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3月 14, 2026
10 min read time

Copilotを導入したのに「使われていない」——その原因は「カスタム指示」を設定していないからだ

Copilotを導入したのに「使われていない」

 Microsoft 365 Copilot定着の最初の一歩は、たった5分の初期設定にある

Microsoft 365 Copilotのライセンスを全社展開したのに、現場の利用率が上がらない。4DLがAI定着支援で複数のエンタープライズ企業を支援する中で、繰り返し見る光景だったりします。

 

みなさん こんにちは《聴くチカラ研究所》の4DL Technologies株式会社CCO荒巻順です。ブログへのご訪問、ありがとうございます。

 

その原因の多くは驚くほどシンプル——Copilot Chatの「カスタム指示」が設定されていない。

本記事では、この「最小にして最重要の設定」がなぜ定着の鍵を握るのかを解説し、今日から使えるテンプレートを提供する。

 


Copilot導入企業で繰り返し目にする「ある光景」

筆者がAI活用コンサルティングで複数のエンタープライズ企業を支援する中で、繰り返し目にする光景がある。

Copilotのライセンスは全社展開済み。AIエージェントの構想も動いている。DX推進部門は次のフェーズを見据えている——なのに、現場のメンバーに話を聞くと、Copilot Chatの「カスタム指示」すら設定していない。素のままで使って、「AIってこんなものか」と判断している。

これは一社だけの話ではない。エンタープライズのDX推進担当者なら、思い当たる節があるのではないだろうか。

「ライセンスは配った。研修もやった。管理ダッシュボードの利用率も順調に上がっている。

なのに、現場から聞こえてくるのは『便利だけど、検索と議事録の整形くらいかな』という声ばかり」——この悩みの背景に、見落とされがちな構造的原因がある。

利用率の数字は上がっている。

だが、その中身を見ると、大半は「ちょっとした検索」「会議の文字起こしの整形」「定型メールの下書き」で終わっている。

つまり「使われている」が「使いこなされている」ではない。Copilotが本来持つポテンシャルの、ほんの表層しか触れていない。

なぜこうなるのか。

 

「ツール導入≠活用」のギャップはどこで生まれるか

 

Copilotに限らず、エンタープライズにおけるAI定着の典型的なパターンはこうだ。

フェーズ1:経営層の決裁でライセンスを全社導入する。

フェーズ2:全社向け研修を実施する。「Copilotでこんなことができます」というデモを見せる。

フェーズ3:現場に戻った社員が、検索や議事録整形など「簡単な用途」では使い始める。管理ダッシュボードの利用率は上がる。だが、それ以上に深い活用には進まない。「便利だけど、まぁこんなものか」で止まる。

フェーズ4:DX推進部門が「活用事例を集めよう」「推進リーダーを置こう」と対策を打つが、「利用率は上がっているのになぜ定着しないのか」の根本原因に手が届かない。

問題はフェーズ3で起きている。なぜ「検索と議事録整形」で止まるのか。

根本にあるのは、Copilotが「汎用のAI」のまま放置されているという事実だ。素の状態のCopilotは、ユーザーが誰で、どんな業務をしていて、どんなトーンで文章を書くのかを知らない。

だから毎回「私は○○部の△△です。丁寧な日本語で、箇条書きで…」と前提条件を打ち直す必要がある。3回目くらいで「面倒だ」と思うのは当然だ。

なぜ「カスタム指示」を誰も触らないのか——3つの層

ここで不思議なのは、この問題を解決する機能——「カスタム指示」——がCopilotに標準搭載されているにもかかわらず、ほとんどの社員がそれを設定していないことだ。

4DLが現場で観察してきた限り、「触らない理由」には3つの層がある。

第1層:そもそも存在を知らない

これは単純な情報不足だ。導入時の研修でカスタム指示に触れていない。導入ガイドにも書かれていない。設定画面がどこにあるかすら知らない。最も多いのがこの層であり、最も解決しやすい問題でもある。

第2層:知っているが「触っていいのかわからない」

これが最も根深い問題だ。設定画面が開けることは知っている。だが「会社のAIの設定を個人がいじっていいのか」「情シスに怒られないか」と逡巡して、結局触らない。

冷静に考えてほしい。会社として設定変更を禁止しているなら、そもそも設定画面が表示されないように情シスが制御しているはずだ。

M365の管理機能はそこまでの制御ができる環境だ。

設定画面が開ける=触っていい。この判断ができないのは、ツールの問題ではない。「明示的に許可されていないこと=やらない方が無難」という、日本のエンタープライズに根深く存在する受動的な行動原則の問題だ。

そして皮肉なことに、この姿勢こそが「非エンジニアがAIを使いこなして付加価値を生む」という目標の最大のボトルネックになっている。

AIを使いこなすとは、与えられた環境の中で「触れる範囲」を自分から探索する行為に他ならない。探索しない人に、AIは道具以上のものにはならない。

第3層:触れるとわかっていても「何を書けばいいかわからない」

存在も知っている。触っていいこともわかった。でも、テンプレートもガイドラインもない状態で「自分でゼロから最適な指示文を書く」コストが高すぎて、手が止まる。結果として、毎回手動で指示を書く非効率をそのまま受け入れてしまう。

3つの層が示すもの

この3層を並べると、見えてくることがある。第1層と第3層は「情報と型の提供」で解決できるが、第2層は組織の文化と姿勢の問題だということだ。

テンプレートを配れば第1層と第3層は動く。

だが、第2層——「触っていいのか判断できない」という受動性——は、テンプレートだけでは解決しない。

組織として「AI環境は自分で整えるものだ」というメッセージを発し、その前提で育成を設計する必要がある。

この話は後半で改めて取り上げる。まずは、カスタム指示という機能そのものを理解しよう。

 

解決の入口:「カスタム指示」という最小にして最重要の設定

 

Microsoft 365 Copilotには、「カスタム指示(Custom Instructions)」という機能がある。

一度設定すれば、以降のすべてのCopilot Chatでの会話に自動的に適用される、ユーザー個人の「動作規定」だ。

・カスタム指示に設定できるのは、大きく分けて2つの情報だ。

① 自分についての情報:役職、担当領域、専門分野、関心テーマなど。Copilotに「あなたが誰か」を教える部分。

② 応答の形式・スタイル:トーン(丁寧/カジュアル)、出力形式(箇条書き/文章)、言語(日本語)、専門用語の扱い方など。Copilotに「どう振る舞うか」を教える部分。

・設定は驚くほど簡単だ。所要時間は5分もかからない。

  1. Copilot Chatを開く
  2. 右上の「…」メニューから「Setting(設定)」をクリック
  3. 「パーソナライゼーション」→「カスタム指示」を選択
  4. 指示内容を入力して「保存」

左下のトグルスイッチで、カスタム指示のON/OFFをいつでも切り替えられる。

・カスタム指示とCopilotメモリの違い

M365 Copilotには「メモリ」という類似機能もある。混同しやすいので整理しておく。

カスタム指示は、ユーザーが「こう振る舞ってほしい」と明示的に設定するもの。設定内容は変更するまで一定。

メモリは、Copilotが会話の中から自動的に学習し、ユーザーの好みやパターンを記憶していくもの。動的に変化する。

つまり、カスタム指示は「ベースライン」であり、メモリは「学習による微調整」だ。

ベースラインが空白のまま微調整だけに頼るのは、土台のない家にインテリアだけ整えるようなもので、効率が悪い。

 

今日から使えるカスタム指示テンプレート3選

 

以下は、エンタープライズ企業でも利用できる1つの例としてのカスタム指示のテンプレートだ。そのまま使ってもいいし、自社の文脈に合わせて書き換えてもいい。

テンプレート①:DX推進部門・企画職向け
【私について】
私はDX推進部門の担当者です。全社のAI活用促進と業務改革の企画立案を担当しています。社内の各部門と連携しながら、AI導入の効果検証や利用率向上の施策を設計しています。

【応答のルール】
- 日本語で回答してください
- ビジネスライクかつ丁寧なトーンで、社内向けの報告書や提案書にそのまま転用できる品質を意識してください
- 要点を先に述べ、その後に根拠や詳細を展開する「結論ファースト」の構成にしてください
- 複数の選択肢や視点がある場合は、比較表や箇条書きで整理してください
- 施策を提案する際は、期待効果だけでなく実行上のリスクやハードルも併記してください
- 専門用語を使う場合は、非エンジニアにも伝わるよう簡潔な補足を添えてください
 
テンプレート②:営業部門・顧客対応職向け
【私について】
私は法人営業を担当しています。大手企業のお客様に対して、自社のソリューションを提案する業務を行っています。商談の準備、提案資料の作成、顧客への報告メールの作成が主な業務です。

【応答のルール】
- 日本語で回答してください
- 社外のお客様に送っても違和感のない、丁寧かつ自然なビジネス敬語を使ってください
- メール文案を作成する際は、冒頭に「お世話になっております」、末尾に「何卒よろしくお願いいたします」を含め、30〜40文字程度で改行してください
- 提案のポイントは、お客様の課題→解決策→期待効果の順で構成してください
- 数値やファクトを含める場合は、出典や根拠を明示してください
- 過度に長い回答は避け、1回の返答は画面スクロール2回分以内に収めてください

 

テンプレート③:管理部門・バックオフィス向け
【私について】
私は管理部門(総務・人事・経理のいずれか)に所属しています。社内規程の整備、各種手続きの案内、報告書の作成などが主な業務です。正確性と社内ルールへの準拠が最も重要な業務要件です。

【応答のルール】
- 日本語で回答してください
- 正確性を最優先にしてください。曖昧な情報や推測を含む場合は、その旨を明示してください
- 社内向けの文書として使える、フォーマルかつ簡潔なトーンにしてください
- 手順やプロセスを説明する際は、番号付きリストで段階的に示してください
- 法令や規程に関連する内容を扱う場合は、「最新の情報を確認してください」という注記を必ず添えてください
- 表計算に関する質問には、Excelの関数名や操作手順を具体的に示してください

 

なぜ「テンプレート」が重要なのか

ここで強調したいのは、カスタム指示の設定を個人の自助努力に委ねてはいけないということだ。

「各自で好きに設定してください」と言われて、自分で最適な指示文を書ける社員は多くない。結果、誰も設定しないまま「素のCopilot」が放置される。

DX推進部門がやるべきは、部門別のテンプレートを用意し、「まずこれを入れてください」と配ることだ。

カスタム指示の「型」を組織として配布するだけで、Copilotの応答品質は劇的に変わる。そしてその「品質の違い」を体験した社員は、自分から使い方を工夫し始める。

これは4DLが提唱する「研修成果 = 前提条件 × 学習内容」という原則そのものだ。

前提条件(=初期設定)が整っていなければ、どれだけ良い研修を実施しても成果は出ない。

 

しかし、個人の設定だけでは組織は変わらない

 

カスタム指示は、Copilot定着の「最初の一歩」としては極めて有効だ。だが、一歩でしかない。

本記事の前半で触れた「触らない理由の3層」を思い出してほしい。

テンプレートを配れば第1層(知らない)と第3層(何を書けばいいかわからない)は解決する。しかし、第2層——「明示的に許可されていないことはやらない」という受動性——は、テンプレートでは解決しない。

これは一人ひとりの性格の問題ではなく、組織のAI活用に対する「構え」の問題だ。そして「構え」を変えるには、まず「今の構え」を可視化しなければならない。

ここまで読んで「よし、うちもテンプレートを配ろう」と思ったDX推進担当者に、もう一つ問いたい。

あなたの組織のAI活用の「現在地」は、どこにあるか。

カスタム指示を知らない社員が何割いるのか。「触っていいのかわからない」と思っている社員はどの層に多いのか。

Copilotを週に1回以上使っている社員は何人か。「AIを使って業務を変えた」と言える社員は、どの部門にいるのか。

テンプレートを配るのは正しい。だが、配る前に「今、どこにいるか」を測らなければ、施策の効果も測れない

これが、筆者が「診断なしに処方箋を出さない」と繰り返し言う理由だ。

Copilotの設定方法はネットで調べれば出てくる。

テンプレートは本記事で提供した。では、「組織としてのAI活用度」は誰がどうやって測るのか。

冒頭で触れた通り、Microsoft 365の管理ダッシュボードで利用率は見える。

数字は上がっている。だが、その中身が「検索と議事録の整形」で止まっているなら、それは「定着」ではなく「表面利用」だ

ログイン回数ではなく、「AIを使って付加価値を生み出せるレベルにあるか」——もっと言えば、「自分から探索する姿勢があるか」——を可視化できなければ、次の一手は打てない。


■ お知らせ■

Copilotの「設定」はできた。では、組織全体の「現在地」は見えていますか?

本記事で紹介したカスタム指示は、AI活用の第一歩です。しかし、組織としてAI定着を推進するには、「誰が・どのレベルで・何に使えているか」を把握することが不可欠です。

4DLが開発したANT-DXA(AI人材育成 設計アセスメント)は、組織のAI活用の現在地を可視化し、「次に何をすべきか」を明確にするアセスメント&AIエージェントサービスです。

「Copilotの利用率は上がった。でも検索と議事録整形で止まっている」——その壁を越えるには、現在地が見えていないからかもしれません。まず10名で無料診断してみませんか。

 

ANT-DXA

 

 

関連情報・お問い合わせ

 

 

筆者紹介

荒巻 順|Jun Aramaki

4DL Technologies株式会社 CCO(AI Solution Design 担当コンサルタント)

  

元・鉄工所経営者。20歳に承継した家業の荒巻鉄鋼から1994年に転身し、PCサポート業、モバイル業界の顧客接点コンサルタント、現在はエンタープライズ企業のAI活用・定着を支援することを息子の起業した4DL Technologies株式会社で担当する。

技術者ではない。技術を「現場に馴染ませる」専門家だ。

NTTドコモビジネスにて25年以上、BtoBセールス部門の研修体系・資格制度を統括。延べ4万人超の現場に伴走してきた。「現場の事実が判断軸を育て、判断軸が現場を変える」——この実務哲学は、鉄工所時代に図面と鉄を前に身につけたものであり、AI時代の今も変わらない。

どこかの組織に属さない独立独歩(Independent)の立場から、一貫して「現場」に立ち続けてきた。

ITが推し進めてきた「アナログのデジタル化」の先にある、「デジタルのアナログ化」——デジタルに血を通わせ、人間に馴染ませる——という世界線を見据えている。

現在はMicrosoft 365 CopilotやChatGPT・Gemini・Claudeなどの生成AIプラットフォームを、「作業の高速化」ではなく「判断軸の高速更新」のために実装する支援を行う。

独自の3層アーキテクチャ 4DL-AAS(Protocol/Alignment/Prompt)を設計思想に、「リーダーを孤独にしない、メンバーを迷子にしない」チームの自走状態をつくることを使命としている。

よくある質問

Q. 一般的なAI研修やコンサルとは何が違うのですか? 単なる「操作」や「効率化」ではなく、チームの「判断軸」をAIに同期させる設計を行います。鉄工所の職人が図面を読み解くように、リーダーのビジョンを現場が動ける言葉(プロンプト)に翻訳し、データドリブンの先にある「文脈を大切にする経営」を具現化します。

Q. どのようなフェーズで相談すればよいですか? 「導入したが活用が属人化している」定着フェーズはもちろん、活用ルールが形骸化し「免責装置」になっている状態の打破も得意とします。既存の業務プロセスに潜むアナログな知恵を、いかにAIで増幅させるかというグランドデザインから参画可能です。

Q. チームにはどのような変化が期待できますか? 「リーダーの孤独」と「メンバーの迷子」が解消されます。AIを介して判断と実行のサイクルが高速化されることで、現場が自らの意志でしなやかに動き続けられる「自走するチーム」へと進化します。