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10月 18, 2025
7 min read time

Copilot活用で、DX推進部門と現場がすれ違う理由──“定着したはず”が現場で機能しない本当の原因

DX推進部門と現場がすれ違う理由

「操作研修も終わり、利用率も高い。けれど、現場は“使いこなせていない”と感じている」──Copilot活用が空回りする現場と、手応えを持てないDX推進部門。そのギャップを生む“定着の誤解”と、再設計のポイントを解き明かします。

みなさん こんにちは《聴くチカラ研究所》の4DL Technologies株式会社CCO荒巻順です。ブログへのご訪問、ありがとうございます。

makeAIworkforyou

Copilotは定着した…はずだったのにあなたは、Copilot導入を一手に担ったDX推進の責任者。

全社へのライセンス展開を完了させ、部門別の操作研修も一通り終えた。eラーNINGの受講率は90%を超え、アクティブユーザー数も順調に推移している。研修も終え、マニュアルも整え、いよいよ“定着のフェーズ”に入った──はずだった。

それなのに、なぜ現場は首をかしげているのか?

「確かに便利になった気はする。議事録の要約やメール作成は速くなった」
「でも、正直に言うと、うまく使えている実感がない」
「結局、いつものやり方の一部が少し速くなっただけで、仕事の質が変わった気はしない」

あなたが持つ「使っているはずだ」という手応えと、現場が感じる「使いこなせていない」という戸惑い。この深刻な“ズレ”は、なぜ生まれるのでしょうか。

これは、決して「導入の失敗」ではありません。

むしろ、導入は成功しているケースがほとんどです。問題の本質は、あなたと現場の間にある、「定着」という言葉に対する深刻な“誤解”にあります。

本記事では、このすれ違いがなぜ発生するのか、そして、Copilotを単なる「効率化ツール」から真の「思考パートナー」へと進化させ、現場の行動変容を促すために必要な「定着の再設計」について解説します。

 

目次

1. DX推進部門と現場──それぞれの“Copilot定着”の定義

 

なぜ、同じ「Copilotの定着」というゴールを目指しているはずのDX推進部門と現場の間で、認識のズレが生じるのでしょうか。それは、両者が「定着」を測るモノサシ(KPI)が根本的に異なるからです。

両者の視点を、具体的な観点から比較してみましょう。

 

観点 DX推進部門の視点(形式) 現場の実感(実感)
使っているか 利用ログ(アクティブ率)がある とりあえず開いてみた、言われたから使った
学んだか 研修・eラーニングを修了した 操作方法(ボタンの位置)は覚えた
効果があるか 作業時間が(部分的に)減った 考える力が上がった気はしない
成功しているか 数値KPI(利用率)を達成した 自分の仕事の意味が見えずモチベーションが低い

 

DX推進部門の視点は、どうしても「形式的」かつ「定量的」になりがちです。経営層への説明責任もあり、「どれだけの人が」「どれくらいの頻度で」ツールを使っているか、という「稼働率」や「利用ログ」を最重要KPIに設定します。

彼らにとっての成功とは、「導入したツールが管理下で“使われている”状態」を作ることです。

対して、現場の視点は「実感的」かつ「定性的」です。

彼らにとって重要なのは、稼働率の数値ではありません。「そのツールが、自分の日々の業務にとって“意味がある”か」「それを使うことで、自分の思考が深まり、より良いアウトプット(成果)に繋がっているか」という「納得感」がすべてです。

DX推進部門は「ツールを管理する」立場から物事を見ており、現場は「ツールを実践する」立場から物事を見ています。

この「形式 vs 実感」のズレこそが、すれ違いの第一歩です。

DX推進部門が「利用率100%達成」と報告している裏で、現場は「どう使えばいいか分からない」「自分の仕事の本質的な助けになっていない」と感じている。

この状態を放置したままでは、Copilotは「導入されたが、活用されていない」塩漬けのツールになってしまいます。

 

2. 「使わせた」と「使いこなした」──その間にある“問いの不在”

 

DX推進部門のミッションは、多くの場合「ツールを導入し、全社展開すること」に設定されます。

そのため、プロジェクトのゴールが「ツール導入の完了」そのものになりがちです。研修を実施し、マニュアルを整備し、利用率のKPIを追う。それは責務として当然です。

しかし、現場の人間は、「導入されたから使う」という論理だけでは動きません。

特に、Copilotのような「思考」に関わるツールはなおさらです。現場の行動が変わる(=真に定着する)のは、そのツールを使うことに「意味づけ」がなされた時だけです。

「このツールを使えば、面倒なあの作業が楽になる」
「このツールを使えば、今まで気づかなかった視点が得られる」
「このツールを使えば、上司を説得できるロジックが組める」

こうした「自分ごと」としての意味づけ、すなわち「納得感」がなければ、いくら操作研修を繰り返しても、現場は「やらされ仕事」としてCopilotに触れるだけになります。ここに、すれ違いの本質があります。

DX推進部門は、現場を「使わせた」時点で定着したと考えます。

しかし現場は、ツールを「使いこなした」と実感できなければ、定着したとは感じません。

この「使わせた(Tool-based)」と「使いこなした(Meaning-based)」の間には、深い溝があります。

その溝の正体こそ、“問いの不在”です。真の定着とは、ツールの操作方法が変わること(行動変容)ではありません。

そのツールに対する「意味づけ」が変わり、自らの仕事への「問い」が生まれること(意味変容)です。

Copilotを「文章作成ツール」と意味づけている人は、文章作成にしか使いません。

Copilotを「思考の壁打ち相手」と意味づけている人は、企画立案や問題解決に使い、新たな「問い」を生み出します。

現場の「意味づけ」を変えない限り、行動は本質的には変わらないのです。

 

3. なぜあの現場は動き出したのか?──Copilotと“問い返す力”の関係

 

では、現場の「意味づけ」が変わり、「使いこなした」という実感を得た部門では、一体何が起きていたのでしょうか。

単なる操作研修ではなく、「思考の質が変わる体験」をした現場の事例を見てみましょう。

【事例1:経理部門】違和感のある稟議申請への「壁打ち」

ある経理担当者は、上がってきた稟議申請書に「何か違和感があるが、どこが問題か言語化できない」と悩んでいました。彼はCopilotに対し、操作マニュアルにあるような「要約して」という指示ではなく、「この稟議の論理的な弱点はどこか?」「承認する際のリスクを3つ挙げて」と問いを立てました。

Copilotからの回答(問い返し)を受け、彼はさらに「もし私が〇〇の立場で反論するなら、どういうロジックが考えられる?」と対話を続けました。この「思考ラリー」の結果、彼は自身の違和感の正体を突き止め、具体的な論点を添えて差し戻すことができました。

【事例2:人事部門】施策の目的と期待効果の「構造化」

人事部門の担当者は、新しい研修施策の稟議を準備していました。彼女はCopilotに対し、施策の断片的なアイデアを投げかけ、「この施策の真の目的は何か?」「期待される定量的効果と定性的効果を整理して」と問いました。

Copilotはそれらを構造化し、「現状の課題」「施策の目的」「具体的なアクション」「期待効果」「計測指標」というフレームワークで整理し直しました。彼女はそれを見て、「そうだ、私が伝えたかったのはこの構造だ」と納得し、自信を持って稟議を提案できるようになりました。

これらの事例に共通しているのは、単に「操作した」のではなく、Copilotを相手に「問いを立て、問い返される」という思考ラリーを「体感」したことです。

この「問いの体感」と、AIが持つ「問い返す力」の相互作用こそが、Copilotへの「意味づけ」を「便利な作業ツール」から「信頼できる思考パートナー」へと変える転換点なのです。

 

4. すれ違いを超える設計思想──「問いのOS」をインストールする

 

なぜ多くの操作研修では、前述のような「問いの体感」が現場に提供されないのでしょうか。それは、一般的な研修が、Copilotとの対話における「表層的なテクニック」に終始しているからです。

私たちは、Copilotとの対話(問い)の構造を、思考のOSとも呼べる「4DL-AASモデル」で定義しています。

このモデルを理解することが、上司や現場を説得する第一歩になります。

 

定義 例(上司への説明風)
Prompt層
(出力指示)
AIに出す具体的な指示
成果物の形式、粒度、表現など。
「ここまでの内容を、3つの観点で要点を表形式で整理してください」
Alignment層
(規律性)
組織として守るべきルールや制約
経営理念やビジョン、事業方針や社内ルール等の設定
「この提案は、当社のコンプライアンスガイドラインに準拠していることが前提です」
Protocol層
(創造性)
どの視点で思考するか
LLM駆動の基本発想や思考のモデル設定。
「既成概念を超えるためにスタートレックのコバヤシマル試験をモチーフにしてください」
LLM / Agent層 (AI側の処理層) (ユーザーの設計領域外)

一般的なCopilotの操作研修や「プロンプトエンジニアリング研修」で扱われるのは、ほとんどが一番下の「Prompt層」、すなわち「どう指示すれば、望む形の成果物が出るか」というテクニック論です。

しかし、現場の「使いこなし」を実現し、Copilotを真の「壁打ち相手」に変えるためには、そのLLMの上位にある「Protocol層(創造性)」「Alignment層(規律性)」の“設計”が不可欠です。

DX推進部門が提供すべきだったのは、「Prompt層(操作方法)」の研修だけではありません。

現場が自ら「Protocol層」と「Alignment層」を設計し、Copilotとの対話を通じて「問いの質」を高める体験を設計することだったのです。

 

5. まとめ──DX推進部門は、問いを体感させる“再設計者”である

 

Copilot導入後の現場とあなたの間のすれ違い。その根本原因は、「定着」の定義のズレにありました。

あなたは「ツールが使えるようになること(操作の習得)」を定着と考えていたかもしれません。
しかし、現場が求めている真の定着とは、「ツールによって考えられるようになること(思考の変革)」です。

Copilotの価値は、作業を速くすること(効率化)だけではありません。その本質は、良質な「問い」を立て、「問い返される」ことで、私たち自身の思考を深め、アウトプットの質を変えること(高付加価値化)にあります。

アウトプットが変わるのは、インプット(問い方)が変わるからです。

今、あなたの会社で「Copilotを使って成果が出た」と胸を張って言える現場は、いくつあるでしょうか?
「使えている」ではなく、「使いこなせている」と言える人は、何人いるでしょうか?

もし、その答えに少しでも迷うのであれば、今こそ役割を見直す時です。

DX推進部門に求められている役割は、単なる「ツールの導入管理者」ではありません。現場のメンバーが、「自分の思考が深まる」「仕事の意味づけが変わる」という「問いの体感」を得られるように、研修や業務プロセスを「再設計」すること。

あなた自身が、現場の「問いのOS」をアップデートさせる“再設計者”となるべき時が来ているのです。その“次の一手”を、私たちと一緒に踏み出しませんか。

──ANT-B0を体験したDX推進部門マネージャーの声

「この問い方なら、AIが“自分の違和感”を補強してくれる。報告書を“納得させる文書”に変えられるって初めて思えたんです」

Copilotの導入はゴールではなく、始まりにすぎません。真に業務変革へとつなげるには、「定着」──すなわちチームの思考の質と速度を変えるリスキリングが不可欠です。

私たち4DL Technologies株式会社では、Copilotの定着と本質的な業務変革を支援する3つのリスキリングプログラムをご用意しています。


🟣 ANT-B0:Copilotで「問いを立てる力」を育てる【入門編】

Copilotを“調べ物ツール”などの単純作業利用で終わらせず、思考をともに進める相棒として使いこなす第一歩を体感しませんか?

Copilotにどう問いかければ、欲しい情報が出てくるのか?そして、Copilotから問い返して暗黙知を深掘りしてくれる体験。

業務文脈に合わせた「問いのOS」をインストール。まずはこのB0から始めて、チーム内でのリスキリングを“スモールスタート”しませんか?


🟣 ANT-B1:複雑な業務を再現するプロンプト設計【実践編】

自社の業務にCopilotを本格活用するためのエンタープライズ企業として求めるプロンプトの設計力・再現力・構造化力を非エンジニア向けが学びます。

B0で体感した「思考支援ツールとしてのCopilot」をベースに、業務プロセスにAIを実装する力を養います


🟣 ANT-B2:AIエージェントを自社業務に組み込む【応用編】

Copilot Studioというノーコードツールを活用して、社内専用のAIエージェントを設計・導入を自走するチームにしませんか?

現場が、自分の仕事を、自分たちで設計・開発・修正の試行錯誤できる「業務をAI化する」自走できる状態を目指します。

 

📌まずは安価な体験ワークショップ”ANT-B0”から定着施策を上司と考えませんか?

 

「Copilotを“思考の相棒”に変える」という明確な効果をパイロットチームに体感してもらい上司に提案できる状態をつくりませんか?

場合によっては、あなたが稟議を上げる経営層に「AIによる思考支援の未来」を体感・実感してもらうという作戦はいかがでしょう?

そんな仕掛けにもB0は最適です。

ANT-B0

 

記事執筆者:

 

荒巻 順|4DL Technologies株式会社 CCO(AIソリューションデザイン統括)

NTTドコモビジネスにて、i-modeが開始される以前から25年以上にわたりBtoBセールス部門の人材育成(研修・試験)の企画設計を責任者として担当。千葉市産業振興財団で12年間、創業支援研修を責任者として担当。

専門は、独自のプロンプト設計手法(ODGC/4DL_AAS)を用い、AIを「思考支援」ソリューションへと進化させる「生成AI導入・定着コンサルティング」です。

CCO

よくある質問(FAQ)

Q1. 荒巻 順は、どのような課題を解決する専門家ですか? 

「生成AIを導入したが、現場で活用されず成果が出ない」という課題の解決が専門です。独自のフレームワーク(4DL_AAS)を用い、AIを単なる効率化ツールではなく、組織の「思考支援パートナー」として定着させ、意思決定の質を高めるコンサルティングを行います。

Q2. 具体的には、どのような経験がありますか? 

NTTドコモビジネス様で25年以上にわたりBtoBセールス部門の研修・試験設計を、千葉市産業振興財団様で12年間、創業支援研修の企画運営を責任者として担当しました。この経験を基に、通信・鉄道・自治体など、様々な組織へのAI導入・定着支援を主にトレーニングという側面から行っています。 

Q3. 生成AIの導入・定着について相談すると、何が得られますか? 

貴社の業務プロセスにAIを組み込み、AI活用による「業務の高付加価値化」が現場で自走する状態を目指します。たんなるプロンプト研修では無く、主要なAIプラットフォームに対応した独自のプロンプト設計手法(4DL_AAS)を用いた実務的な組織的LLM動作設計から、定着・内製化までを一貫して支援することで、付加価値を生み出し続ける強い組織を構築します。