「Copilotで“作業効率”は上がった。でも“思考力”はどうか?」 AI導入を前に、経営層が抱く“社員が考えなくなるのでは”という本能的な不安。
DX推進部門はその直感に寄り添いながら、「問いの体感設計」という未来像をどう描けるか? 効率化の先にある、“考える力を引き出すCopilot活用”という可能性に今、光を当てる。
みなさん こんにちは《聴くチカラ研究所》の4DL Technologies株式会社CCO荒巻順です。ブログへのご訪問、ありがとうございます。

Copilotは便利になった。でも“考えなくなる”不安が拭えない
Microsoft 365 Copilotの全社導入を決定、あるいは推進する中で、経営層や役員会から、ある種の“手応え”と、それと表裏一体の“懸nen”が示されることがあります。
「現場の時間は確かに短縮できそうだ。WordやExcelの作業が劇的に速くなるという報告も受けている。これは歓迎すべきことだ」
「しかし、その結果、社員は本当に“賢く”なるのだろうか。むしろ、短絡的に答えだけを求め、創造的に“考える力”はむしろ落ちるのではないか?」
この声は、単なるAIへのリテラシー不足や、ノスタルジックな精神論から来るものではないでしょう。
作業の「効率」が上がる一方で、思考の「品質」が下がるのではないか。
このトレードオフに対する直感的な懸nenは、むしろビジネスの未来を本質的に見据えているからこその「違和感」なのかもしれません。
DX推進部門としては、この「効率化の先の不安」を真正面から受け止める必要があるのではないでしょうか。
なぜなら、その不安こそが、Copilot導入を“単なるツール導入”から“組織の思考様式の変革”へと昇華させる、次なるプロジェクトの出発点になるからです。
目次
- 0. はじめに──Copilotは便利になった。でも“考えなくなる”不安が拭えない
- 1. 経営者が本当に不安に思っているのは「思考の劣化」ではなく「問いの消失」
- 2. 「Copilot活用=成功」の裏にある盲点──“使えているのに思考が止まる”現象
- 3. 「Copilot=考えなくなる」という誤解を、どう“問いの体験”で塗り替えるか
- 4. ANT-B0という“問いの体感”の設計──Copilotの本質に出会う瞬間をつくる
- 5. まとめ──Copilotは「思考停止の装置」ではない。「問いを映す鏡」なのだ
1. 経営者が本当に不安に思っているのは「思考の劣化」ではなく「問いの消失」
経営層の不安を解き明かしていくと、彼らが恐れているのは「思考の劣化」そのものよりも、思考のプロセスから「問いが消失する」ことであるとわかってきます。
Wordでの資料作成が速くなること。Excelでのデータ分析が自動化されること。それ自体に異論はありません。むしろ、そこは積極的に推進すべきだと考えているはずです。
彼らが本能的に懸念しているのは、そのプロセスです。
これまでは、企画書を書くために「そもそも、この顧客の課題は何か?」「AとBの施策、どちらが本質的か?」と、頭を悩ませ、内省し、仮説を立てる時間がありました。
しかし、Copilotが「企画書を3パターン作って」という指示だけでそれらしい“出力”を返してしまうとどうなるでしょう。
社員は、その「問いを立てる」という最も重要で、最も負荷のかかるプロセスを放棄し、AIが生成した「答え(らしきもの)」を鵜呑みにするだけになるのではないか、と。
「問いを立てずに出力だけを得る文化」が浸透することで、社員一人ひとりの内省や仮説構築力、すなわち「考える筋力」が根本から退化してしまうこと。
Copilotが「答えを出す便利な装置」としてのみ機能し、組織から「良質な問い」そのものが消えてしまうこと。
これこそが、経営層が抱く不安の正体です。そして、この警鐘は、DX推進部門が次に乗り越えるべき課題を的確に指し示していると言えます。
2. 「Copilot活用=成功」の裏にある盲点──“使えているのに思考が止まる”現象
興味深いことに、この「思考停止」の懸念は、Copilotの導入・定着(フェーズ1)を成功させたDX推進部門ほど、現実的な課題として突きつけられる傾向にあります。
操作マニュアルは全社に配布し、活用テンプレートも共有ポータルに蓄積されている。アクティブユーザー数や時間削減効果といったKPIも順調に推移している。
DX推進部門のミッションは、ひとまず達成されたかのように見えます。
しかし、その「効率化」の先で、経営層からの問い(「で、思考力は上がったのか?」)に、私たちは明確に答えられるでしょうか。
私たちは現場に「操作」を教えました。
ですが、「思考のプロセス」をどう変えるかまでは設計してこなかったかもしれません。
「なぜ、今その問いを立てたのか?」「その問いは、本当に解決すべき課題に紐付いているのか?」「AIのその回答を、どう疑い、どう深掘りすべきか?」
こうした思考の再設計にまで、まだ踏込めていない。
結果として、現場では「操作されたCopilot」が量産されていても、AIと知的に「共創するCopilot」の姿は、まだ見えてこない。
これが、フェーズ1の成功者が必ず直面する「第2フェーズの壁」です。経営層の不安は、この壁の存在を的確に予見しているのです。
3. 「Copilot=考えなくなる」という誤解を、どう“問いの体験”で塗り替えるか
Copilotは「答えを出す装置」ではなく、「問いの質を映す鏡」だ──この視点を体験することなしに、思考支援は始まらない。
では、DX推進部門は、この経営層の直感的な不安にどう応えるべきでしょうか。
「そんなことはありません。Copilotは思考を助けます」と口頭で説明しても、その懸nenは払拭できないでしょう。
唯一の方法は、「Copilotは“考えなくなる”装置ではない。むしろ、こちらの“問いの質”を容赦無く映し出す“鏡”である」という事実を、経営層自身に、そして現場に「体験」してもらうことです。
DX推進部門が次に設計すべきは、Copilotを「思考を深める装置」として再定義する、強烈なアハ体験(Aha-Experience)ではないでしょうか。
それは、高度なプロンプトエンジニアリングのスキル研修ではありません。
「この問いでは、この程度の答えしか返ってこない」
「しかし、問いの“前提”や“視点”をこのように変えると、Copilotの応答が劇的に深まる」
「そして、深まった応答を見て、自分自身の思考がさらに先に進む」
──この一連のプロセスを、参加者自身の課題で実感させることが重要です。
Copilotは“使われるAI”ではなく、“問いを鏡として返すAI”である。
この認識の転換を、操作マニュアルではなく「問いの体感」によって塗り替える。それこそが、第2フェーズの壁を突破する鍵となります。
4. ANT-B0という“問いの体感”の設計──Copilotの本質に出会う瞬間をつくる
私たち4DL Technologies株式会社が提供する《ANT-B0ワークショップ》は、まさにこの「問いの体感」を設計するために存在します。
《ANT-B0》は、Copilotを通じて「問い方の違いが思考とアウトプットを変える」ことを、誰もが体感できるよう設計されたワークショップです。
《ANT-B0》は、「Copilotの正しい使い方」や「WordやExcelとの連携方法」を学ぶ場ではありません。
それは、参加者が持ち寄った「自らが本当に向き合うべき問い」を起点に、AIとの対話を通じて、Copilotの生成AIとしての本質──すなわち「問いの鏡」としての側面──に出会う瞬間を意図的に設計する場です。
ワークショップでは、参加者はしばしば「AIに依存する」状態(=浅い答えで浅い答えを得る)からスタートします。
しかし、ファシリテーターとの対話を通じて、「なぜそれを問うのか」「その問いの裏にある暗黙の前提は何か」を徹底的に掘り下げます。
そして、研ぎ澄まされた「問い」を再びCopilotに投げかけるのです。
その瞬間、AIはそれまでの“当たり障りのない答え”とは別次元の、“鋭い洞察”や“想定外の視点”を返し始めます。
この時、参加者は実感します。
「AIが賢くなった」のではない。「自分の問いが深くなった」からだ、と。
そして、「AIの深い応答に触発され、自分の思考がさらに再起動した」と。
「AIに依存する」のではなく、「AIと共創する」とは、この感覚にほかなりません。
経営層にこそ、この「問いによる思考の再起動」を理解してもらう必要があるのです。
Copilot導入のROIは、時間削減(効率)ではなく、この「思考の変革(品質)」にあるのだと。
5. まとめ──Copilotは「思考停止の装置」ではない。「問いを映す鏡」なのだ
経営層が抱く「Copilotで社員が考えなくなるのでは?」という直感的な違和感。
それは、AI導入の本質を突いた、きわめて重要な問いかけです。
DX推進部門がその問いに応えるべき答えは、「最新機能の使い方」や「時間削減のKPIレポート」ではありません。
「Copilotは、私たちの“問いの質”を映し出す鏡であり、その鏡を使って、私たちは“考える力”を鍛え直すことができます」という、未来の景色そのものです。
Copilotは、問いがあってこそ活きるAIです。
ならば、DX推進部門が次に社内にインストールすべきは、AIの機能ではなく、「問いを立てる力を育む設計思想」そのものではないでしょうか。
実際、私たちも大手企業や自治体の現場において、Copilot活用を“思考支援”へ進化させる実践に着手し始めています。
それこそが、Copilot活用を“本質的なDX”へと導き、経営層の不安を「未来への確信」へと変える、唯一の鍵となると私たちは考えます。
Copilotの導入はゴールではなく、始まりにすぎません。真に業務変革へとつなげるには、「定着」──すなわちチームの思考の質と速度を変えるリスキリングが不可欠です。
私たち4DL Technologies株式会社では、Copilotの定着と本質的な業務変革を支援する3つのリスキリングプログラムをご用意しています。
🟣 ANT-B0:Copilotで「問いを立てる力」を育てる【入門編】
Copilotを“調べ物ツール”などの単純作業利用で終わらせず、思考をともに進める相棒として使いこなす第一歩を体感しませんか?
Copilotにどう問いかければ、欲しい情報が出てくるのか?そして、Copilotから問い返して暗黙知を深掘りしてくれる体験。
業務文脈に合わせた「問いのOS」をインストール。まずはこのB0から始めて、チーム内でのリスキリングを“スモールスタート”しませんか?
🟣 ANT-B1:複雑な業務を再現するプロンプト設計【実践編】
自社の業務にCopilotを本格活用するためのエンタープライズ企業として求めるプロンプトの設計力・再現力・構造化力を非エンジニア向けが学びます。
B0で体感した「思考支援ツールとしてのCopilot」をベースに、業務プロセスにAIを実装する力を養います
🟣 ANT-B2:AIエージェントを自社業務に組み込む【応用編】
Copilot Studioというノーコードツールを活用して、社内専用のAIエージェントを設計・導入を自走するチームにしませんか?
現場が、自分の仕事を、自分たちで設計・開発・修正の試行錯誤できる「業務をAI化する」自走できる状態を目指します。
📌まずは安価な体験ワークショップ”ANT-B0”から定着施策を上司と考えませんか?
「Copilotを“思考の相棒”に変える」という明確な効果をパイロットチームに体感してもらい上司に提案できる状態をつくりませんか?
場合によっては、あなたが稟議を上げる経営層に「AIによる思考支援の未来」を体感・実感してもらうという作戦はいかがでしょう?
そんな仕掛けにもB0は最適です。
記事執筆者:
荒巻 順|4DL Technologies株式会社 CCO(AIソリューションデザイン統括)
専門は、独自のプロンプト設計手法(ODGC/4DL_AAS)を用い、AIを「思考支援」ソリューションへと進化させる「生成AI導入・定着コンサルティング」です。

よくある質問(FAQ)
NTTドコモビジネス様で25年以上にわたりBtoBセールス部門の研修・試験設計を、千葉市産業振興財団様で12年間、創業支援研修の企画運営を責任者として担当しました。この経験を基に、通信・鉄道・自治体など、様々な組織へのAI導入・定着支援を主にトレーニングという側面から行っています。
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