BtoBセールスの現場では、お客様から「今期は予算が厳しい」「導入条件がまだ揃わない」など、なかなか前に進まない商談が少なくありません。
「なぜ理解・共感を得られているはずなのにクロージングできないのか?」と、手詰まりを感じている方も多いでしょう。そのカギは「前提条件」と「制約条件」を正しく理解し、ヒアリングすることにあります。
みなさん こんにちは《聴くチカラ研究所》の荒巻順(あらまき じゅん)です。ブログへのご訪問、ありがとうございます。
- 1.お客様と商談するときに出てくる障壁を乗り越えるのが営業の妙味
- 2.お客様の出してくる条件の違いを正しく理解する方法
- 3.前提条件が商談の障壁になったときの越え方
- 4.制約条件が商談の障壁になったときの越え方
- 5.まとめ
1.お客様と商談するときに出てくる障壁を乗り越えるのが営業の妙味
- 営業障壁を超える視点
- 顧客課題を掘り下げる
- 前提・制約を明確化
最近、ICT業界のBtoBセールスを取り巻く環境は一段と複雑になっています。
たとえば、読者の皆さんは、携帯回線やSaaSなどのソリューション提案を行う中で、お客様企業の内部事情を理解する必要性を強く感じているでしょう。
単なる単機能のデジタルツール導入なら比較的スムーズですが、複数部署間でデータ連携が必要なシステムの導入や、既存業務フロー全体に影響を及ぼす提案を行うと、一気に商談ハードルが上がります。
「社長は賛同しているけれど予算が合わない」「現場は導入したいが他部署の責任者が時期尚早と難色を示す」といったケースは、単純に価格や機能の問題ではなく、お客様が抱える組織内の前提条件や制約条件に触れてしまっている可能性があります。
このような条件をうまく整理せずに提案を続けると、せっかく構築した信頼関係も足踏み状態に陥り、スランプ感を深めてしまいます。
営業の妙味は、お客様の真の課題と、それを取り巻く環境要因を的確に捉え、最適な解決策を共同で見出す点にあります。そのためには、営業サイドが「前提条件」と「制約条件」の違いを理解し、明示的に聞き出すヒアリングスキルが求められます。
これらを適切に把握することで、商談を前進させる一歩が踏み出せるのです。
2.お客様の出してくる条件の違いを正しく理解する方法
- 条件の整理が鍵
- 前提は非交渉的要素
- 制約は調整可能要素
「前提条件」と「制約条件」は、一見似たような言葉ですが、その性質は大きく異なります。
前提条件とは、その商談やプロジェクトが成立する上で欠かせない初期設定や環境要件のことを指します。
たとえば、ICTソリューション導入にあたって「一定のセキュリティレベルを満たす既存システムが必要」「来期までに全社のガイドライン整備が必須」といった、交渉余地の少ない土台的条件がこれに当たります。
一方、制約条件は前提条件と異なり、ある程度調整や交渉の可能性が残されている条件です。
たとえば「予算内に収まるなら導入可能」「他部署の理解を得れば進められる」「外部サポートサービスが整えば許容できる」といったものが挙げられます。
これらは調整によって改善・クリアできる可能性があるため、営業としては個別の対策を検討する余地が生まれます。
条件の違いを理解した上でヒアリングすると、「何を絶対にクリアしなければいけないか」と「どこに交渉の余地があるか」を明確に分けることができます。
例えば、あるお客様が「このシステムを導入するには既存サーバーのセキュリティ強化が必須だ」と断言した場合、これは前提条件と捉え、まずはその環境整備の実現性を探るべきです。
一方で、「もし導入サポートがセットであれば検討できるかも」といった発言は、制約条件であり、追加サービスや価格調整で突破可能な要素になりえます。このような理解が、複雑な商談をわかりやすく整理する第一歩となるのです。
3.前提条件が商談の障壁になったときの越え方
- 必須条件の明確化
- 必要リソースの確認
- 長期的視点で育成
前提条件は、商談が成立するためにどうしても外せない基礎的条件です。
たとえば、ICTソリューション導入に際し「顧客企業が既存システムをクラウド化していること」や「全社のIT運用方針が整備済みであること」などが該当します。
こうした前提が整っていない場合、どれだけ素晴らしい提案をしても先に進むことは難しくなります。
このような状況に直面した際は、まずお客様に対し、その前提がなぜ必要なのか、明確な理由を示すことが重要です。
「このセキュリティ要件を満たしていないと、貴社の大切な顧客情報がリスクにさらされます」といった具合に、前提条件が満たされない場合のデメリットを具体的に示し、お客様内での合意形成を促します。
さらに、前提条件が整うまでには時間やコストがかかる場合があります。
そのときは、長期的な視点で育成するアプローチが有効です。例えば、次年度予算で必要なセキュリティ投資を計画できるよう、上層部への事前稟議をサポートしたり、専門家によるトレーニングやコンサルティングサービスを提案したりします。
「今はまだ時期尚早」と言われた場合でも、前提条件をクリアにする計画を一緒に描けば、将来的な商談成立の可能性が高まります。
こうした地道な種まきを行うことで、前提条件という障壁を時間をかけて乗り越えられるのです。
4.制約条件が商談の障壁になったときの越え方
- 交渉余地の確認
- 部分的解決策の提示
- 外部リソース活用
制約条件は、交渉や調整によってある程度クリア可能な要素を含みます。
たとえば「予算内であれば」「サポートが充実していれば」「運用を簡略化できれば」などの要望は、提案の仕方や組み合わせるサービスで打破できるかもしれません。
このような場合、まず制約内容を正確に聴き取ることが重要です。例えば、お客様が「総務部としては職務範囲外の機能は不要」と言っている場合、その機能をオプション化したり、運用負担を軽減する外部パートナーによる支援を提案することで、制約を和らげられます。
また、「他部署がまだ賛同しない」という場合は、部門横断的なワークショップを開催し、懸念点や期待効果を共有する場を提供することも効果的です。
制約条件をクリアするには、新たな付加価値を提案できるセールスパーソンとしての発想力と、生成AIツールなどを活用したリサーチ力が鍵となります。
たとえば、ChatGPTを用いて「顧客の制約条件を満たす別案」を探索したり、参考事例を短時間で収集したりすることが可能です。
こうしたスキルを磨くことで、制約条件を単なる障壁でなく、顧客満足度や信頼度を高めるチャンスに変えることができます。
結果として「制約を乗り越える提案」を行うことで、これまで難航していた商談にも新たな突破口が開けてくるのです。
5.まとめ
- 前提条件は必須基盤
- 制約条件は調整可能
- 聴く力で条件を明確化
本記事では、BtoBコンサルティングセールスにおける商談の障壁を「前提条件」と「制約条件」に分解して理解し、その聞き出し方や乗り越え方を紹介してきました。
前提条件を整え、制約条件をクリアするプロセスは、顧客理解を深め、提案の質を高めるための重要なアクションです。
ぜひ、日常業務でお客様から引き出した情報を整理し、前提と制約を正しく把握して対策を打ってください。その積み重ねが、顧客の利益最大化と自社粗利向上を可能にする「稼ぐ力」につながります。