【プロローグ】 あなたのその違和感は、正しい。
ChatGPT、Copilot、Gemini──。巷を賑わす生成AIを、あなたも一度は使ったことがあるでしょう。
議事録の要約、報告書の骨子作成、プレゼン資料のたたき台。驚くほど流暢に、それらしいアウトプットを返してきます。実に、便利ですよね。
しかし、これらの単純作業を超えて”何かを考える”ことを託すと、心のどこかでこう感じていませんか。
「AIは便利だ。だけど、何かどこかが物足りない感じがする・・・」
AIが生成した文章は、表面的には上手な枕詞も付けて一生懸命さも装っているが、どこか意志や苦悩が宿っていない。
出てくる結果は、概ね正しい。
正しいが、面白くない。
まるで、インターネットの海に漂う無数の情報を再編集しただけの、上質な「まとめサイト」のように感じる時もあるのではないでしょうか。
その“何かが足りない”という違和感。
あなたは、AIの学習モデルの性能やアウトプットの質に原因があると思っているかもしれません。ですが、もし、その原因があなた自身にあるとしたら……?
もっと言えば、AIに投げかけた、あなた自身の“問い”に。
AIは、あなたが立てた問いの「鏡」でしかありません。凡庸な問いには凡庸な答えを、深い問いには深い示唆とを返す。ただ、それだけなのです。
答えではなく”問い”にこそ、AI活用の本質がある。
これは単なる思考法やヒアリングテクニックではありません。AIが人間の知性を超えようとしている今、私たちが唯一、人間として立ち返るべき知の原点なのです。
この記事では、「問いの立て方」という古くて新しいテーマを、AI時代に再定義をしてみたいと考えています。
みなさん こんにちは。《聴くチカラ研究所》の4DL、CCO荒巻順です。ブログへのご訪問、ありがとうございます。
【目次】
- AIは「思考」を代行する。では、あなたの仕事は何か?
- フレームワーク信者たちへの鎮魂歌(レクイエム)
- 「課題の皮」を剥がす、本物の問いとは何か?
- AIにはできない「問いのOS」──思考の再設計をはじめよう
- 「拓く」ための問い、「壊す」ための問い
- あなたは“答える人”か、“問う人”か
- エピローグ:問いが、あなたを解き放つ
【Section 1】 AIは「思考」を代行する。では、あなたの仕事は何か?
「考える」とは、一体何か。
かつてそれは、情報を集め、分析し、論理を組み立て、結論を導き出す、一連の知的作業を指していた。その聖域は、今やAIによっていともたやすく“代行”され始めている。
AIは驚異的な速度でデータを収集処理し、一流というわれるビジネスパースン顔負けの言語を操り、一見すると完璧なロジックを構築する。その様は、まるで“MBAが考えている”かのようだ。
だが、決定的な違いがある。
AIは、自ら“問い”をスタートことはできない。Passiveな存在が現在のAIの正体である。
”問い”とは、単なる疑問文ではない。
それは「こうありたい」という本来は欲望の投影であり、「なぜだ」という知的好奇心の爆発であり、「これを成し遂げる」という意志のかたまりである。
人間はそういう意味ではAIとの対比的にActiveと言ってもいいだろう。
無秩序な現実の中から、意味を見出そうとする人間の根源的な営みそのものなのだ。
AIは、あなたが用意したレールの上を走る、パワフルだがとても超従順(Passive)とも言える妙なエンジンだ。
どこへ向かうのか、どの景色を見たいのか。その行き先を決める”戦略ストーリーへ”問い”という名のハンドルを握っているのは、あなたしかいない。
”問い”を鍛える。Activeである存在を強化する。
それこそが、AIに思考の一部を委ねる時代において、なお価値を放ち続ける“人間らしいあり方”の核心ではないだろうか。
【Section 2】 フレームワーク信者たちへの鎮魂歌(レクイエム)
あなたはきっと、優秀なビジネスパーソンだろう。
様々なビジネス書などで学んだ数多のフレームワークを使いこなし、複雑な事象を鮮やかに整理してみせる。
SWOT、3C、ビジネスモデルキャンバス、バリュープロポジション……。それらは、混沌としたビジネスの世界を理解するための、強力な地図である。
しかし、考えて見て貰いたい。
あなたの描くその地図は、“過去の地形”を描いたものに過ぎないのではないかと。
フレームワークとは、過去の事象から法則を抽出し、誰でも使えるようにした「思考の型」である。それは「答えを整理する美しい器」ではあるが、「未知の問いを立てる鋭利な道具」ではない。あなたも、心当たりはないだろうか。
「今期の売上を向上させるための戦略は?」
「競合A社に対する我々のポジションは?」
これらの”問い”は、一見すると戦略的で、いかにも“考えている風”に見える。だが、その実態はフレームワークという名の器に、目の前の情報を流し込んでいるだけの作業ではないか。
そして、その”問い”をAIに投げかければ、AIもまた、教科書通りの凡庸な答えを返すだけだ。
あなたは、思考しているのではない。思考を“整理”しているに過ぎない。客観的に自分の営みを振り返ってみると、そんな感覚を持つことも多いのではないだろうか。
過去の成功法則が、未来の失敗要因になりうるこの時代に、そのフレムワークで図式化するだけのやり方で本当に新しい価値を見いだせるだろうか。
”問いの質”が、思考の質を決め、未来の質を決める。
誰しもが使えるテンプレートとして陳腐化しているかもしれない、フレームワークという名の美しい棺に自らの思考を委ねることに恐怖感を感じないだろうか?
【Section 3】 「課題の皮」を剥がす、本物の問いとは何か?
私たちは、つい目の前の「状況」や「問題」という「現象」に飛びついてしまう。
「営業の成果が上がらない」「若手の離職率が高い」「新商品が売れない」
これらはすべて、喫緊の解決すべき事象に見える。だが、そのほとんどは、より根源的な問題が表出した「課題の皮」に過ぎないのかもしれない。
例えば、「営業成果が上がらない」という一枚の皮。
その下には、「顧客の購買行動がオンラインにシフトしていることに、組織が気づいていない」「失敗を恐れるあまり、誰も新しい提案をしなくなった」「評価指標が個人の売上のみに偏り、チームでの成功を阻害している」といった、何層にもわたる構造的な要因が隠れている。
この“皮”を一枚一枚めくっていく行為こそが、”問い”だ。
「なぜ、成果が上がらないのか?」という漠然とした問いではない。
「我々が“顧客”と呼んでいる人々は、1年前と同じだろうか?」
「この会議で、本当に言いたいことを言えずにいる人間は、何に怯えているのだろうか?」
「この評価制度は、誰を幸せにしているのだろうか?」
「この結論をもう一度逆算で分解してみたら、今現在を正しく指し示すのだろうか?」
こうした、あなたの内側から湧き出る“違和感”。それこそが、思考の原点だ。
数字やファクトだけを追いかけるAIには決して感知できない、生身の人間にのみ与えられた知性のセンサーである。
そのセンサーを研ぎ澄まし、違和感の正体を掘り下げていくこと。それこそが、凡庸な問題解決と、本質的な事業創造を分ける分岐点なのだ。
ここに人間の存在価値があるのではないだろうか?
【Section 4】 AIの役割を拡張する「問いのOS」──思考の再設計をはじめよう
では、どうすれば本質的な”問い”を人間とAIの関係性の中で立てられるのか?
それは、感性や才能といった曖昧なものではなく、再現可能な“問いのOS(思考のOS)”として実装できる。
私たち4DL Technologiesが構想開発した「OSSI(Operating System of Strategic Inquiry)」は、そのための生成AIを動作させるプロトコルである。
「OS」とはコンピュータの世界でOperating system(基本ソフト)とよばれ、HardwareとSoftwareの間に存在し、人間がコンピュータを操作するための手順や機能を実現する技術である。
4DLの考える”問いのOS”とは、AIの自然言語処理(NLP)を用いて、人間とAI双方の”問い”を創造する独自の技術です。
この技術により、AIは人間からの”問い”をきっかけ(Passive)に学習モデルを駆動させ、人間の思考を拡張するために”問い返し”を行う仕組みを実現した。
これが、AI時代の問いの立て方の再定義ではないでしょうか?
それは、思考の迷子にならないためのナビゲーションシステムであり、人間とAIの「深い問い」掛け合いによって知を深めていくための設計思想だ。
- 顕在化:言葉という光を当てる
漠然とした違和感や事象に、「それは一体何か?」と問い、言語化する。ここで初めて、思考の対象が生まれる。 - 分解:解体し、構造を暴く
言語化された事象を、「それは何からできているのか?」と問い、要素に分解する。範囲を広げ、全体像を立体的に捉える。 - 再構成:意味のつながりを発見する
分解された要素の関係性に、「なぜ、これとこれが繋がるのか?」と問い、背景や前提を疑い、新たな因果仮説を組み立てる。 - 問題定義:解くべき「的」を定める
仮説に基づき、「我々が本当に向き合うべき問題は何か?」を再定義する。ここで初めて、「課題の皮」の奥にある真の問題が姿を現す。 - 命題設定:行動の「火種」を置く
真の問題に対し、「我々は何を目指すのか?」「この行動は何のためか?」という目的を問い、チームを動かす「課題」へと昇華させる。
この一連のプロセスは、AIが答えを出す前の、人間が行うべき本来最も創造的な過程といえるであろう。
4DLのOSSIは、”問い”を互いに重ねることで両者(人間とAI)の思考が駆動し、本質的な知が深化し新たな気づきや発見が生み出され、その結果人間の《洞察力》として活かされていく。
こんな世界線で”人間とAIの関係”を4DL Technologies株式会社は考えているのである。
※この《問いのOS》であるOSSIの技術的な特徴に関しては、次回以降の記事で解説をしていきたい。
なお本記事の筆者は、NTTドコモグループに対してBtoBのコンサルティングセールスの育成・企画・設計・運営に外部から25年以上継続的に携わってきた、希有な実務経験をもっています。
現在は4DL Technologies株式会社のChief Consulting Officer(CCO)として、生成AI時代の「問いのOS」設計思想を主導しています。
「問いを変えると、見える景色が変わる」を信念に、営業現場における“思考と言語の接続”を探求し続けてきたその経験は、AIが進化する今こそ必要とされる人間の知のかたちを照らし出している。
【Section 5】 「拓く」ための問い、「壊す」ための問い
ここで誤解しないでほしいのは、私たちはフレームワークを全否定しているわけではない、ということだ。むしろ、その価値を誰よりも理解している。
だが、それらはあくまで「既知の世界を整える」ための道具である。
とくにコロナ禍以降、誰にも予想ができない様な環境の変化。エビデンスと言われる過去データから導き出される方針は、短期的にはあっているのかもしれない。しかし、本当にそのエビデンスが定常状態ではない時代にどれだけの価値を持っているのか、誰も自信が持てないような状況が今の時代である。
ここにはエビデンス主義の大きな落とし穴があるが、その話はまた別の記事でも書きたい。
「未知の世界を拓く」ためには、別の思想と道具が必要になる。
「拓く」という行為は、時として「壊す」ことと見分けがつかない。
既存の常識や概念、過去の成功体験、何も考えずに受け入れる前提。
それらを一度、”問い”によって壊し、新しい”問いの立て方”で全てを再構築する必要があるからだ。
「このフレームワークで見えている景色は、本当に世界のすべてか?」
「複数のフレームワークから導き出された結論の“間”に、矛盾はないか?」
「誰もが無視している、この“外れ値”にこそ、未来のヒントが隠されているのではないか?」
4DLの作った”問いのOS”は、既存のフレームワークを視野や視点を“拡張”するための生成AI活用法でもある。
フレームワークという地図を使いこなしながらも、地図に載っていない道を見つけ出す。もしくは地図を拡張したり、場合によっては書き直してしまう。
線形関数で表せるような定常状態ではない今の時代に求められるのは、もしかしたら昔から言われる“鼻の効く”と言われるような感覚に近い知性ではないだろうか。
過去の成功事例が、未来を縛る最大の足枷になる。その恐怖感を健全に持ち続けられる者だけが、変化の時代を泳ぎ切れるのだ。
一般的に生成AIの学習モデルは真っ当な正解にもっとも近い答えを数学的に出してくる仕組みと言われているが、4DLの”問いのOS”はその動作にちょっとした呪文(プロトコル)で、正しい外れ値としての価値を共創してくれるパートナーとして生み出された。
【Section 6】 あなたは“答える人”か、“問う人”か
AIは、もはやExcelやPowerPointのように、ビジネスの現場に溶け込みはじめている。
しかし、多くの人がAIを単純な作業を依頼して「答えを出す機械」としてしか見ていない。これは、色々な公的調査やAIベンダーのアンケートなどでも証明されている。
4DLは、それではAIの価値の1%も引き出せてはいないと考えているAI屋である。
AIの真価は、「問いをぶつけるあう相棒」として使うことで発揮される。
「~について教えて」という検索エンジン型の問いではない。
「もし、この業界の収益構造が半分になるとしたら、最初に消えるビジネスは何か?」
「我が社の最も熱心な顧客が、次に欲しがるであろう“未言語化された体験”とは何か?」
といった、視座と視点を組み合わせ、思考実験を促す問いだ。
あなたのその問いが浅ければ、AIからの答えも浅い。そして、AI内部の設計が一般的なプロンプト設計では、人間に問い返してくる内容もありきたりとなる。
《問いのOS》こそが、AIを“時間短縮に便利な作業ツール”から“価値を生み出す思考を鍛えるパートナー”へと昇華させる唯一の鍵なのである。
あなたは、AIが出した答えを鵜呑みにし、思考を停止させる「答える人」でありたいか。
それとも、AIを価値創造の相棒として、より鋭い問いを探求し続ける「問う人」でありたいか。
【エピローグ】 問いが、あなたを解き放つ
AIが“人間の考える力”を奪うと言われる時代に、人が考える理由。
それは、自らの意志で、自らの世界を意味づけるためです。”問いの立て方”に、正解はたぶんありません。
しかし、あなたの思考を深め、チームを動かし、未来を拓くための“良質な問い”は、間違いなく存在します。それは、あなた自身の内なる違和感と、世界への好奇心からしか生まれません。
私たち4DL Technologiesは、そんな一人ひとりの“問いの力”を解放し、組織の知的資産へと昇華させるための装置として、OSSIを設計し、そのエッセンスを含む「4DL Insight Engine」を開発しました。
最後に、あなたに問います。
あなたのその”問い”は、あなた自身の未来を拓く力を持っているでしょうか?今こそ、思考のリミッターを外し、あなたの問いをAIという新しいテクノロジーとともに再起動する時です。
▼ あなたの「問い」を、ビジネスの最強の武器に変える