みなさん こんにちは《聴くチカラ研究所》の4DL Technologies株式会社CCO荒巻順です。ブログへのご訪問、ありがとうございます。
今回は現場の要である課長(マネージャー)に焦点を当てた、AIを課長ならではの使い方について5つの記事を書きました。
課長とスタッフが、同じCopilotの使い方、例えばメールの作成、書類の成形、ちょっと複雑なExcelの作成でいいのですか?という問いを4DL Technologies株式会社から皆さんに投げかけます。
月曜の朝、営業部長(グループマネージャー)から呼ばれました。
「今期は価格改定を進めて、粗利率を改善してほしい」
会議を終えて席に戻ると、自分のチームのメンバーから別々の報告が上がってきます。
「重点顧客A社は、ここで値上げを出すと競合へ流れるかもしれません」
「新規で大型案件の引き合いが来ています。今、追わないともったいないです」
「既存顧客のフォローだけでも手一杯です。これ以上は回りません」
どの報告も、現場から見ればもっともです。課長自身も長く営業をしてきたのですから、言っていることはよく分かる。
しかし、ここで課長がメンバーと同じ位置から案件だけを見てしまったら、誰が「部門として何を優先すべきか」を考えるのでしょうか。
本シリーズでいう「課長」とは、10名前後の現場スタッフを取りまとめ、担当エリアや顧客群の営業活動を担いながら、部長の方針と現場をつなぐマネージャーを指します。企業によって営業マネージャー、チームマネージャーなど呼称は異なりますが、本稿では便宜上「課長」と呼びます。
「A社が値上げを嫌がっている」という事実があります。
担当者にとっては、失注リスクの話でしょう。課長から見れば、重点顧客との関係、チーム全体の粗利、他案件への価格波及まで含む判断になります。部長から見れば、営業部門全体の収益構造や今期方針との整合性が加わる。経営から見れば、インフレ下で利益をどう確保し、どの顧客との関係を将来に残すかという話かもしれません。
事実そのものは変わっていません。変わるのは、どこからその事実を見るかです。
課長になっても、案件知識や顧客との関係性は大切です。ただし、プレイヤー時代の延長で「自分が一番詳しい人」を目指し続けるだけでは、役割の違いが生まれません。
課長に求められるのは、必要なときに現場から一度離れ、部門、会社、市場へと見る位置を動かし、そのうえで再びチームへ戻ってくることです。
似た言葉なので、ここで整理しておきます。
視点は「何を見るか」です。売上を見るのか、利益率を見るのか、顧客満足を見るのか。
視野は「どこまで見えているか」です。自分の案件だけか、チーム全体か、競合や市場まで含めるのか。
そして視座は、「どこから見るか」です。
課長自身の位置から見る。部長の位置から見る。経営の位置から見る。あるいは顧客の購買責任者の位置から見る。同じ数字でも、立つ位置が変われば意味づけが変わります。
ここで、もう一つだけ別の軸があります。抽象度です。これは「どの粒度で見るか」。たとえば「A社が値上げを嫌がっている」という個別事象から、「重点顧客の収益改善」「自課の利益構造」「会社としてどこで利益を生むか」へと一段ずつ粒度を上げることができます。逆に、方針から明日の営業行動まで具体化することもできます。
視座は立ち位置、抽象度はズーム。似ていますが同じではありません。 本稿ではまず視座を扱い、このシリーズの後半で二つを組み合わせます。
ここで大切なのは、「上の役職と同じ答えを出すこと」ではありません。
上位の答えをもらうのではなく、上位の判断基準を取りに行く。
そのうえで、自分のチームの現実へ戻して判断する。この「上がる・外れる・戻る」という往復こそ、課長の仕事をプレイヤーの仕事から変える一つの動作だと考えています。
経営学では、ミドルマネージャー(本稿でいう課長層)は上位戦略を単に伝達するだけの存在ではなく、その意図を理解し、現場で実行可能な形へつなぐ役割を担うことが指摘されてきました。
FloydとWooldridgeは、戦略実行においてミドルマネジメントの理解と関与が重要であることを論じています。またBalogunとJohnsonの研究は、組織変革の過程で、ミドルマネージャーによる「意味づけ」が意図した変化にも、意図しない結果にもつながり得ることを示しています。
つまり課長は、上から降りてきた方針を、そのまま下へ流す中継器ではありません。
上位の目的を読み、現場の情報と突き合わせ、チームが動ける判断基準や条件へ翻訳する。そして、現場から結果が戻ってきたら、その個別事象を一度抽象化し、条件・戦略・上位目的まで遡って、その翻訳が正しかったのかをもう一度考える。
この仕事に、課長としての付加価値があります。
「視座を上げる」とは、偉くなったつもりで経営を評論することではありません。自分の判断を、いったん別の位置から見直し、最後は現場で使える形に戻すことです。
いまの40代、50代の課長層は、ICTが苦手な世代ではありません。クラウドもSaaSも、TeamsもMicrosoft 365も日常的に使ってきました。
ただ、生成AIは少し性質が違います。
若手のメンバーは、Copilotで文章を整え、要約し、調査し、提案のたたき台までサクサク作ります。課長も同じように使えるでしょう。
そこで一つ問いが生まれます。
部下と同じ使い方ができれば、課長としてCopilotを使えていると言えるのでしょうか。
メール作成や要約は、もちろん便利です。しかし、それだけでは作業時間が短くなるだけで、課長の判断そのものは変わりません。
たとえばCopilotに、こう頼むことはできます。
「この案件について、結論は出さずに、部長の視座から私が見落としている目的や条件を問い返してください」
「私の判断の前提を分解し、固定化している可能性があるものを指摘してください」
Copilotに何を答えさせるかではなく、どこから、何を見て、どう問い返させるかを少し変える。すると同じCopilotでも、課長の思考を支える動作に変わり始めます。
これは、このシリーズの後半で詳しく扱います。
AIで部下の作業能力が上がれば上がるほど、課長の仕事を「部下より速く資料を作れること」に置く意味は小さくなっていきます。
では、課長は会社とチームに何を提供するのでしょうか。
私たちは、この問いを少し強い言葉で考えてみたいと思います。
課長は、報酬の対価として何を生産する仕事なのか。
モノを作る仕事ではありません。しかし、判断基準をつくる。優先順位をつくる。上位方針を現場で動ける条件へ具体化する。現場の個別事象を一段抽象化して意味を捉え直す。メンバーが自分で考えられる問いを返す。市場変化に応じて作戦を修正する。
これらはすべて、課長が組織へ提供する「生産物」と考えられます。
だからこそ、視座を上げることには意味があります。
それは知識を増やすことでも、部長らしく振る舞うことでもない。自分が生み出す判断の付加価値を上げるための第一歩だからです。
もし、その第一歩をCopilotの使い方を少し変えるだけで踏み出せるとしたら、試してみる価値はあるのではないでしょうか。
明日の会議で、一つだけ試してみてください。
部下から案件の相談を受けたとき、すぐに答えを返す前に、こう考えます。
「この案件を、自分の課の外から見たら、何が変わるだろうか。」
部長なら何を見るか。会社なら何を見るか。顧客の経営なら何を見るか。
そして、その位置から見えたものを持ったまま、もう一度チームへ戻って判断する。
視座を上げるとは、上に行ったまま戻ってこないことではありません。上がって、外れて、戻る。
その往復を繰り返すことで、課長としての判断に、メンバーとは違う付加価値が生まれます。
次回は、部下から「案件が増えています。人が足りません。2名増員してください」と言われた場面を扱います。
その報告を、そのまま「問題」として受け取ってよいのでしょうか。
Microsoft 365 Copilotを導入した。次は、管理職の使い方を変える番です。
《ANT-B0マネージャー編》は、AI時代の「課長の付加価値」を考え直す実践ワークショップです。
マネジメント理論を学ぶための管理職研修でも、Microsoft 365 Copilotの操作方法を覚えるAI研修でもありません。
Copilotを思考支援の相棒として使いながら、見る位置を変え、自分の判断を問い直し、チームへ返す問いを変えていく。その過程を通じて、自分は課長としてチームにどんな付加価値を提供するのか。会社に対して、報酬の対価として何を生み出すのか。を考えるワークショップです。
変えるのは、Copilotに何を答えさせるかではなく、どう考えさせるかです。
この考え方の具体的な仕組みは、シリーズ後半で扱います。
本文中で触れた研究は、以下の一次ソースへリンクしています。
荒巻 順|Jun Aramaki
4DL Technologies株式会社 CCO(AI Solution Design 担当コンサルタント)
東京・深川の鉄工所の三代目として、ものづくりの現場を原点に持つ。20歳で家業を承継し、図面、段取り、納期、品質、顧客対応と向き合う中で、「現場の事実から判断軸をつくる」感覚を身につけてきた。
その後、PCサポート業、モバイル業界の顧客接点支援、法人営業部門の人材育成・制度設計を経て、現在は4DL Technologies株式会社で、生成AIを活用した人材育成・組織変革・営業力強化の支援を担当している。
技術者ではない。ただし、技術を「現場で使える状態」に翻訳することを仕事にしてきた。
NTTドコモビジネス関連の法人営業領域では25年以上にわたり、BtoBセールス部門の研修体系、資格認定制度、教材設計、運用支援、効果測定に携わり、延べ40,000人を超える現場の育成支援に伴走してきた。
大企業の内側でキャリアを積んできたわけではない。
深川の鉄工所、中小企業経営、現場支援、法人営業人材育成を経て、組織の外側から日本を代表するエンタープライズ企業の現場と向き合い続けてきた。
組織の作法は、お客様に鍛えられて学んできた。一方で、組織の常識に染まりきったわけではない。
だからこそ、現場にある違和感や前提のズレに対して、「それは本当に正しいのか」「別のやり方はないのか」と問いを立てることを重視している。
エンタープライズ企業の担当者は、多くの場合、自社の問題認識や課題感をすでに持っている。一方で、その見立てが本当に正しいのか、別の捉え方はないのか、組織としてどこまで踏み出せるのかに迷っていることも少なくない。
そのため、商談や設計の場では、あえて反対側の視点や異なる仮説を提示し、発想の幅を広げることを重視している。重要なのは、奇抜な正解を押しつけることではない。組織が受け止められる範囲で視野を広げ、現実的に動ける着地点を共につくることである。
正しいことを言うだけでは、現場は動かない。
どれほど筋の通った設計でも、相手の組織文化や意思決定の作法に翻訳できなければ、定着しない。そのこともまた、現場に教わってきた。
組織とは、人を歯車にするためのものではない。目的・目標・役割・判断基準を揃え、一人ひとりが自分の使命を理解し、自律的に判断しながら全体として動くための構造である。
AI時代において、この組織観はさらに重要になる。
人が自分の使命を忘れ、判断を手放し、与えられた作業だけをこなす存在になった瞬間、その仕事はAIに置き換えられやすくなる。だからこそ、AI活用とは単なる効率化ではなく、人とチームが何を判断し、何を担い、何のために動くのかを問い直す営みである。
鉄工所では、設計図のない仕事は始められない。
AI時代の人材育成も同じである。どんな人材を育てたいのか。何を測るのか。どこにギャップがあるのか。それを定めないまま研修や施策を実施しても、現場は変わらない。
現在は、4DL Technologiesの「ANT-DXA(AI時代のDX人材アセスメント)」を通じて、企業が目指すDX人材像の定義、現状とのギャップ可視化、育成施策への接続を支援している。
また、4DL Technologies独自のLLM駆動アーキテクチャ「4DL-AAS」を設計思想に、Microsoft 365 Copilot、ChatGPT、Gemini、Claude、Dify、Copilot Studioなどの生成AIを、企業の方針・業務文脈・現場判断に接続する支援を行っている。
目指しているのは、AIを使える人を増やすことだけではない。
AIを介して、リーダーを孤独にせず、メンバーを迷子にせず、チームが自ら考え、判断し、動き続ける状態をつくることだ。
・AIを導入したが、現場での活用が広がらない。
・CopilotやChatGPTを入れたものの、使い方が属人化している。
・研修を実施しても、業務変革や組織変化につながっていない。
・DX人材育成を進めたいが、何を測ればよいかわからない。
そうした課題に対し、要件定義から設計、教材開発、運用、効果測定、改善提案まで、企業ごとの文脈に合わせたフルスクラッチ型の支援を行っている。
AIを「便利な道具」で終わらせず、ヒトとチームの判断力・創造力・実行力を高める仕組みに変える。
そのための設計と実装に、現場起点で伴走している。
■4DL Technologies株式会社にご相談いただけるテーマ■
・ANT-DXA(AI時代のDX人材アセスメント)の設計・運用
・AI時代に求められるDX人材像の定義と可視化
・Microsoft 365 Copilot / ChatGPT / Gemini / Claude などの生成AI活用・定着支援
・DX推進部門向けのAI活用人材育成・研修設計
・BtoBセールス部門のAI活用・営業力強化
・生成AIを活用した業務変革・チーム学習・判断支援の設計
・4DL-AASに基づくAIエージェント設計・プロンプト設計支援
・AI導入後の活用状況診断、定着施策、効果測定
「AIを導入したが、現場の変化が見えない」
「DX人材育成を進めたいが、何を測ればよいかわからない」
「研修や施策を始める前に、自社の現在地を可視化したい」
「Copilotや生成AIを、個人の便利ツールではなく組織の実行力につなげたい」
そう感じているDX推進部門・人材育成部門・営業企画部門の方は、ぜひ一度ご相談ください。