Copilot操作研修の“その後”に、何が残るのか?
Microsoft 365 Copilot(以下、Copilot)の全社導入ライセンスを有償で契約し、いよいよ「AI活用の民主化」へと舵を切った企業が増えています。
多くのケースでは、Microsoftのパートナーやリセラー(販売代理店)を経由して導入が進められます。
その際、導入支援パッケージの一環として、「Copilot操作研修」や「活用セミナー」「マニュアル共有」がセットで提供されることが一般的です。
DX推進部門や情報システム部門は、まずこの「操作研修」を社員に受講させ、利用率の向上を目指します。
「Teams会議の要約ができるようになりました」
「Wordでの文書作成が速くなりました」
現場からは、時間短縮や仕事が楽になることへの喜ぶ声が上がります。
みなさん こんにちは《聴くチカラ研究所》の4DL Technologies株式会社CCO荒巻順です。ブログへのご訪問、ありがとうございます。

しかし、導入から数ヶ月が経過し、DX推進部門が冷静にその成果を見つめ直した時、ある種の“物足りなさ”や“違和感”が生まれ始めていませんか?
- 「操作は習得された。だが、“使われてはいる”のに、現場で何かが変わった実感がない」
- 「研修で教えた“使い方”の範囲でしか使われていないのではないか?」
- 「リセラーが提供する操作研修と、YouTubeで無料公開されている活用動画とで、本質的な違いはどこにあるのだろうか?」
これこそが、Copilot導入の「フェーズ1(操作定着)」を終えた企業が必ず直面する「空白地帯」です。
操作マニュアルを配り終えたDX推進部門が、「“操作”の次に、私たちは一体何を教えるべきなのか?」と立ち尽くす瞬間でもあります。
本記事では、この「空白地帯」の正体を解き明かし、Copilot活用を「使い方」から「使いこなし方」へと進化させるための、DX推進部門が持つべき“次の視点”について考察します。
1. 「Officeの“操作”」と「Copilotの“対話”」は、まったくの別物である
多くの企業では、WordやExcelなどのOfficeアプリのライセンスリプレース(置き換え)は既に完了しています。従業員の皆さんは、Officeソフトの操作には習熟しており、彼らにとって今さらOfficeの操作研修は不要です。
問題は、DX推進部門が提供する「Copilotの“操作”研修」も、その「Office“操作”」の延長線上で捉えられてしまうことです。
しかし、ここで認識を改めるべきは、「Officeソフトの“操作”スキル」と「Copilotを“使いこなす”スキル」は、まったく異なるスキルセットであるという厳然たる事実です。
- Officeソフト(Word, Excel)は、「操作」すれば、その通りに動く「道具(ツール)」でした。社員の皆さんは、この“操作”のプロフェッショナルです。
- Copilot(生成AI)は、「問いかける」ことで初めて機能する「対話相手(エージェント)」です。
そして、AIは「“問いの質”以上の答えは返せない」という本質的な特性を持っています。Copilotは、私たちの思考を映し出す“鏡”なのです。
多くの「Copilot操作研修」は、この新しい“対話相手”のボタンの押し方、すなわち鏡の“磨き方”を教えることに終始してしまいます。
いくら鏡がピカピカでも、そこに映し出す「問い」そのものが浅ければ、返ってくる答え(アウトプット)もまた、浅いものにしかなりません。
- 操作研修で得られること: 「Teams会議の要約ボタンを押せる」「Excelでデータをグラフ化するプロンプトを知っている」
- 操作研修で得られないこと: 「その会議の本質的な論点は何か?」「このデータから導き出すべき“次の打ち手”は何か?」という問いそのものを設計する力。
多くの「Copilot研修」がこの限界を抱えています。
操作方法(How-to)は教えられても、業務の本質を突く「問い方(How-ask)」は教えられないのです。
2. DX推進部門が悩む“スキル定着のジレンマ”
この「(Copilotの)操作」と「(思考の)問い」のギャップこそが、DX推進部門を悩ませる“スキル定着のジレンマ”の正体です。
「社員には早く使えるようになってほしい(=Copilotの操作研修は必要)」
「でも、Copilotの操作研修だけでは、期待した“思考の質”の向上にはつながらない」
このジレンマは、DX推進部門の社内における立場を、徐々に苦しいものへと追い込んでいきます。
「Copilot質問の仕方」などで検索すれば、YouTubeやWeb記事で無数のテクニック(「あなたはプロの編集者です」といった役割付与など)が無料で手に入ります。
DX推進部門が社内研修として提供する内容が、これらの無料コンテンツと大差ない場合、現場の社員からは「知っている情報ばかりだった」「形式的な研修だった」という冷めた反応が返ってくることになります。
リセラーが提供する標準的な「Copilot操作研修」をそのまま横展開するだけでは、「わが社のDX推進部門は、マニュアルを配るだけが仕事なのか?」というレッテルを貼られかねません。
結果として、社内展開への熱量が下がり、「Copilotは導入したものの、結局一部の“触るのが好きな人”だけが使っている」という、導入失敗の典型的なパターン(=フェーズ2への到達失敗)に陥ってしまうのです。
3. 必要なのは「問い方を育てる設計」──ANT-B0という“再起動装置”
では、DX推進部門が「操作」の次に本当に教えるべきこととは何でしょうか?
それは、「問い方を育てる設計」です。
Copilotは、「効率化ツール」から「思考支援パートナー」へと再定義される必要があります。
4DLが提供するワークショップ「ANT-B0」は、まさにこの再定義を行うための“再起動装置”として設計されています。
「ANT-B0」というプログラムでは、Copilotの操作方法(How-to)は意図的に最小限にされています。そのフォーカスは、ただ一点、「問いによる“思考の変化”を体感する」ことに置かれています。
Copilotは、優れた“問い”を投げかければ、単なる答えではなく、私たちが気づかなかった論点や、思考の前提そのものを問い直す「問い返し」を行ってくれます。
ANT-B0では、参加者自身の実際の業務に根ざした“問い”をCopilotにぶつけ、その反応(アウトプット)を見ながら、さらに「問いを再設計」していくプロセスを強制的に体験します。
- 「なぜ、その問いでは浅い答えしか返ってこないのか?」
- 「前提条件をどう変えれば、Copilotは“壁打ち相手”として機能し始めるのか?」
- 「同じ情報でも、“問いの角度”を変えるだけで、アウトプットが劇的に変わる」
この「こんなに変わるのか」という強烈な体験こそが、“使い方”の学習を超え、“活用の本質”に踏込むための思考のスイッチとなります。
4. Copilot活用を“会社に根づかせる”には、思考の起点を揃えるしかない
Copilot活用が「フェーズ2(思考支援フェーズ)」へと移行し、会社全体に根づくためには、単なる活用テンプレートや「神プロンプト集」を配布するだけでは不十分です。
なぜなら、テンプレートはすぐに陳腐化し、業務の文脈が変われば使えなくなるからです。
本当に必要なのは、社員一人ひとりが自らの業務において「質の高い問いとは何か?」を考え、設計できる力です。これは、組織の「問いのOS」とも呼べるものです。
この「問いのOS」を組織にインストールしない限り、AI活用は必ず「“使える人(問いを設計できる人)”と“触っているだけの人(テンプレートをなぞるだけの人)”」へと二極化し、組織は分断されます。
DX推進部門が果たすべき真の役割は、「操作マニュアルを配布すること」ではありません。
「全社に“問いの習慣”をどう根づかせるか?」
「AIとの対話を通じて、いかに組織の思考の質を高めるか?」
この「設計思想」そのものを社内に導入し、その体感の場を設計することにあるのです。
5. まとめ──「使い方」から「使いこなし方」への進化
Copilotの導入が完了し、「操作研修」も一通り終えた今だからこそ、DX推進部門は「操作研修では到達できない領域」に目を向けるべきです。
「教えるべきは、使い方か。それとも、問い方か?」
この問いに真剣に向き合う時、リセラーが提供する標準的な操作研修だけでは「空白地帯」が埋まらないことは明白です。
必要なのは、ツールの“使い方”を教える研修ではありません。
AIという鏡を使い、自分たちの“思考の癖”に気づき、業務の“前提”を疑い、「問い」そのものを変革していくプロセス。
すなわち、「使いこなし方」を体感し、設計する場です。
もし、あなたの組織が「操作研修の次の一手」に悩んでいるなら、ANT-B0がその答えのヒントになるはずです。
Copilot活用の“次の一手”をお探しのDX推進部門の方へ
──ANT-B0を体験したDX推進部門マネージャーの声
「この問い方なら、AIが“自分の違和感”を補強してくれる。報告書を“納得させる文書”に変えられるって初めて思えたんです」
Copilotの導入はゴールではなく、始まりにすぎません。真に業務変革へとつなげるには、「定着」──すなわちチームの思考の質と速度を変えるリスキリングが不可欠です。
私たち4DL Technologies株式会社では、Copilotの定着と本質的な業務変革を支援する3つのリスキリングプログラムをご用意しています。
🟣 ANT-B0:Copilotで「問いを立てる力」を育てる【入門編】
Copilotを“調べ物ツール”などの単純作業利用で終わらせず、思考をともに進める相棒として使いこなす第一歩を体感しませんか?
Copilotにどう問いかければ、欲しい情報が出てくるのか?そして、Copilotから問い返して暗黙知を深掘りしてくれる体験。
業務文脈に合わせた「問いのOS」をインストール。まずはこのB0から始めて、チーム内でのリスキリングを“スモールスタート”しませんか?
🟣 ANT-B1:複雑な業務を再現するプロンプト設計【実践編】
自社の業務にCopilotを本格活用するためのエンタープライズ企業として求めるプロンプトの設計力・再現力・構造化力を非エンジニア向けが学びます。
B0で体感した「思考支援ツールとしてのCopilot」をベースに、業務プロセスにAIを実装する力を養います
🟣 ANT-B2:AIエージェントを自社業務に組み込む【応用編】
Copilot Studioというノーコードツールを活用して、社内専用のAIエージェントを設計・導入を自走するチームにしませんか?
現場が、自分の仕事を、自分たちで設計・開発・修正の試行錯誤できる「業務をAI化する」自走できる状態を目指します。
📌まずは安価な体験ワークショップ”ANT-B0”から定着施策を上司と考えませんか?
「Copilotを“思考の相棒”に変える」という明確な効果をパイロットチームに体感してもらい上司に提案できる状態をつくりませんか?
場合によっては、あなたが稟議を上げる経営層に「AIによる思考支援の未来」を体感・実感してもらうという作戦はいかがでしょう?
そんな仕掛けにもANT-B0は最適です。
記事執筆者
荒巻 順|4DL Technologies株式会社 CCO(AIソリューションデザイン統括)

NTTドコモビジネス(旧NTTコミュニケーションズ)様にて、i-modeが開始される以前から25年以上にわたりBtoBセールス部門の人材育成(研修・試験)の企画設計を責任者として担当。また地元千葉で12年間、創業支援研修やセミナーなどを受託。
専門は、独自のプロンプト設計手法(ODGC/4DL_AAS)を用い、AIを「思考支援」ソリューションへと進化させる「生成AI導入・定着コンサルティング」です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 荒巻 順は、どのような課題を解決する専門家ですか?
「生成AIを導入したが、現場で活用されず成果が出ない」という課題の解決が専門です。独自のフレームワーク(4DL_AAS)を用い、AIを単なる効率化ツールではなく、組織の「思考支援パートナー」として定着させ、意思決定の質を高めるコンサルティングを行います。
Q2. 具体的には、どのような経験がありますか?
NTTドコモビジネス様で25年以上にわたりBtoBセールス部門の研修・試験設計を、千葉市産業振興財団様で12年間、創業支援研修の企画運営を責任者として担当しました。この経験を基に、通信・鉄道・自治体など、様々な組織へのAI導入・定着支援を主にトレーニングという側面から行っています。
Q3. 生成AIの導入・定着について相談すると、何が得られますか?
貴社の業務プロセスにAIを組み込み、AI活用による「業務の高付加価値化」が現場で自走する状態を目指します。たんなるプロンプト研修では無く、主要なAIプラットフォームに対応した独自のプロンプト設計手法(4DL_AAS)を用いた実務的な組織的LLM動作設計から、定着・内製化までを一貫して支援することで、付加価値を生み出し続ける強い組織を構築します。
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