これまで私は、画像生成AIを「きれいなイラストを作る」「ブログのアイキャッチ画像を作る」といった用途では、もちろん便利なものだと見ていました。
みなさん こんにちは《聴くチカラ研究所》の4DL Technologies株式会社CCO荒巻順です。ブログへのご訪問、ありがとうございます。
ただ、BtoBビジネスの提案現場、とくにエンタープライズ企業向けの企画書づくりにおいては、やはり主役はPowerPointだと思っていました。
背景を整理し、課題を定義し、解決策を示し、導入フローを描き、期待効果を説明する。
20ページ以上の資料で、厳密にロジックを積み上げる。上層部に上がっても耐えられる企画書を作る。これは、今でもBtoBビジネスの大切なセオリーだと思っています(当面は・・・)。
画像生成AIというと、どうしても「きれいな絵を作る」「見栄えのよいビジュアルを作る」といった印象が先に立ちます。
しかし今回感じたのは、画像生成AIは単なる“作画の道具”にとどまらないということです。
ビジネス資料の構造を読み取り、別の接点に合わせて再構成する。
つまり、企画や営業の「表現そのものを変換する道具」として使えるのではないか。そこに、少し驚しました。
私たちが提供するAI時代のDX人材アセスメント「ANT-DXA」のPowerPointカタログを、ChatGPTのImages 2.0でA4一枚の展示会フライヤーに変換してみたところ、その実務的な手触りに、少し考えを変えることになりました。
まずは、変換の元となった資料を置いておきます。
【画像①】提案・稟議・上層部説明に耐えられるよう、かなり丁寧にロジックを積み上げた「ANT-DXA」のサービスカタログ。
この資料は、AI時代のDX人材アセスメントとして、直面する課題、コンセプト、品質保証、導入フロー、提供方式、価格までを網羅した、いわば「正攻法の提案書」です。
大手企業の意思決定プロセスを意識すれば、こうした情報の網羅性は欠かせません。
しかし、展示会や初対面の場で、いきなりこのボリュームを突きつけるのは、相手にとって少し荷が重いのも事実です。
ここで考えたのが、商談の「順番」です。
① 20ページの企画書は、意思決定を支える。
② A4一枚のアイキャッチは、その意思決定の入口を開く。
この二つは、役割が全く異なります。
多忙な部門責任者と話す場合、最初から分厚い資料を読み込んでもらうのは簡単ではありません。
まずは一目で「何の話か」「自社に関係があるのか」を伝え、相手に「聞くスイッチ」を入れてもらう必要があります。たぶん、このへんは中小企業向けの商談などでは顕著なシーンではないでしょうか?
少し厳しい言い方をすれば、分厚い企画書は、相手が読む気になってから効くものです。
でも、読む気にさせる一枚がなければ、その企画書は机の上で静かに眠ることになります。その「眠らせないための入口」を、Images 2.0は驚くほど的確な方法で試作してくれました。
今回Images 2.0に頼んだのは、単に「きれいな絵を描いてください」ということではありません。
20ページ以上のPowerPoint資料に含まれる複雑な情報を読み取り、展示会で配れる A4一枚に再構成すること。さらに、ビジネスフォーマル版とビジネスカジュアル版という、異なるトーンで出し分けること。
これは、かなり実務的な作業ではないでしょうか。
情報の優先順位を決め、どこを前に出し、どこを削り、どの順番で読ませるかを設計しなければなりません。
つまり、Images 2.0が担ったのは、単なる作画ではなく、ビジネス資料の「再編集(エディトリアル)」でした。
ここが、今までの画像生成AIとは一線を画す部分だとビックリしました。(基本AIを使う中で静止画や動画の生成機能には興味が湧かなかったというのうが本音です、いままでの)
まず試したのは、ビジネスフォーマルなトーンでのA4化です。
【画像②】ビジネスフォーマル版。信頼感を優先し、大手企業の管理部門や上層部にも共有しやすいトーンで構成。
20ページの資料に含まれていた情報の核が、一つの視覚的な流れに再構成されています。
単に文字を減らしたのではない。「説明者がいなくても、一読して構造がわかる」ように情報の順番が再設計されている。
実務におけるこのフォーマル版の役割は、「初回商談後の社内共有」や「上長への報告」「稟議前の概要説明」にあります。
いきなり詳細資料を送る前に、「まずはこの一枚を見てください」と手渡すことで、社内での合意形成をスムーズにする。そういう位置づけの資料として機能するのではないでしょうか?
次に、トーンを変えてビジネスカジュアル版も作ってみました。
【画像③】ビジネスカジュアル版。アイコンや余白を活かし、展示会での視認性と親しみやすさを重視。
同じ「ANT-DXA」の内容ですが、印象はガラリと変わります。こちらはアイコンを効果的に使い、パッと見の「わかりやすさ」に振り切っています。
このカジュアル版が生きる主戦場は、「展示会」や「セミナー後のフォロー」「SNSやブログでの告知」、あるいは「中小企業の経営者向けの最初の一枚」です。
こちらは詳しく読ませることよりも、「まず話を聞いてみよう」と興味を惹くための、軽やかな武器になります。
たぶん、正解は一つではありません。
どちらを出すべきかは、お客様のキャラ、組織文化、関係性、商談の温度感で変わります。
信頼感を重視する堅実な組織にはフォーマル版を。すでに関係性があり、本質的な議論をサクサク進めたい相手や、展示会でのクイックな接点にはカジュアル版を。
・AIは候補を作る。
・人間は、相手を見て選ぶ。
その「相手を見て選ぶ力」こそ、私たちが営業現場で長く鍛えられてきた感覚そのものです。
AIに全てを任せるのではなく、AIが提示した選択肢を、現場の空気感に合わせて「これだ」と選び取る。そこに実務の面白さがあります。
聴くチカラ研究所では、これまで「問い」や「DX人材育成」「生成AIの定着」について多く書いてきました。
今回、画像生成AIを入り口にした記事を書いた理由は、これが「組織のAI定着と、人材育成のミッシングリンク」を解く鍵になると確信したからです。
多くのエンタープライズ企業の人事部門やDX推進担当者は、いま、ある深い悩みを抱えているのではないでしょうか。
「AIツールを配布し、プロンプト研修もやった。それなのに、現場の活用が(もしかすると)お絵描きやメールの挨拶文作成で止まっており、一向に実務の生産性向上や行動変容に繋がらない」という、定着の不足感です。
なぜ、そうなるのか。
理由はシンプルです。ツールの操作方法(プロンプトのテクニック)だけを教えて、肝心の「文字と図式を往復させながら、自分の仕事を再編集する思考法」を教えていないからです。
今回の実験で私が行ったことは、まさにその往復でした。
文字(PPTの論理)を、図(A4フライヤー)にして眺める。
その図を眺めながら、「顧客に伝えるにはどこを削るべきか」をもう一度考え、文字を選び直す。
この、言葉と図式を行き来するプロセスそのものが、自らのビジネスロジックを問い直し、磨き上げるという「思考の拡張」であり、実務における強力な「行動変容」なのです。
私たちが提供するDX人材アセスメント「ANT-DXA」は、個人のデジタルスキルや組織の現在地を「可視化(アセスメント)」するためのものです。
しかし、スコアを測っただけでは、現場は変わりません。
その測った現在地の先で、現場のビジネスパーソン一人ひとりが、今回のような「AIを伴走相手にして、自らの仕事を問い直し、アウトプットを再編集する体験」を持つこと。
それこそが、アセスメントをただの現状把握で終わらせず、組織全体の実務行動変容へとドライブしていくための真のロードマップなのです。
「きれいな絵ができた」と喜ぶのはお絵描きです。
「この構造なら、うちの顧客は動くだろうか」と言葉と図を往復させるのが、実務です。
画像生成AIは、その往復を圧倒的なスピードで可能にします。
正直、少し嬉しくなりました。生成AIは単なるツールではなく、人間が考えを広げ、整理し、次のステップへ進めるための、教育的かつ実務的な伴走者になり始めている。
今回のフライヤー化は、そんな予感を持たせてくれる出来事でした。
もちろん、AIが作ったものをそのまま印刷に回して終わり、というわけにはいきません。
情報の正確性やブランドトーンの微調整など、最後に「使える営業ツール」に仕上げるのは、人間の目利きです。
今回の事例は、ひとつのカタログを変換した小さな実験にすぎません。しかし、ここには生成AIのビジネス活用における大きなヒントがあります。
生成AIは、文章を作るだけでも、画像を作るだけでもありません。
文字、図、資料、会話、企画、提案を行き来しながら、ビジネスの考え方や伝え方そのものを拡張していく道具になり始めています。
4DL Technologies株式会社は、2026年6月9日(火)・10日(水)に東京ビッグサイトで開催されるBEYOND FORUM 2026「第1回 AI時代の人材開発・タレントマネジメント展」に出展します。
BEYOND FORUM 2026 公式サイト・来場登録はこちら
BEYOND FORUMでは、こうした生成AIの実務活用を、4DL Technologiesの具体的な取り組みとともにご紹介します。
特に、「アセスメント(現状把握)をどうやって、現場のリアルな『実務定着』と『行動変容』にまで接続していくのか」という、人事・DX推進部門のための具体的な変革シナリオをお話しする予定です。
生成AIを「便利そう」で終わらせず、営業、企画、研修、社内展開の成果につなげたい方は、ぜひ会場でお声がけください。
会場で、生成AIの次の使い方について、そして「思考拡張」のリアルについて、皆さんとお話しできることを楽しみにしています。
荒巻 順|Jun Aramaki
4DL Technologies株式会社 CCO(AI Solution Design 担当コンサルタント)
元・鉄工所経営者。20歳に承継した家業の荒巻鉄鋼から1994年に転身し、PCサポート業、モバイル業界の顧客接点コンサルタント、現在はエンタープライズ企業のAI活用・定着を支援することを息子の起業した4DL Technologies株式会社で担当する。
技術者ではない。技術を「現場に馴染ませる」専門家だ。
NTTドコモビジネスにて25年以上、BtoBセールス部門の研修体系・資格制度を統括。延べ4万人超の現場に伴走してきた。「現場の事実が判断軸を育て、判断軸が現場を変える」——この実務哲学は、鉄工所時代に図面と鉄を前に身につけたものであり、AI時代の今も変わらない。
どこかの組織に属さない独立独歩(Independent)の立場から、一貫して「現場」に立ち続けてきた。
ITが推し進めてきた「アナログのデジタル化」の先にある、「デジタルのアナログ化」——デジタルに血を通わせ、人間に馴染ませる——という世界線を見据えている。
現在はMicrosoft 365 CopilotやChatGPT・Gemini・Claudeなどの生成AIプラットフォームを、「作業の高速化」ではなく「判断軸の高速更新」のために実装する支援を行う。
独自の3層アーキテクチャ 4DL-AAS(Protocol/Alignment/Prompt)を設計思想に、「リーダーを孤独にしない、メンバーを迷子にしない」チームの自走状態をつくることを使命としている。
Q. 一般的なAI研修やコンサルとは何が違うのですか? 単なる「操作」や「効率化」ではなく、チームの「判断軸」をAIに同期させる設計を行います。鉄工所の職人が図面を読み解くように、リーダーのビジョンを現場が動ける言葉(プロンプト)に翻訳し、データドリブンの先にある「文脈を大切にする経営」を具現化します。
Q. どのようなフェーズで相談すればよいですか? 「導入したが活用が属人化している」定着フェーズはもちろん、活用ルールが形骸化し「免責装置」になっている状態の打破も得意とします。既存の業務プロセスに潜むアナログな知恵を、いかにAIで増幅させるかというグランドデザインから参画可能です。
Q. チームにはどのような変化が期待できますか? 「リーダーの孤独」と「メンバーの迷子」が解消されます。AIを介して判断と実行のサイクルが高速化されることで、現場が自らの意志でしなやかに動き続けられる「自走するチーム」へと進化します。