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9月 23, 2026
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Copilot導入のROIは出た。それで「定着」と言えるか──課長の画面に残る空白

Copilot導入のROIは出た。それで「定着」と言えるか

みなさん こんにちは。《聴くチカラ研究所》の4DL Technologies株式会社CCO 荒巻順です。ブログへのご訪問、ありがとうございます。

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全社にMicrosoft 365 Copilotのライセンスを配り、操作研修も終えた。

利用率は上がり、時短のROIも出ている。

それなのに、経営から「で、AIは何を変えたんだ?」と聞かれると、答えに詰まる。

この記事は、その詰まりの正体を一つに絞って書きます。止まっているのはツールでも研修でもなく、課長のCopilotの画面です。

 

30分×3,000人。ROIは出た。それで「定着した」と言えるか

 

エンタープライズ企業のCopilot導入は、数字が出やすい構造をしています。

1人1日30分の時短。個人にとってはささやかでも、3,000人なら年間で20万時間近くになります。人件費に換算すれば、ライセンス費用は軽く回収できる。DX推進部門がこの数字を見て「定着した」と感じ始めるのは、怠慢ではありません。数字が本当に大きいからです。

ただ、この数字には一つ癖があります。全員が同じ使い方をしたときに、一番きれいに出るのです。議事録の要約、メールの整形、調べ物、資料のたたき台。誰がやっても同じ効果が出る作業ほど、人数を掛けたときの合計が大きくなる。

つまり、ROIが大きいほど「全員が同じ画面を見ている」可能性が高い。ここに、次の問いが刺さります。

 

経営に「AIはDXの中で何なんだ」と聞かれて、答えに詰まる理由

 

導入から半年、一年と経つと、経営の問いが変わります。

最初は「使われているか」。次に「効果は出ているか」。そして三つ目に、こう来ます。「そもそもAIは、うちのDXの中で何の役割なんだ」。

この問いに、時短の数字では答えられません。問いのサイズが違うからです。経営が聞いているのは作業の効率ではなく、判断や事業の進め方がどう変わるのか。手元にある答えが「1人30分」だけだと、詰まります。

詰まる理由は、答えを持っていないからではなく、答えが出る場所をまだ見ていないからです。その場所を、次の物差しで確かめてみます。

 

IPAのStage論で見る、多くの企業の現在地

 

IPA「DX動向2025」や経済産業省・IPA「デジタルスキル標準 ver.2.0」の整理を借りると、Copilotをはじめとする生成AIの活用は、三つの段階に分けられます。

  • Stage 1 個人利用・試験利用 議事録要約、メール整形、調べ物、壁打ち。多くの日本企業がここに集中しています。
  • Stage 2 業務プロセスへの組み込み 部署の業務フロー、判断・確認・承認のプロセスとAIが接続される段階。目指すべき次の段階です。
  • Stage 3 継続活用・運用ルール化 チームで再利用され、成果指標とつながる段階。到達している企業はごく一部です。

先ほどの「30分×3,000人」は、Stage 1の数字です。Stage 1は個人の効率の段階なので、人数を掛ければ大きくなる。しかし経営が聞いている「役割」は、Stage 2以降で初めて姿を現します。

では、Stage 1からStage 2へ上がる鍵は、誰が握っているのか。推進部門でも、ツールでもありません。「判断・確認・承認」のプロセスを日々回している人、つまり課長です。

 

課長と新人のAIの画面は、何が違いますか?

 

ここで一度、自社を点検してみてください。導入は終わった。研修も終わった。では、課長と新人のCopilotの画面は、何が違いますか。

もし違いが見つからないなら、次のような症状が出ているはずです。

  • Copilotの使い道は、調べ物と文章の下書きがほとんど。部下と同じ使い方のまま
  • AIで作業は楽になった。だが浮いた時間は、マネジメントの時間に変わっていない
  • 部下の資料はAIで見違えるほど整ってきた。その中身を、自分の経験で問い直せているか
  • AIのもっともな答えに納得し、そのまま通す。「検証する手間」より「納得する楽」を選んでいる
  • AIに答えを求めたことはあっても、AIで自分の判断を疑ったことは、まだ一度もない
  • どこかAIにチカラ負けしている気がする。その正体を、まだ言葉にできていない

一つでも心当たりがあれば、Stage 2への壁は課長の画面の中にあります。

この六つの症状は、当社がマネジメント層向けワークショップ「ANT-B0 マネージャー編」の入口に置いている点検項目です。ワークショップでは体験アセスメントによって、この症状を部門の「実測値」に変えます。詳細は ANT-B0 マネージャー編のページ をご覧ください。

 

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止まる理由:AIは典型解を返し、暗黙知は課長にしかない

 

なぜ課長の画面が鍵になるのか。AIの答えの性質に理由があります。

Copilotに限らず、生成AIが返すのは確率で計算された無難な解、いわば「典型解」です。メールも議事録も要約も、典型解で十分に速くなり、質も高い。だからStage 1のROIは出ます。

しかし、全社員が同じAIを同じように使えば、全部門のアウトプットは同じ顔になります。典型解を鵜呑みにした瞬間、その部門にしかない差は消える。

差をつけるのは、AIが知らないこと。その部門にしかない経験知、現場の肌感、言語化されていない判断の癖です。これらは暗黙知なので、AIの典型解には含まれません。そして、暗黙知を一番多く持っているのは、現場の判断を毎日引き受けている課長です。

課長がStage 1の使い方をしているということは、組織で一番AIに渡す価値のある暗黙知が、一度もAIに触れていないということです。ROIが大きいほど、この空白は見えにくくなります。

 

聴く相手を、「答え」から「問い」に変える

 

では、課長はAIをどう使えばいいのか。使い方のコツではなく、聴く相手を変える話です。

多くの課長は、AIの「答え」を聴いています。新人と同じ画面です。

ここを反転させて、AIからの「問い」を聴く側に回る。

自分の判断に対して「それは上位の視座から見て整合しているか」「見落としている要素はないか」とAIに問い返させ、その問いに自分の経験で答えていく。

すると、これまで言葉になっていなかった判断の理由が、AIとの対話の中で言語化され始めます。AIが暗黙知を引き出す装置に変わる瞬間です。

そして、部下は課長のAIの使い方を見ています。

検索の延長で使う課長に、部下はやがて判断を仰がなくなる。

逆に、AIからの問いで自分の判断を磨く課長のもとでは、Stage 2の「判断・確認・承認」のプロセスにAIが自然に入り込んでいきます。

「AIはDXの中で何なんだ」への答えは、ここにあります。

作業の時短ではなく、判断の質を上げる相手。その答えが出るのは、推進部門の資料の中ではなく、課長の画面の中です。

 

DX推進担当が、明日からできる三つのこと

 

最後に、推進部門の側から着手できることを三つ。

  1. 課長層のCopilotの使い方を、利用率とは別に見る。 ログの件数ではなく、何を頼んでいるか。「作業」を頼んでいるか、「判断」を壁打ちしているか。この違いがStage 1と2の境目です。

  2. 経営への報告に、Stage の物差しを入れる。 「利用率○%、時短○時間」の次の行に、「現在地はStage 1、次の壁は課長層の使い方」と書く。役割の問いに、構造で答えられるようになります。

  3. 課長層向けの施策を、操作研修と切り分けて設計する。 操作は済んでいる。必要なのは、AIからの問いを聴く体験と、自部門の現在地の実測です。

三つ目について、当社では課長・マネージャー層向けに3時間のワークショップ「ANT-B0 マネージャー編」を提供しています。

体験アセスメントで「自部門のマネジメント層とAIの距離」を測り、その場で「AIに問い返させる型」を自分のCopilot(Gemini/ChatGPT等でも同様)で試す構成です。持ち帰るのは、課長の問いの変容と、部門の実測値の二つ。

経営に「AIはDXの中で何なんだ」と聞かれたとき、その実測値が、答えの最初の一行になります。

ANT-B0m

ANT-B0 マネージャー編(AIで、課長の視座を上げる。)

 

関連記事|《ANT-B0マネージャー編》5本シリーズ

 

筆者紹介

荒巻 順|Jun Aramaki

4DL Technologies株式会社 CCO(AI Solution Design 担当コンサルタント)


東京・深川の鉄工所の三代目として、ものづくりの現場を原点に持つ。20歳で家業を承継し、図面、段取り、納期、品質、顧客対応と向き合う中で、「現場の事実から判断軸をつくる」感覚を身につけてきた。

その後、PCサポート業、モバイル業界の顧客接点支援、法人営業部門の人材育成・制度設計を経て、現在は4DL Technologies株式会社で、生成AIを活用した人材育成・組織変革・営業力強化の支援を担当している。

技術者ではない。ただし、技術を「現場で使える状態」に翻訳することを仕事にしてきた。

NTTドコモビジネス関連の法人営業領域では25年以上にわたり、BtoBセールス部門の研修体系、資格認定制度、教材設計、運用支援、効果測定に携わり、延べ40,000人を超える現場の育成支援に伴走してきた。

大企業の内側でキャリアを積んできたわけではない。

深川の鉄工所、中小企業経営、現場支援、法人営業人材育成を経て、組織の外側から日本を代表するエンタープライズ企業の現場と向き合い続けてきた。

組織の作法は、お客様に鍛えられて学んできた。一方で、組織の常識に染まりきったわけではない。

だからこそ、現場にある違和感や前提のズレに対して、「それは本当に正しいのか」「別のやり方はないのか」と問いを立てることを重視している。

エンタープライズ企業の担当者は、多くの場合、自社の問題認識や課題感をすでに持っている。一方で、その見立てが本当に正しいのか、別の捉え方はないのか、組織としてどこまで踏み出せるのかに迷っていることも少なくない。

そのため、商談や設計の場では、あえて反対側の視点や異なる仮説を提示し、発想の幅を広げることを重視している。重要なのは、奇抜な正解を押しつけることではない。組織が受け止められる範囲で視野を広げ、現実的に動ける着地点を共につくることである。

正しいことを言うだけでは、現場は動かない。

どれほど筋の通った設計でも、相手の組織文化や意思決定の作法に翻訳できなければ、定着しない。そのこともまた、現場に教わってきた。

組織とは、人を歯車にするためのものではない。目的・目標・役割・判断基準を揃え、一人ひとりが自分の使命を理解し、自律的に判断しながら全体として動くための構造である。

AI時代において、この組織観はさらに重要になる。

人が自分の使命を忘れ、判断を手放し、与えられた作業だけをこなす存在になった瞬間、その仕事はAIに置き換えられやすくなる。だからこそ、AI活用とは単なる効率化ではなく、人とチームが何を判断し、何を担い、何のために動くのかを問い直す営みである。

鉄工所では、設計図のない仕事は始められない。

AI時代の人材育成も同じである。どんな人材を育てたいのか。何を測るのか。どこにギャップがあるのか。それを定めないまま研修や施策を実施しても、現場は変わらない。

現在は、4DL Technologiesの「ANT-DXA(AI時代のDX人材アセスメント)」を通じて、企業が目指すDX人材像の定義、現状とのギャップ可視化、育成施策への接続を支援している。

また、4DL Technologies独自のLLM駆動アーキテクチャ「4DL-AAS」を設計思想に、Microsoft 365 Copilot、ChatGPT、Gemini、Claude、Dify、Copilot Studioなどの生成AIを、企業の方針・業務文脈・現場判断に接続する支援を行っている。

目指しているのは、AIを使える人を増やすことだけではない。

AIを介して、リーダーを孤独にせず、メンバーを迷子にせず、チームが自ら考え、判断し、動き続ける状態をつくることだ。

・AIを導入したが、現場での活用が広がらない。
・CopilotやChatGPTを入れたものの、使い方が属人化している。
・研修を実施しても、業務変革や組織変化につながっていない。
・DX人材育成を進めたいが、何を測ればよいかわからない。

そうした課題に対し、要件定義から設計、教材開発、運用、効果測定、改善提案まで、企業ごとの文脈に合わせたフルスクラッチ型の支援を行っている。

AIを「便利な道具」で終わらせず、ヒトとチームの判断力・創造力・実行力を高める仕組みに変える。
そのための設計と実装に、現場起点で伴走している。

■4DL Technologies株式会社にご相談いただけるテーマ■
・ANT-DXA(AI時代のDX人材アセスメント)の設計・運用
・AI時代に求められるDX人材像の定義と可視化
・Microsoft 365 Copilot / ChatGPT / Gemini / Claude などの生成AI活用・定着支援
・DX推進部門向けのAI活用人材育成・研修設計
・BtoBセールス部門のAI活用・営業力強化
・生成AIを活用した業務変革・チーム学習・判断支援の設計
・4DL-AASに基づくAIエージェント設計・プロンプト設計支援
・AI導入後の活用状況診断、定着施策、効果測定

「AIを導入したが、現場の変化が見えない」
「DX人材育成を進めたいが、何を測ればよいかわからない」
「研修や施策を始める前に、自社の現在地を可視化したい」
「Copilotや生成AIを、個人の便利ツールではなく組織の実行力につなげたい」
そう感じているDX推進部門・人材育成部門・営業企画部門の方は、ぜひ一度ご相談ください。