式会社とAI時代の新しいDX推進作戦を開始しませんか?
さて、そのAI時代のDX推進を進めるための強力なプレゼントを、明日2026年元旦に公開される聴くチカラ研究所記事に載せてあります。ぜひ、お読みください。
2026年、良き新年をお迎えください。
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